目 次
「ストリートヘッズのバイブル」では音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!今回取り上げるのは、2008年のスーパーヒーロー映画『アイアンマン』。
『アイアンマン』とはどんな映画?
天才発明家で軍需企業の社長・トニー・スターク(ロバート・ダウニー・ジュニア)。自由奔放に生きていたトニーはある日アフガンでテロリストに拉致されてしまう。自作のパワードスーツで脱出したトニーはその後スーツを世のために役立てることを決意、“アイアンマン”として正義のために戦うようになる。
① ロバート・ダウニー・ジュニアという
リアル破天荒俳優
映画監督の父を持ち、子役として幼い時から俳優として活動していたロバート・ダウニー・ジュニア。しかし同時に若い時からドラッグ依存でもあり、俳優としてのキャリア初期から何度もドラッグ所持で逮捕されてきた。1996年、31歳の頃にはドラッグで初逮捕、その後もやめられず1999年には刑務所入り。出所後は当時大人気だったドラマ『アリー my Love』に出演して賞も取るなど俳優として順調なキャリアを歩んでいたのだけど、2001年にまた薬で捕まり、リハビリ行き&番組降板に。そんな度重なるドラッグのトラブルから次第に俳優としてもなかなかキャスティングされなくなっていたロバートが久しぶりに俳優として脚光を浴びたのがこの『アイアンマン』なんだ。当初製作陣はロバートの薬物問題から彼のキャスティングに難色を示していたのだが、ロバートが完全にドラッグを断っていること、そして何よりもオーディションにおける彼の圧倒的演技力に魅了され、主役のトニー・スターク役に決定。結果、映画は大ヒットし、トニーは名実ともにハリウッドのトップ俳優に返り咲いたんだ。
② アメリカのスーパーヒーローの中でも
一際ヒップな主人公
アメリカのヒーロー映画に出てく主人公というと、例えばサム・ライミ監督の『スパイダーマン(2002)』でトビー・マグワイアが演じた“ピーター・パーカー”や、クリストファー・ノーラン監督のダークナイト三部作でクリスチャン・ベールが演じた“ブルース・ウェイン”など、非常に内省的で、常にスーパーヒーローとしての役割に悩んでいるヒーロー像が2000年代以降の一つのテンプレートとしてあるよね。
そんな中で2008年に登場したロバート・ダウニー・ジュニアの“トニー・スターク”は超イケイケ。大富豪で天才発明家、毒舌でナルシスト。なのにスタイリッシュで誰もが惹かれてしまう愛すべき人間味があり、何よりも圧倒的にセクシー。
そんな従来のヒーローとは違った、クールでセクシー、そしてウィットに富んだジョークを飛ばしくる新時代のヒーロー像を確立したのがこのロバート・ダウニー・ジュニアの“トニー・スターク”であり、だからこそこの『アイアンマン』はヒーロー物の中でも唯一無二の存在感を放つ作品となっているんだ。
③ 実は示唆的なアイアンマン誕生のきっかけ
老若男女が楽しめるスーパーヒーロー映画『アイアンマン』だけど、実は現代社会に対しての示唆的なメッセージも込められている。それがアイアンマン誕生のきっかけのエピソード。物語の序盤、トニーは、自社が開発した武器のプレゼンテーションのためにアフガニスタンを訪問していたところ、テロ組織に拉致され、自社製の武器で重傷を負う。
その後洞窟に監禁された彼は、現地の医師の協力でなんとか命を繋ぎ、天才的な能力でパワードスーツを開発し、脱出、命からがらアメリカに帰国する。アフガンで自社の兵器が人々を殺しているのを目の当たりにしたトニーは軍需産業からの撤退を宣言。「アイアンマン」として正義のために新たな道を歩み始めるというものだ。
この映画内の展開は2001年の同時多発テロへの報復措置としてアメリカが行ったアフガニスタンへの軍事侵攻を否定するもの。映画が制作された時期はアフガンへの軍事侵攻を進めたブッシュ政権への批判が最も高まっていたタイミングであり、特にアフガンでの軍事作戦は泥沼化していた時期だ。
「アイアンマン」でのこのアフガニスタンの描写、そして、その後のトニーの姿勢は非介入主義や反戦主義、そして何より平和主義というメッセージを製作陣が込めたものとも見て取れるよね。
④ IT国家アメリカが一変させた世界の様相
軍需産業に嫌気が差したトニーが開発するのが、それまでの軍事用製品の技術とトニーの天才的な発明力を活かした最強パワードスーツ“アイアンマン”。
無敵のスーツを手に入れたトニーは悪者たちと戦い、アメリカ国民を守りぬく。
ストーリーは従来のアメコミやヒーロー映画のものと同様なのだけど、特にこの「アイアンマン」における特徴は、やはりテクノロジーというものに対しての目線。映画が制作された2000年代中盤はAppleが続々と新作をリリースし、ガジェット業界を席巻、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアが広まり、今のGAFA企業たちがまさに怒涛の勢いでデジタルマーケットを制していく時代だった。『アイアンマン』におけるテクノロジーの描写は、アメリカのITにおける先進性が世界を席巻して行っていた時代の様相をも表しているんだ。
⑤ ウータン・クラン、ゴーストフェイス・キラーのカメオ出演!?
アメコミのヒーローとして長くアメリカのキッズたちから愛されているアイアンマンはラップのリリックにもよく登場するトピック。特にウータン・クランのゴーストフェイス・キラーは1996年のソロ・デビューアルバムに『Ironman』というタイトルをつけているほどの大ファンだ。実はそんなゴーストフェイスこの2008年の映画『アイアンマン』にカメオ出演する予定だったんだ。実際にシーンは撮っていたみたいなんだけど、本編では残念ながら出演シーンはカット、幻のカメオ出演になってしまったのだけど、DVD版ではその映像は公開されており、今回はその映像を紹介するよ。
USのアメコミカルチャーとヒップホップのリンクが伺えるナイスなシーンだぜ。
画像出典元:パラマウント・ピクチャーズ