ヒップホップと武士道が融合した異色の映画『ゴースト・ドッグ』とは?

ウータン・クランのRZAが担当した映画音楽も見逃せない!

ライター:Lee

みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きにオススメの映画を紹介していくよ。

今回取り上げるのは映画『ゴースト・ドッグ』。武士道を心得たNYのアサシンの生き様を描いた物語だ。

『ゴースト・ドッグ』ってどんな映画?

武士の心得を説いた本「葉隠」をバイブルとするNYのアサシン「ゴースト・ドッグ」。過去に命を助けられたイタリアン・マフィアのルーイ専属の殺し屋として働いていたが、ある仕事で予想外の出来事に巻き込まれ…。

『ゴースト・ドッグ』を観るべき5つの理由

①ウータン・クランのRZAが映画音楽を担当

本作を貫いているヒップホップ精神の源は音楽にある。監督であるジム・ジャームッシュは音楽に造詣が深く、音楽からインスピレーションを得て映画作りをしているそう。そんな監督が本作のインスピレーションにしたのが、ウータン・クランのRZAであり、彼に映画音楽を依頼したんだ。

クエンティン・タランティーノ監督の『キル・ビル』の音楽も手掛けているRZAだが、彼が映画のサウンドトラックの制作に関わったのは今作が初めて。彼自身、アジアのカンフー映画が好きなこともあり、依頼を快諾。編集された映画を見ながら音楽を制作し、「音楽と遊んでくれ」と監督に音楽を提供したそう。自分なりに、このシーンはこの音楽というイメージがあったはずなのに、粋な行動だよね。そうしてふたりのクリエイティブがぶつかることで、新しいジャンルの映画が誕生したんだ。

物語の中でもイタリアン・マフィアがウータン・クランの音楽を口ずさんでいたり、街中で黒人の青年たちがサイファーをしていたりと、いたるところにヒップホップ要素が散りばめられているよ。本編には密かにRZAが登場しているから、探してみてね。

②日本の武士道とヒップホップの融合

主人公のゴースト・ドッグの愛読書である『葉隠』は、江戸時代中期に書かれた、武士の心得を説く書物。はじめに出てくる「武士道とは死ぬこととみつけたり」など、映画では『葉隠』の内容が引用されている。

武士の心得に従って生きているゴースト・ドッグは、主として敬う人に対しては絶対的な服従を誓い、無駄な殺生はしない。武士道を曲げない生き方は、ヒップホップの己の信念を貫く精神と、どこか繋がりを感じることができる。

本作で登場する武器は刀ではなく、あくまでアメリカらしい銃だが、人を殺した後にゴースト・ドックが銃を仕舞う仕草は、刀をさやに納める姿にそっくり。日本人よりも武士の心に忠実である彼に、敬虔の念を覚えるよ。

③作家性の強い監督

監督のジム・ジャームッシュは、作家性の強い映画を多く撮っている人物だ。日本にも縁があり、彼の監督作品『ミステリー・トレイン』や『パターソン』では、日本人俳優の永瀬正敏が出演している。

本作を撮るにあたって、監督も『葉隠』を読み込んだそうだ。そこに書かれた教えに従って「小事は大事のごとく、大事は小事のごとく」を心がけ、映画を作ったという。映画を作ること自体を大事とは捉えずに、逆に映画の中の小さなディティールを大事として捉えていった。それぞれの登場人物が何を大切にしてるのか、どんな信念に則っているのかは、彼らが読んでいる本や、ふとした行動の中で現れているよ。

音楽も好きだが、大のアニメ好きでもある監督。本作でもマフィアがたびたびカートゥン・アニメを観ているシュールなシーンがあるが、監督が200時間ものアニメをみて、セレクトしたシーンが流れているんだ。それも作品の内容とシンクロしたものになっているから、何気ないアニメのシーンも楽しむことができるよ。

 

④俳優フォレスト・ウィテカーの存在感

なんといっても、主人公を演じたフォレスト・ウィティカーが圧倒的な存在感を放っている。彼自身、武道に精通しており、幼い頃から拳法空手に週3〜4日通っている黒帯取得者でもあるんだとか。

そんな彼の大きくて威圧的な体の反面、優しい心の持ち主という矛盾に惹かれたのが、ジム・ジャームッシュ監督だった。武士道を心得つつも、全く関係ない世界にいる矛盾を抱える人のキャラクターを連想し、『ゴースト・ドッグ』の物語を考えたんだ。彼なしには、この映画は生まれなかったんだ。

作中には熊のメタファーが何度も出てくるが、熊のようないでだちにも関わらず、機敏な動きと緻密な仕事の運び方のギャップが、彼をゴースト・ドッグたらしめているよ。

⑤友達にとって大切なものは何か

鳩と一緒に暮らし、いつも孤独にみえるゴースト・ドッグにも親友がひとりいた。それはアイスクリーム屋さんを営む、違法滞在中のハイチ人レイモンド。しかし彼はフランス語しか話せず、ゴースト・ドッグは英語しか話せない。言葉が通じないはずなのに、彼らはお互いを心配し、気遣いあっている。

たまにお互い通じ合っているのか?と勘違いするくらい、二人の話している内容がシンクロすることもあり、友情に必要なのは言葉ではなく、態度や行動だということが伝わってくる。

一見変わった映画だけど、ヒップホップと武士道を通して大切なことを教えてくれる映画『ゴースト・ドック』。興味のある人はぜひチェックしてみてね。

画像出典元:フランス映画社

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