『スライ・ストーン』を観るべき理由|ストリートヘッズのバイブル Vol.175

20世紀音楽史における最高のアーティストの一人、スライ・ストーンに迫ったドキュメンタリー

ライター:TARO

「ストリートヘッズのバイブル」では音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!今回紹介するのは20世紀音楽史における最高のアーティストの一人、スライ・ストーンに迫ったドキュメンタリー『スライ・ストーン』。

『スライ・ストーン』とは?

1960年代後半にデビューするやヒットソングを連発し、世界的なバンドとなったスライ&ザ・ファミリー・ストーン。音楽の概念を塗り替えるほどの活躍を見せた彼らだが、1975年にはバンド活動を休止。以降、リーダーであるスライ・ストーンは長年消息不明となっていた。オランダ人のドキュメンタリストであり、スライの大ファンのウィレム・アルケマはスライのドキュメンタリー制作のため、アメリカに渡り、独自の捜索を開始する。果たして彼はスライ本人に会えるのか?多くの関係者への丁寧なインタビューと長期に渡る現地取材をもとに作られたスーパースター、スライ・ストーンの貴重なドキュメンタリー。

『スライ・ストーン』を見るべき5つの理由

20世紀音楽シーンに輝く圧倒的な革新性。スライ&ザ・ファミリー・ストーンとは?

スライ・ストーンは主に1960年代〜1980年代にかけて活動したアメリカのミュージシャン。自身のバンド、スライ&ザ・ファミリー・ストーンを率い、ファンク、ソウル、ロックをクロスオーバーするダンサブルなサウンドで、音楽史に残る名曲を多く生み出した稀代の天才アーティストだ。特に1968年リリースの「Dance to the Music」は一度は耳にしたことがある人も多いんじゃないかな?

ジミ・ヘンドリックス、マイルス・デイヴィス、マイケル・ジャクソンなどと並び称される20世紀音楽史における最重要人物であるスライ。映画『スライ・ストーン』は1975年のバンド解散以降、表舞台から姿を消したスライ・ストーンの消息を追った貴重なドキュメンタリーだ。

②ヒップホップやR&Bへの影響

ダンサブルでエモーショナル、土臭さや渋さもありながら、それでいて圧倒的に洗練されていて、いつ聴いてもフレッシュ。まさに唯一無二と言える至高のバンドサウンドを生み出したスライ&ザ・ファミリー・ストーンは1967年にリーダーであるスライ・ストーンが中心となって結成されたバンドだ。
結成翌年の1968年にリリースした「Dance to the Music」はビルボード・Hot 100で8位を記録。グループの名を全米に轟かせると、「Everyday People(1968)」、「Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin)(1970)」などヒット曲を連発。一気に世界的なバンドになっていく。そんな彼らの名曲はヒップホップやR&Bシーンへの影響も大きく、「Everyday People」は Arrested Development(アレステッド・ディベロップメント)の「People Everyday(1992)」に、「Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin)」はJanet Jackson(ジャネット・ジャクソン)の「Rhythm Nation(1989)」にサンプリングされるなど、多くのヒットソングで取り入れられているんだ。

③時代を超える概念

スライ&ザ・ファミリー・ストーンは黒人と白人、そして女性も参加していたバンド。これは人種やジェンダー間の隔たりがまだまだ大きかった1960年代のアメリカではかなり珍しいスタイルであり、このスタイルをよく思わない人も少なからずいたんだ。特に当時、黒人の権利向上や武装自衛を訴えていた組織であるブラックパンサー党はこの体制に不満を抱いていたようで、スライに対し、白人のメンバーを外すように要求。しかし、スライは音楽は人種やジェンダーの壁を超えるという信念のもと、この要求を拒否、バンド活動を継続したんだ。当時ブラックパンサー党はアメリカ社会、そして黒人コミュニティにおいて大きな影響力を持っていた団体であり、その要求を退けて、自分の信念を貫くのは並大抵の決意でできることではないよね。その後1990年代にはヒップホップシーンでも、The Black Eyed Peas(ブラック・アイド・ピーズ)やJURASSIC 5(ジュラシック・ファイヴ)など異なる人種的バックグラウンドを持つメンバーが集ったクルーが生まれ、いまではポップシーンでもそういったグループが珍しくなくなってきているけれど、スライはそんな“壁”を取り払ったパイオニアとも言えるよね。

「音楽の力は様々な壁を壊し、世界を変えるができる」ということを、バンドのスタイルを通しても証明したという意味でもスライ、そしてスライ&ザ・ファミリー・ストーンは本当に偉大な存在なんだ。

④ 監督、そしてオタクたちの執念

このドキュメンタリーを撮ったのはオランダ人のドキュメンタリスト、ウィレム・アルケマ。彼はスライの大ファンであり、1975年の活動休止後、長年消息不明となっていたスライの消息をありとあらゆる手段を使って追っていく。ドキュメンタリー内では筋金入りのスライオタクであるオランダ人の兄弟、アルノとエドウィンも登場。3人はスライにインタビューするためアメリカに渡り、スライ&ザ・ファミリー・ストーンのメンバーや音楽業界の関係者などにインタビューをしまくり、とうとうスライの居場所を見つけ出す。

尋常じゃない執念だけど、彼らのおかげでスライに関しての貴重なドキュメンタリーが完成したわけで、ある意味では音楽オタクたちのスライ愛の勝利でもあるよね。

⑤ 音楽好きなら絶対に刺さる

スライの音楽はもちろん、彼の信念や生き様にも触れることができる作品『スライ・ストーン』。スライは2025年に82歳で亡くなっているのだけど、彼が仲間と共に創り上げた音楽は今も世界中の人々に愛されているし、ヒップホップやR&Bの音源にも多くサンプリングされている。そして何よりも彼が大切にしていた “音楽が全ての壁を取払い、人々に力を与える” という精神性は音楽業界やエンターテイメントに関わる人々の中で受け継がれているマインドであり、特に世界的なカルチャーとなったヒップホップでは大切にされている考え方でもあるよね。音楽好き、そしてヒップホップヘッズのみんなはぜひこの作品をチェックして、スライの偉大さ、そして音楽が生み出す力の素晴らしさに触れてみて欲しい。

出展元:キュリオスコープ

配信先:Amazon Prime