みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きにオススメの映画を紹介していくよ。
今回取り上げるのは『はじまりはヒップホップ』。ヒップホップダンスの世界大会への出場を目指す、平均年齢83歳のヒップホップクルーを追ったドキュメンタリー映画だ。
『はじまりはヒップホップ』ってどんな映画?
ニュージーランドにあるのどかな島、ワイヘキ島で誕生したダンスグループ「ヒップ・オペレーション・クルー」。72歳が若手と呼ばれる平均年齢83歳のチームは、ラスベガスで開催される世界大会出場を目指すことに。それぞれ家族の問題や持病を抱えながらも、「いまが一番たのしい!」と、夢に向かって進んでいく。
『はじまりはヒップホップ』を観るべき5つの理由
①挑戦に年齢制限はない
公民館でヒップホップダンスを踊るお年寄りたちは、2013年にフラッシュモブで一躍有名となり、ヒップホップダンスクルーを結成した。
ヒップホップダンスといえば、どうしても若者が踊るイメージが強い。だけど資格も何もいらないダンスは、踊りはじめてしまえばすべての人に開かれている文化だ。ヒップホップの音楽に馴染みはないが、体を動かすのが楽しいからと、ダンスを踊るお年寄りたちはその楽しさにだんだんと魅了されていく。
グループ名のヒップ・オペレーションの由来は、チーム全員が腰(hip)の手術(operation)を受けたことがあることから来ている。名前だけでもパンチがあるけど、彼女たちが目指すのは“ヒップホップのオリンピック”と呼ばれる世界大会、ワールド・ヒップホップ・ダンス・チャンピオンシップへの出場だ。
そんな無謀な!と思うが、ダンスチームを結成したビリーの提案に、彼女たちは目を輝かせる。新たな挑戦をすることに年齢は関係ないことを、教えてくれる。
②自分から世界と繋がろうという好奇心
歳を取ると体が不自由になり、外に出るのも億劫になりそうだが、この映画に登場するお年寄りたちにはそんな心配は無用。
夫を亡くした後「誰も会いにきてくれないと泣くのはいや」と、外の世界に居場所を求めたピアノ好きのカーラ、「障害者こそ外に出るべき」とバスでダンスの練習に行く目がほとんど見えないローズマリー。体は老いていても、彼女たちの心はまったく老いていない。
彼女たちのアクティブさを後押しするのは、チームをまとめる指導者のビリー。彼女は2011年にニュージーランドで起こった大地震の被災者で、住んでいた地域が大打撃を受けた。地面が揺れるなかで「もし生きてたらワイヒキ島に移住して後悔なく生きる」と決めて島に越してきたんだ。そんな彼女は孤独を抱えたお年寄りたちと交流するうちに、みんなに勇気を与える存在になっていく。
ビリーの大胆な行動力がお年寄りたちを鼓舞し、みんなでラスベガスを目指すことに。年齢によるボーダーラインをとっぱらったおばあちゃんたちが巻き起こすムーヴメントは必見だ。
③若者たちとの心を通わす交流
ヒップホップダンスを踊る人は、圧倒的に10代20代の若者が多い。そんな若者たちとの交流も映画の見所のひとつだ。ニュージーランドの10代の少年少女が通うダンススクール「デザイア・ダンス・アカデミー」を訪問することになったお年寄りたち。
自分の孫やひ孫でもおかしくない年齢の子たちに、自分たちのダンスが受け入れてもらえるか不安だったが、拍手喝采で大歓迎された。パワー溢れる若者との交流にエネルギーをもらうお年寄りたちだったが、若者も彼女たちに刺激を受けていた。「いつも不機嫌で自分たちを目の敵にしてくる存在」だった老人のイメージが変わり、歳をとっても踊り続けたいという希望になったんだ。
カルチャーを愛する者たちに国境も関係ないが、年齢も関係ない。世界大会の会場で再会した彼らは年齢を飛び越えた、ヒップホップを踊る仲間として熱い抱擁を交わしていた。
④イケてるおばあちゃんたちの物語
映画の中で掘り下げられる人物は、みな女性。人生の半分以上を家族に捧げ、大変なできごとにも見舞われてきたけど、いまはダンスを通して人生を楽しんでいる。
テリーは乳がんで両胸を全摘出した過去を持ち、愛する夫は認知症。施設にいる夫をおいて自分だけラスベガスに行くことに後ろめたさを感じるが、夫の応援もあって薬を飲みながらダンス練習に励んでいる。
最年長94歳のメイニーは、ベトナム戦争の反対デモに参加し、ワシントンで何千人もの前でスピーチしたワイサイ島の伝説的な存在。シングルマザーとして5人の子供を大変な思いをしながら育て、今でも「体のガタがきても脳が衰えたら困る」とたくましさは衰えない。リーダーシップはダンスチームでも発揮され、スターダンサーとしてみんなをひっぱる存在だ。
いくつになっても人生は楽しめることを、彼女たちのアクティブさと笑顔、そしてクールなダンスが教えてくれる。
⑤夢を叶えるための行動力
夢を叶えるためには、まず行動することが何より大事。でもなかなか実際に行動に移すことって難しいよね。でも”ヒップ・オペレーション・クルー”の大先輩方はそこも一味違う。世界大会に出場を決めただけでもすごいんだけど、なんとその費用を自腹で捻出したんだ。
まとめ役のビリーは積極的にメディアの仕事をとり、スポンサーや寄付の募るために力を尽くし、どうしても足りない分はお金を持っている人たちが出しあった。チーム一丸となって、みんなでラスベガスに行くことを目指したんだ。
世界大会への特別出演を果たした後、世界をまわりながらダンスを披露することになったヒップ・オペレーション・クルー。年齢の足かせをとっぱらって快進撃を続ける彼女たちの活躍はマストチェックだ!
画像出典元:ポニーキャニオン
配信先:U-NEXT