みんな文化ディグってる?「ストリートのヘッズのバイブル」のコーナーでは音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!
今回に取り上げるのはアジアが誇るアクション・スター、ジェット・リーの主演作『ロミオ・マスト・ダイ(2000)』。DMXやアリーヤなどヒップホップ・ヒストリーに残るレジェンドたちが出演した“カンフー・ヒップホップ”の金字塔だ。
20年以上前の映画ながらも今見ても間違いなく楽しめる『ロミオ・マスト・ダイ』の魅力を解説するよ!
『ロミオ・マスト・ダイ』とはどんな映画?
舞台はアフリカ系ギャングと中国系ギャングの二大組織が縄張り争いを続けるカリフォルニア州オークランド。
二つの組織は大きな衝突が起きないよう微妙な均衡を保っていたのだが、ある日中国系ギャングのボスの息子、ポーが殺されるという事件が起きる。
ポーの兄であり、元刑事のハン(ジェット・リー)は父親の罪を被って香港で服役していたのだが、弟が殺されたという知らせを聞き、脱獄。真相解明のために、オークランドにわたり、独自に調査を始める。そんな中、ひょんなことから出会ったトリッシュ(アリーヤ)と仲を深めていくのだが、実はトリッシュは敵対しているアフリカ系ギャングのボスの娘だった。二人は様々な危険をかい潜り、真相を探り出していく。
『ロミオ・マスト・ダイ』を観るべき5つの理由
①アジアのスーパースターとヒップホップスターの共演
『ロミオ・マスト・ダイ』はなんと言ってもジェット・リーの大出世作。すでに香港では大スターだったリーが初主演したハリウッド作品であり、世界的にリーの名前を知らしめた映画だ。
そして特にヘッズにはたまらないのがDMX、アリーヤなど2000年代を代表する豪華ヒップホップ・スターの出演。特にアリーヤは2001年に飛行機事故で亡くなってしまったので、彼女の演技を見ることができる貴重な映画でもある。またDMXが俳優としてのキャリアを広げたのがこの映画。
映画の中では一場面だけの限られた出演ながらも、監督のアンジェイ・バートコウィアクにその圧倒的な存在感を認められたDMXはの後、アンジェイ監督の『DENGEKI 電撃 (2001)』『ブラック・ダイヤモンド(2003)』に連続して出演。俳優としての大きなステップアップを遂げることになるんだ。
②カンフー・ヒップホップの金字塔
映画の見どころは“カンフー・ヒップホップ”と呼ばれるアジアとアフリカンの二つのカルチャーを融合させた世界観。実は昔からヒップホップとカンフーは親和性が高く、90年代を代表するヒップホップクルー、ウータン・クランもカンフーカルチャーが大好きで、クルー名のWu-Tangはカンフー映画『Shaolin and Wu Tang (少林と武当)』の“Wu-Tang(武当、武闘)”から取ったというほど。
最近ではケンドリック・ラマーが自分の衣装にカンフー要素を取り入れた”カンフー・ケニー”というキャラを作るなど、とにかくカンフーはラッパー達からめちゃくちゃ愛されている。カンフーもアメリカではマイノリティの文化であり、ヒップホップと同じく深い哲学性を持っていることなどもラッパーたちに受け入れられている要素なんだろうね。
『ロミオ・マスト・ダイ』はそんなカンフーとヒップホップが最高レベルで融合した映画。とかくおもしろおかしく描かれがちのカンフーとヒップホップを、真正面からクールに描いており、アメリカ社会におけるマイノリティであるアジア系とアフリカ系の人々がそれぞれの文化の最高にカッコいい部分をレペゼンしている作品なんだ。
③脇を固める激シブ俳優陣
『ロミオ・マスト・ダイ』を名作たらしめているのが、出演している名脇役たちの存在。スパイク・リー作品への出演で知られるデルロイ・リンドーやイザイア・ワシントン、この映画の後に『ディパーテッド』や『トランス・フォーマー』などの大作映画に出演することになるコメディ俳優、アンソニー・アンダーソン、そしてアジア系ハリウッド俳優の先駆者、ラッセル・ウォンなど実力派の俳優たちが揃い踏みしているんだ。
④音楽はティンバランドが担当
映画を作り上げるものとして欠かせないのが音楽だよね。『ロミオ・マスト・ダイ』でサウンドトラックをメインで担当してるのが90年代後期から2000年代初頭に「チキチキビート」と呼ばれる高速ハイハットを変則的に鳴らすドラム打ち込みで爆発的なムーヴメントを作りだしたティンバランド。
特に映画のためにアリーヤをボーカルに迎えて作曲された「Try Again」はアリーヤのセクシーな歌声とティンバランドのシンセを取り入れたチキチキサウンドが病みつきになる一曲。
他にもサウンドトラックとしてはDMX、ジニュワイン、ジョー、ディスティニーズ・チャイルドなど2000年代のR&Bを彩ったトップアーティストたちの楽曲が使用されているのでぜひ音楽もチェックしてみてほしい。
⑤ジェット・リーがヤバすぎる
色々と語ってきた『ロミオ・マスト・ダイ』だけど、結局のところ一番ヤバいのは主演のジェット・リー。160センチ台の小柄な身長ながらも、脅威的な身体能力で屈強なギャングの大男たちをバッタバッタとカンフーでなぎ倒す姿には、誰もが惚れてしまうこと間違いなし。
さらにジェット・リーが演じるハンは従来のアジア人キャラとは違い、驚異的な恋愛積極性でヒロインのトリッシュ(アリーヤ)をキザにナンパ。トリッシュもまんざらではない様子でストーリーが進んでいくのだ。まさにカンフーを習って強くなればアメリカ人美女の心も掴むことができるというアジア系キッズに夢を与える作品なのだ。
カンフー・ヒップホップの金字塔
ジェット・リーというアジアのスターとDMXやアリーヤなどミュージック・スターの共演、そして豪快なカンフー・アクションとティンバランドが手がけるサウンドトラックなどヘッズなら間違いなくアガるポイントが盛り沢山の『ロミオ・マスト・ダイ』。
現在各動画配信サービスでも視聴することができるので、ぜひおうちで友達や彼氏、彼女とデリバリーピザでも食べながら、ヒップホップとカンフー・アクションの最高レベルでの融合を楽しんで欲しい。
画像出典元:WarnerBros.com
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