大阪で芸人キャリアをスタート、どん底生活の中で力をくれたのはILL-BOSSTINOのリリック

貧乏生活の中で貫き通した「一歩も引けない道楽」

ライター:TARO

ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアについてインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月は先日行われたラヴィット!『耳心地いい-1グランプリ』で優勝、アメリカズ・ゴット・タレントでも注目を集めたお笑いコンビ、ゆんぼだんぷのカシューナッツさんです。ヒップホップ好きとしても知られ、ストリートではタイムスリップB-BOYゴウとして大人気のカシューナッツさん。ヒップホップ・キャリアについて全4回に渡りお伺いしました。

前回までの記事はこちら→ 今大注目のお笑いコンビ、ゆんぼだんぷ・カシューナッツのヒップホップ・キャリアとは?

憧れの芸人へ。待ち受けていたのはどん底生活。

レペゼン:
今回は芸人として駆け出しの頃について教えてください。

カシューナッツ:
高校卒業後、岡山から大阪に出て、松竹芸能の養成所に入りました。最初はとにかくネタ見せの日々でしたね。
週に一度ネタを作ってきてって言われて、それを構成作家とか、社員さんの前で見せるんですよ。同じ養成所の芸人たちも周りで見てるんですけど、当然ライバルやし、みんなギラついているんで何やっても誰も笑わない

レペゼン:
きついですね…。

カシューナッツ:
そこでまず心が折れるんですよね。
あとは社員さんのダメ出しを聞くんですけど、もうクソミソに言われて。それでプライドが完全にへし折られますね。

レペゼン:
なるほど…。
それに耐えると、舞台などに出れるんですか?

カシューナッツ:
まぁそうですね。僕は結構時間がかかって、初舞台まで1年ぐらいかかりました。
ただ舞台が決まっても最初はノルマがあって、出るために1万円ぐらい払うんですよ。だからいつまでたってもお金は入ってこない笑

レペゼン:
きついですね…
現在のコンビである「ゆんぼだんぷ」は養成所で結成されたんですか?

カシューナッツ:
コンビ結成は結構後で。僕はずっとピンでやってて、今の相方の藤原は別のコンビでやってたんです。
ただ僕はピンで何やってもウケなくて、どうしようかなって思ってた時にたまたま藤原がコンビ解散して。

レペゼン:
すごいタイミング!

カシューナッツ:
その時に先輩の芸人さんと僕と藤原の3人で、大阪のミナミに飲みに行くことがあったんです。そしたらキャッチに呼ばれて、ノリで入ったガールズバーで1人1杯ずつ飲んで8万くらい取られるということがありまして。

レペゼン:
絵に書いたようなボッタクリですね。

カシューナッツ:
もうエグッ!てなって。なんとか3人で払ったんですけど、めちゃくちゃ悔しくて。
それ以来相方と2人でよく喋るようになって、ちょっと2人でやろうかみたいになった感じですね。

レペゼン:
良いエピソードですね!
松竹でその時代をともにした同期の芸人さんはいらっしゃいますか?

「さらば青春の光」との思い出

カシューナッツ:
同期ではないんですけど、ちょっと後輩に「さらば青春の光」がいて。彼らには刺激を受けましたね。最初から面白さがケタ違いだったんで。

レペゼン:
そうなんですね!
さらばさんとは遊んだりしてたんですか?

カシューナッツ:
東ブクロとはよくコンパとかしてましたね。僕、大阪出た時まだ童貞やったんですが、あいつはもうすでにすごかったです。

レペゼン:
そうなんですね笑

カシューナッツ:
僕の初体験の話があるんですけど、僕がある時ちょっと良い感じになった地方の女の子がいて。
その子が自分ちに遊びに来ることになって、初体験したんです。
結局僕はその子と会ってから、デートして、初体験するまで8時間かかったんですが、次の日僕が丸一日バイトで東ブクロにその子の相手をお願いしたら、5分でホテルに行ってました。

レペゼン:

カシューナッツ:
もはや憧れですね。ほんとに東ブクロはすごかったんで。でもほんま良いやつなんですよ。女の子の話も隠さずに話してくれるし笑

レペゼン:
なるほど笑
大阪時代は賞レースとか出てたんですか?

