ノトーリアス・B.I.G.暗殺事件の闇に迫る映画『L.A.コールドケース』とは?

長年暴かれなかった衝撃の真実を目撃せよ。

ライター:Lee

みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きにオススメの映画を紹介していくよ。

今回取り上げるのは映画『L.A.コールドケース』。ヒップホップ東西抗争の果てに殺されたノトーリアス・B.I.G.の事件に謎に迫る、クライムサスペンスだ。

『L.A.コールドケース』ってどんな映画?

全米に衝撃を与えたノトーリアス・B.I.G.の暗殺事件から18年。当時、事件を担当していたロサンゼルス市警察所の元刑事ラッセル・プールは、18年経った今も独自に事件を追い続けていた。ある日彼の元に取材に訪れたジャーナリストのジャック・ジャクソンは、ラッセルの話を聞くうちに、衝撃の事実を知ることになり…。

『L.A.コールドケース』を観るべき5つの理由

①ヒップホップ史上最大の東西抗争が発端

映画の根幹を貫いているのは、今は亡きヒップホップ界の大スター、2パックとノートリアス・B.I.G.(ビギー)が命を落とした暗殺事件。ふたりは1990年代のヒップホップ「東西抗争」の最中に、銃撃によって殺害された。27年の時を経て、2パックを殺した犯人が逮捕されたニュースは記憶に新しいが、ビギーを殺した犯人はまだ見つかっていない。そんなビギー暗殺事件の犯人の真相に限りなく近づいた映画が『L.A.コールドケース』なんだ。

なぜビギーは殺されなければいけなかったのか? なぜ今も事件は解決されないままなのか? その謎を追う過程で浮かび上がるのが、アメリカの人種差別問題や警察の汚職事件。それが過去のことではなく、現在にも続いていることが、この映画の公開が4年も延期されたことからも知ることができる。

いろんな圧力を受けながらも公開に至ったこの映画は、まさに一見の価値アリだ。

②ロス市警の闇を暴く、実在の元刑事が主人公

東海岸と西海岸を代表するカリスマラッパーがどちらも暗殺された事件。ともすれば刺激的な物語として消費してしまいそうになるが、前途有望な若い男性がふたりも殺された、れっきとした殺人事件だ。そんな事件を必ず解決しようとのめり込んでしまい。刑事としての職まで失った男が、主人公のラッセル・プール。

彼は実在の人物で、およそ18年にもわたってビギーの暗殺事件を独自に追っていたんだ。捜査するうちに浮かび上がったのは、ビギーと対立していた2パックが所属するデス・ロウ・レコード。そのボスであるシュグ・ナイトの護衛を、ロス市警の警察官が副業として担当していたことが判明した。

ロス市警に身を置きながら、ロス市警の腐った部分にメスを入れようとするラッセルは、その闇に近づけば近づくほど、そのどんでもない深さに足を取られそうになる。しかし、仕事を失おうと家族を失おうと、一人の若者の殺人事件をどうにか解決しようとする姿に、正義とは何かを突きつけられる。

ラッセル・プール本人は映画制作が決定した直後に、58歳の若さで志半ばで亡くなっている。そんな彼の意志が、この映画では受け継がれているんだ。

③職の尊厳を取り戻した、落ちこぼれ記者の物語

この映画は、ひとりの男の再生物語としても描かれている。それが、ビギーの回顧特集を任されたジャーナリストのジャック・ジャクソンだ。長年ビギーの事件を追っているラッセルに取材を申し込んだことから、ふたりの交流が始まることに。

ジャクソンは2パックが暗殺された頃に、ビギーの関与を仄めかす記事を書いて賞をとった過去がある男。ラッセルを取材する中で、想像を超えた事実を知り、過去の自分の記事を悔いたジャクソンは、ラッセルと共に一緒に事件の真相を追いかけることに。

しかし昔の事件を掘り返すなと上司に圧力をかけられ、突撃取材をした警察上層部には、ラッセルの言うことは嘘だと貶められてこっぴどく反撃される。何が真実なのかわからない中でも、ラッセルの揺るぎない信念に感化されることで、枯れていたジャーナリストとしての心に、再び火をつけることになる。自分自身の正義とは何かを考え、ジャーナリストとしての尊厳を取り戻したジャクソンが、物語のラストで記者人生をかけてある記事を執筆するシーンは必見だ。

 

④重厚な雰囲気を作る役者たち

実在の事件を描いたこの映画は、演技力の優れた俳優陣によってシリアスで説得力のある物語に仕上がっている。

主人公のラッセル・プールを演じたのはジョニー・デップ。チャーリーとチョコレート工場やパイレーツオブカリビアンなど、強烈なキャラクターを演じている印象が強いジョニー・デップだが、実在の人物を演じた本作でも、観る人の目を奪うカリスマ性が発揮されている。

相方のジャック・ジャクソンを演じたのがフォレスト・ウィティカー。映画『メッセージ』や『ブラックパンサー』で、脇役ながら印象に残る演技を魅せていた実力派俳優だ。あまり起伏のないストーリー展開ながら、物語にのめり込めるのは、彼とジョニー・デップの掛け合いのおもしろさが一役買っている。

さらに劇中で登場するビギーの母親は、バレッタ・ウォレス氏本人。事件から20年以上経った今も、最愛の息子を失った悲しみは癒えることはない。映画の中で彼女が見せる悲哀に満ちた表情や佇まいから、残された人々の中でも、今も事件が続いていることを痛感させられる。

その他にも、暗殺事件の鍵を握るロス警察のD・マックを演じたシャミール・アンダーソンや、ラッセルの元相棒を演じたトビー・ハスなど、強烈な個性を持つ俳優たちが出ているからチェックしてみてね。

⑤映画をより楽しめる関連作品が満載

『L.A.コールドケース』をより楽しむために、そもそもなぜ東西抗争が起こったのか? ふたりが暗殺された事件とはどんなものだったのか? といった背景を知ることができる、おすすめの映画を紹介しよう。

まずは2パックとビギーのそれぞれの伝記映画。2パックは『オール・アイズ・オン・ミー』で、ビギーは『ノトーリアス・B.I.G』で描かれており、東西抗争の背景や二人の関係、それぞれの人柄を知ることができるよ。さらに事件を深掘りしたければ、この映画と同じくラッセル・プールが事件を追う姿を描いたドラマ『Unsolved: 未解決ファイルを開いて』でより詳しく描かれている。興味がでた人はぜひディグってみてね。

ヒップホップシーンを揺るがした迷宮入り事件に、ひとつの答えを突きつけてくれる『L.A.コールドケース』。GWのお共に、関連作品と一緒に楽しんでみて!

画像出典元:キノフィルムズ
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