パンチラインで観る映画『グッドフェローズ』|ストリートのヘッズのバイブル Vol.89

マーティン・スコセッシ監督が描く泥臭く、スタイリッシュなマフィアたちの名セリフを紹介!

ライター:TARO

みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きにオススメの映画を、作中に登場するセリフを通して紹介していくよ!今回取り上げるのはマーティン・スコセッシ監督のマフィア映画『グッドフェローズ』。実在のイタリア系マフィア、ヘンリー・ヒルの自伝を基にした映画であり、マフィア映画史上、最高傑作の一つとされる作品だ。今回は『グッドフェローズ』のパンチラインを3つ取り上げるよ!

『グッドフェローズ』ってどんな映画?

1950年代から1980年代にニューヨーク・ブルックリンで舞台にイタリア系マフィアたちの興亡を描く。主人公のマフィア、“ヘンリー”をレイ・リオッタ、兄貴分の“ジミー”をロバート・デ・ニーロ、キレると手がつけられない“トミー”をジョー・ペシが演じる。超実力派俳優たちの生々しい演技と、スコセッシ監督のスタイリッシュでクールな映像が組み合わさった映画史上に残るマフィア映画。

『グッドフェローズ』の名セリフ

①物心ついた頃には、常にギャングスターになりたいと思ってた

“As far back as I can remember, I always wanted to be a gangster.”

「物心ついた頃には、常にギャングスターになりたいと思ってた」

映画冒頭、主人公のヘンリーのセリフ。実際に原作の作者でもあるヘンリーが少年時代を過ごした1950年代はマフィアが街を仕切っていた時代。実はスコセッシ監督はヘンリーの1歳年上で、ブルックリンのお隣の区、クイーンズ出身ということで同時代に同じような風景を見て育っているんだ。ただもちろんスコセッシ監督はマフィアではなく、喘息持ちで、どちらかというとインドアなタイプ。対してヘンリーは小さい頃から近所でも評判の不良だった男だ。ただどちらの少年にも共通して言えるのは、幼い頃から自分の街にあたり前にマフィアの大人がいたということ。良い服を着て、イケてる女性をはべらかし、良い車に乗る。そんな自分の街にいる“かっこいい大人”の代表例がマフィアだったんだ。
『グッドフェローズ』はそんな街の顔役であったマフィアたちを間近で見て育った少年二人のリアルな感覚が息づいている作品。だからこそマフィアのクールな部分とリアルで泥臭い部分との両方を描いた唯一無二のマフィア映画になっているんだ。

②オレたちにとって、ギャングスター以外の生き方は狂気の沙汰

“For us, to live any other way was nuts. To us, those goody-good people who worked shitty jobs for bum paychecks and took the subway to work every day, worried about their bills, were dead. I mean, they were suckers. They had no balls. If we wanted something, we just took it. If anyone complained twice they got hit so bad, believe me, they never complained again.”

「オレたちにとって、他の生き方は狂気の沙汰だった。クソみたいな給料のためにクソみたいな仕事をして、毎月の請求を心配しながら、毎日地下鉄に乗って通勤するいわゆる善良な人々はマジで死んでるも同然だよ。クソだね。彼らには根性がない。オレたちは欲しいものがあれば、手に入れる。マジだぜ。文句を言った人はボコボコにしてやった。そしたら二度と文句を言わなかったぜ」

マフィアの一員としての生活を始めたヘンリーのセリフ。真面目に働く一般の人々のことをクソ呼ばわりし、文句を言う人々はボコボコにするなんて、怖すぎるぜ。。実際にヘンリーたち一味は逆らうものを暴力で従わせて、金を巻き上げる。強盗や恐喝で普通の人では稼げない額の金を手にしていく彼らは超高級スーツを身にまとい、高級車を運転、美女をはべらかせ、レストランやバーでは常にVIP待遇で、どれだけ人気の店でも行列に並ばずに一番良い席へ案内してもらえる。映画を観る人々の中には彼らのようなギャングスターを恐ろしいと思うと同時に、やはりどこかで「かっこいい、そんな生活してみたい」と思う憧れの気持ちを持つ人も少ないはず。ある意味ヘンリーのセリフは観客の奥底にある願望を言葉にしているとも言えるね。

③他の連中と同じように列に並んで待たないといけない

“ Today, everything is different. There’s no action. I have to wait around like everyone else. I can’t even get decent food. Right after I got here, I ordered some spaghetti with marinara sauce and I got egg noodles and ketchup. I’m an average nobody. I get to live the rest of my life like a schnook.”

「今ではすべてが違う。賭け事はないし、他の人と同じように行列に並んで待つ。良い飯も食えない。マリナラソースのスパゲッティを注文し、エッグヌードルとケチャップをつける。今やオレは平均的な、何者でもない男だ。このクソみたいな生活が死ぬまで続く」

物語終盤、仲間から命を狙われることになり、マフィアを引退したヘンリー。
このセリフは警察の証人保護プログラムで身分で変え、一般市民として生きることを選んだヘンリーがエンディングで観客に向かって語りかける場面でのものだ。
欲しいものはなんでも手に入ったし、金と暴力を使って全て自分の思い通りにやってきたヘンリーが今は一般人と同じように店に入る時は列に並び、安物のスパゲッティを食べる。一般の人たちからすると当たり前の生活だが、彼にとっては苦痛でしかない。でもこれも実は観客である僕たち皆がどこかで抱えている感情。毎日電車に乗って、仕事に行き、列に並びランチを食べ、仕事が終われば家に帰り、夕食を食べ、眠りにつく。そしてまた次の日は昨日と同じように仕事に行く。
それはもちろん当たり前の生活なのだけど、誰もが「自分ってこれでいいのか?」とふと疑問に思うこともある。ラストシーンでヘンリーが見せるひきつった笑顔と“ I get to live the rest of my life like a schnook(このクソみたいな生活が死ぬまで続く)”は“普通の世界で普通に生きる”ことを選んでいる観客に向けての痛烈なメッセージなのかもしれない。

 

画像出典元:ワーナー・ブラザーズ

配信先:Netflix

 

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