「ストリートヘッズのバイブル」では音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!今日紹介するのは、Netflixのドキュメンタリー『暴君になる方法』(2021)。
『暴君になる方法』とは?
人類史にかつて実在した(もしくは今も健在の)独裁者たちの一生を振り返ることで、彼らがいかにして絶対的な地位を確立し、維持したかを解説するドキュメンタリー。「この方法を知れば君も暴君になって国を支配できる!」という趣旨のもと、How toを分かりやすく解説する。全6話で1エピソード30分程度なので、比較的サクッと鑑賞できるコンテンツだ。
6エピソードの内容は以下の通り。
・権力の掌握(ドイツ : ヒトラー)
・敵の排除(イラク共和国 : フセイン)
・恐怖による政治(ウガンダ : イディ・アミン)
・真実の隠蔽(ソビエト連邦 : スターリン)
・新たな社会の構築(リビア : カッザーフィー)
・永遠の支配(北朝鮮 : 金日成&金正日&金正恩)
『暴君になる方法』を見るべき5つの理由
①これで君も明日から暴君の仲間入り!
6人の暴君が生まれた時代背景や彼らのメンタリティ、そして民衆を支配するために用いた過激なメソッドを紐解きながら、プレーブック形式で「暴君になりたいならこうすべき」と皮肉たっぷりにおすすめするのが本作の最大の特徴。
もちろん、その裏に隠されているのは「こういう権力者(主には政治家)に気をつけろ」というアラートなわけだけど、暴君を暴君たらしめる政策やメンタリティを、あえて“オススメ”するというウィットに富んだアプローチは、一般的なドキュメンタリーと一線を画している。
②手軽に歴史を学べる映像コンテンツ
「歴史のドキュメンタリー」と聞くと、途端に拒絶反応が出る方……ちょっと待って!
本作は、ただ映像資料や専門家のコメントを垂れ流すのではなく、アニメーションによる解説が入っていたり、古い映画やカートゥーンの一場面を用いたメタファーが散りばめられたりしているので、とてもテンポが良くて見やすいんだ(もちろん部分部分でとてもシリアスな描写も入るんだけど…!)。これだけ手軽に歴史を学べるコンテンツは意外と少ない。
しかもただポップなだけではなく、過去の映像資料や専門家のコメントにも基づいているので、ちゃんと勉強にもなる。ヒトラー、フセイン、スターリンなど、教科書に必ず載っている著名な暴君も取り扱われているので、学生のみんなにとってはテスト勉強にもなるはず!
③底辺からトップへ駆け上がるサクセスストーリー!?
本作で興味深いのは、様々な国の暴君のストーリーや彼らのメソッドを比較していくことで、彼らの共通点があらわになるというところなんだけど、特に面白いのが「成り上がり方」だ。
例えば、ナチスのアドルフ・ヒトラーやソ連の独裁者であるヨシフ・スターリンは、最初は何者でもなかった(ヒトラーは冴えない画家で、スターリンは貧しい靴職人の息子)けど、運よく政党に入り込み、時の権力者と友好な関係を築き、徐々に徐々にトップの座に近づいていったんだ。
暴君たちが辿ってきた“成り上がりエピソード”は、たしかに歴史に残るだけのインパクトがあるし、ドキュメンタリーの中では時にドラマチックにさえ描かれている。ただ、一方で彼らの残虐な政策の数々はもちろん風化させてはならないし、彼らに近いプロセスを辿ろうとしている権力者には気をつける必要があるよね。
④民衆も暴君を受け入れた!?
もう1つ興味深く、同時に恐ろしいのは、暴君を支持した民衆が非常に多かったこと。
詳しくは本編を見てほしいけど、戦争や不景気によって社会が不安定になり、「このままでは自分たちの国が終わってしまう」と緊張が高まった時に現れるカリスマは、救世主として民衆から支持を受けやすい(もちろんその当時は、暴君としてではなく、善いリーダーとして認識されているわけだけど)。
そんな暴君が誕生する普遍的な(=時代や場所や文化を超えて当てはまる)メカニズムにも注目すると、「暴君、ダメ絶対」という見方に加え、当時の国民の立場に立って「だからこういう独裁者が誕生したのか!」など、立体的な捉え方ができるはずだ。
ちなみに、「1人の圧倒的な実力者による統治」は、実はとても再現性が高いことにも触れておこう。
このドキュメンタリーでは出てきていないけど、『キングダム』で有名な秦の始皇帝も、戦国時代を生き抜いて天下統一を果たした徳川家康も、フランス革命の後にヨーロッパ全土に勢力を広げたナポレオンも、国家の絶対的なリーダー。手強い敵を跳ね除け、画期的な改革を通して国家を平定し、民衆から絶大な支持を受けてきた。
彼らと、本作で紹介されている暴君との違いはなんだろう?そんな比較をしてみても面白い。
⑤声を上げるための第一歩
ヒップホップは、社会や政治、植民地主義への批判や反抗の意思を表明する「レベル・ミュージック」としての性格を持っている。今日のラッパーや彼らが歌うテーマは、実にさまざまなスタイルに枝分かれしているものの、時の権力者やその体制を強く批判する曲は、それこそ普遍的に生み出され続けている。
【 Public Enemy – Fight The Power 】
【 Common – Black America Again 】
【 Childish Gambino – This Is America 】
繰り返しになるけど、本作では、暴君の共通点がたくさん紹介されていく。6話全てを観ると、過去の暴君たちが、どんな動機でその立場を目指すようになったか、そしてどんな状況を好み、どんな状況を嫌っていたかを、かなりの解像度で掴めることだろう。
そしてその学びは、これから(なんなら今この瞬間に)独裁的な政治を行う権力者や彼らが敷く社会システムに対して声をあげるための大事な第一歩と言える。一緒に学んでいこう!
出展元 : 暴君になる方法
配信先 : Netflix