カシューナッツ:
出てましたけどもう全然で。ありとあらゆる賞レースに出て、全て予選で落ちてました。
漫才やったり、コントやったり、いろんなことやってたんですが、全然ダメで。
でも幸いなことにいろんな先輩が楽屋で「お前ら面白いな」って言ってくれてたんで、辞めずに続けることができましたね。

レペゼン:
そういった時に元気をもらったり、励まされたラップソングはありますか?

心の支えはILL-BOSSTINOのリリック

カシューナッツ:
THA BLUE HERBのBOSSさん(ILL-BOSSTINO)とDJ 刃頭さんがコラボした「野良犬」ですね。お笑い始めた当初から、今も勝負どころでは必ず聴いてます。

レペゼン:
間違いないです。
好きなリリックはありますか?

カシューナッツ:
全部やばいですけど、特に座右の銘にしてるのは
「雨なのにそんな曇った顔をするな」っていう部分です。

レペゼン:
パンチラインですね。

カシューナッツ:
ほんまに若手芸人を取り巻く環境って鬱々としたもんで。まだ吉本やったら、売れてる先輩との交流があったと思うんすけど、僕ら松竹やったんで、先輩で売れてる人もおらず。みんな楽屋で良いバイトの話しかしてないんすよ。

レペゼン:
悶々としますね…

カシューナッツ:
お笑いで飯を食うなんて夢のまた夢みたいな感じで。鬱々とした環境でやっぱ辞める人も多いんです。
でもこのBOSSさんの「雨なのに曇った顔するな」っていうのは、過酷で良くない環境だけど、むしろそういう時こそ胸を張れみたいな意味かなと思って。
このリリックにはずっと支えてもらってますね。

レペゼン:
素敵です。

カシューナッツ:
あともう1箇所、すごく好きなリリックがあって。
BOSSさんが自分のラップのことを「一歩も引けない道楽」っていう表現をするんですよ。

レペゼン:
熱すぎます。

カシューナッツ:
「ごらん一歩も引けない道楽が刃頭のトラックの上を前へ前へともがく」の部分がもう。
BOSSさんはラップですけど、僕はお笑いで、あくまで道楽で、好きでやってることなんですけど、やっぱり一歩も引けないんですよ。こんな鋭い、短い言葉で表現するのがかっこよくて。すごいやられましたね。

芸人としてなかなか売れない日々の中でも腐らずに芸を磨いていたカシューナッツさん。そんなカシューナッツさんにたち「ゆんぼだんぷ」にある日、転機が訪れる。次回は世界を席巻する「音芸」誕生の瞬間、そしてゴット・タレントのお話などを聞いていくよ!お楽しにみ!

プロフィール

  • ゆんぼだんぷ・カシューナッツ

    ゆんぼだんぷ・カシューナッツ

    お笑い芸人。岡山県出身。2008年にお笑いコンビ、ゆんぼだんぷを結成。相方は藤原大輔。中学時代は相撲部で活動し、全国大会への出場経験を持つ。大阪で芸人としてのキャリアをスタートし、後に東京へ上京。ふくよかな身体を使って様々な音を奏でる「音芸」で、フジテレビ「とんねるずのみなさまのおかげでした~細かすぎて伝わらないモノマネ選手権~」の第21回大会にて優勝。世界的なオーディション番組「Got Talent」に出演するなど、海外での活動も多く、マレーシア、アメリカ、ルーマニア等でのパフォーマンス経験を持つ。TBSの「ラヴィット!」で行われた「耳心地いい-1グランプリ」でも優勝するなど今最も注目の芸人の一人。また2000年代テイストの古着の紹介などを行う「タイムスリップB-BOYゴウ」としても活躍中。2000年代に青春を過ごした30〜40代の大人ヘッズを中心に熱い支持を受けている。

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