コンプレックスのある人は必見! 吃音症を克服したある男の物語『英国王のスピーチ』とは?

プロフェッショナルの仕事が、英国王を救う。

ライター:Lee

みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きにオススメの映画を紹介していくよ。

今回取り上げるのは映画『英国王のスピーチ』。英国王ジョージ6世が、コンプレックスである吃音症を克服するまでを描いた、実話を基にした物語だ。

『英国王のスピーチ』ってどんな映画?

 

第二次世界大戦直前にイギリス国王に即位したジョージ6世は、幼い頃から吃音(どもり)に悩まされていた。王族として国民の前でスピーチする機会もあるため、彼の吃音を治療しようと妻のエリザベスは言語聴覚の専門家であるライオネル・ローグを尋ねる。一風変わった治療法でジョージ6世の吃音を治療しようと試みるが…。

『英国王のスピーチ』を観るべき5つの理由

①王としての期待ゼロだった男がみつけた、自分の歩む道

この映画は実話を基にした物語で、日本でも人気の高かった元英国女王のエリザベス2世の、その父にあたるジョージ6世が主人公だ。元国王のジョージ5世の次男として生まれたジョージ6世は、華やかで人気の高かった兄・エドワード8世の影に隠れて生きてきた。実際に病弱で内気で、厳しく躾けられた王室でのストレスから吃音症になってしまったんだ。

周りもジョージ6世の王位継承を期待していなかったが、父の死後に王に即位した兄は結婚を許されない女性と恋に落ちてしまい11ヶ月で王を退位。自動的に弟であるジョージ6世が即位することに。

テレビもネットのない1930年代に、声を届けるメディアとして主流なのはラジオだった。王がラジオを通して国民に届ける言葉は、国民の生きる活力に繋がるため、彼は吃音症の克服へと乗り出した。兄の影に隠れて人生を終えるはずだったジョージ6世が、自分の道を歩み出していく物語でもあるんだ。

映画のクライマックスにあたる、第二次世界大戦へと突入した直後に国民に向けて語られるスピーチは、涙なしには観られないよ。

②吃音の治療にラップが有効!?

ジョージ6世の吃音症の治療を担当したのが、言語療法の世界では治療法がい異端だとされていたライオネルだった。彼は戦争で心を病んで声を出せなくなった兵士の治療を行った経験から、吃音症の克服を専門としていた。吃音症の治療にはいろいろあるが、そのひとつが歌に乗せて言葉を話すということ。

人前だと緊張して言葉が詰まってしまうジョージ6世だが、独り言や歌だとつまらずスラスラと言葉がでてくる。言葉に詰まった場合や言いづらい過去のトラウマの経験などは、歌に乗せて話すことで、吃音症を次第に克服していったんだ。

実は歌と話し言葉の間であるラップも、吃音症の治療のために使われることがある。吃音症ラッパーとして有名な達磨は、ラップにハマることで次第に吃音症を克服していったとインタビューで語っている。

さらに吃音症にはどもってしまう言葉と、言いやすい言葉があり、どもる言葉を類語に変換する工夫をすることで、ラップの武器となる語彙力もたまっていったそう。詳しくは達磨へのインタビュー記事に書かれているから、気になる人は読んでみてね。

https://r25.jp/article/796265439461610216

③国王にも平民にも対等なプロフェッショナルの仕事

プライドを持って仕事に取り組むライオネルの姿からも、学ぶことは多い。ライオネルは効果的な治療のために、国王であろうと誰であろうと「対等」な立場であることを貫いた。治療してもらうのではなく、自分の意思で治そうと思わない限り、吃音症を克服することは難しいからだ。また、お互いの信頼関係なくして、治療はできない。

治療する場所も王室ではなくライオネルの部屋にジョージ6世を呼び寄せ、彼を敬称ではなく、家族しか呼ばない愛称「バーティ(本名がアルバートだから)」と呼ぶ。不敬な態度だと癇癪を起こすジョージ6世にも、それでなければ治療は難しいと、毅然な態度を示すライオネル

国王相手にも自らの治療スタイルを崩さなかったのは、自分の仕事に絶対的な自信を持っていたからだ。最初は疑いの心を持っていたが、克服のために努力しはじめたジョージ6世に対してのサポートを徹底し、果てにはトラウマを抱える心をほぐしていった。そんな彼から、あるべきプロフェッショナルの姿をみることができるよ。

 

④演技派俳優の白熱した演技合戦が見どころ

実はそんなに予算をかけずに制作された『英国王のスピーチ』だが、アカデミー賞を総なめするなど評価が高かったのは、中心人物たちの演技によるところが大きい。

英国王を演じたのは、イギリス人俳優として大人気のコリン・ファース。『ブリジットジョーンズの日記』や、『キングスマン』など、イギリス紳士然として佇まい。自らの置かれた状況に苦しみながらも、困難に立ち向かう実直なジョージ6世を熱演しているよ。

ジョージ6世と友情を育みながら吃音症の克服に一緒に立ち向かったライオネルを演じたのは、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズにも出演していたジェフリー・ラッシュ。コリン・ファースと対峙し、白熱したやりとりを交わす治療シーンは、ふたりの熱演ぶりに引き込まれる。

ジョージ6世を支える妻のエリザベスを演じたのは、『ハリー・ポッター』シリーズや『スウィーニートッド』でインパクトのある悪役を演じていたヘレナ・ボナム=カーター。この映画では、夫の治療を主導する強い意志を持つ良き妻を演じていた。

アカデミー賞では作品賞、主演男優賞、監督賞、脚本賞を受賞。脚本を務めたデヴィッド・サイドラーも幼い頃から吃音に悩まされ無口な人物として生きてきた人物。映画を通して吃音症当事者の苦悩にスポットライトを当て、アカデミー賞のスピーチでは、「世界中の全ての吃音障害者」に捧げると語っている。製作陣の熱意と俳優達の迫真の演技により、『英国王のスピーチ』は映画史に残る傑作になったんだ。

⑤英国王のスピーチをサンプリングしたラップMVも誕生!?

この映画は、音楽シーンに波及していて、イギリスのシンガーソングライター兼ラッパーのダン・ブルが、『英国王のスピーチ』をもじって『The King’s Speech Rap(英国王のラップ)』という曲を作っているんだ。

吃音の症状である、お、お、お、と最初の音でつっかえる特徴をうまく曲に落とし込んでいて、クセになる曲に仕上がっている。本編をサンプリングしたMVも出ているから、気になる人は要チェック!

コンプレックスを抱える人たちに、勇気を与えてくれる映画『英国王のスピーチ』。苦しい現状を打破したい人はぜひ観てみてね。

画像出典元:GAGA

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