茶導師・梅原宗直「茶席で流したいラップソング」|あの人も実はヒップホップ

日本文化とヒップホップをつなぐマインドとは?

ライター:TARO

ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人にインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月は和歌山県・高野山を拠点に活動する茶導師・梅原宗直(うめはら・そうちょく)さんに4回に渡ってお話を伺います。第4回目は『茶席で流したいラップソング』今後の活動について話して頂きました。

前回までの記事はこちら → 「お茶でチルする時のラップソング」「自分を救ってくれたラップソング」「初めて触れたラップソング」

茶席で流したいヒップホップ

レペゼン:
今回は茶席で流したいヒップホップを教えてください。

梅原宗直:
例えばお茶っていうのもエンターテイメントで、そもそもお茶会もパーティーみたいなものですよね。
その流れでいくと一番合うのはピットブルとか、EDMでガンガンやるっていうのはおもしろいと思うし、実際僕もやったことあります。

レペゼン:
おもしろいですね!

梅原宗直:
ただ僕はお茶を通して、歴史や伝統文化もちゃんと伝えたいってところもあるんですよね。
そういう観点から考えると、今回おすすめしたいのはDJ KEN KANEKO『JAPAN feat.般若,MARIA(SIMI LAB),紅桜 & pukkey』ですね。

レペゼン:
良い曲ですよね。
実際にこの曲を茶席でかけたことはあるんですか?

梅原宗直:
ありますね。
ほんのり聴こえるようにかけます。
今の時代って大事なことを忘れてると思うんで、そういうのを思い起こせるような感じの曲としてオススメですね。

レペゼン:
確かに。

梅原宗直:
やっぱ日本人のラップって多分こういうことやと思うんですよね。
あとTHA BLUE HERBの「REQUIEM」っていう曲もかけたりしますね。
そっちの方が結構内容が重いんですけど。

レペゼン:
「REQUIEM」では第二次世界対戦時に特攻隊として戦死された方々や、南方戦線に出征された方々のことを歌ってますよね。

梅原宗直:
そうなんです。
どれだけ先人の方々が苦労してきたのか理解してもらうのにすごく意味のある曲だと思ってます。

レペゼン:
おっしゃる通りですね。

梅原宗直:
僕自身、自衛隊関連のお仕事もやってるんですよ。
靖国神社に献茶しに行ったりとかですね。
戦時中の話で言うと、実は兵隊の方は戦地に行く時は茶道の道具を持って行ってたんですよ。

レペゼン:
そうなんですね!

梅原宗直:
皆さん、抹茶と抹茶椀と茶筅を持って戦地に行ってたんですよ、
そういった道具は靖国神社の遊就館という場所に、ちゃんと証拠として置いてあるんです。
なぜそれを持って行ってたかっていうと、やっぱり生きるか死ぬかっていう場面で、冷静になるためにまずお茶を点てて、それを一服飲んでから、自然な気持ちでその場所に向かうということがすごく大事やったみたいなんです。

レペゼン:
なるほど。
だからこそ戦争について歌っている歌を日本文化を学ぶお茶の席でかけると。

梅原宗直:
そうです。茶道は金持ちのお姉さま方のステータスの1つじゃなくて、もっとドス黒いもんなんですよ。
それをちゃんと受け入れないと、本物を提供できないですよね。

レペゼン:
確かに。

梅原宗直:
あとサビでBOSSさんが「色は匂えど 散りぬるを」ってラップしてるのですが、この「いろは歌」っていうのは弘法大師空海が作ったとされてます。そこも日本文化がしっかり入ってるんですよね。

レペゼン:
確かにこの

色は匂えど 散りぬるを
貴方がたの苦難を忘れずに生き抜くよ

のライミングはこの曲の中でも特に印象深い場所です。

梅原宗直:
本来はコロナ禍で海外に出れない期間に、そういう部分を知っておかないといけなかったと思うんです。そういうための時間だったんじゃないかなとは思ってます。

ヒップホップ好きもお茶を楽しもう!

レペゼン:
茶席でヒップホップを流すとかって茶道界からすると、どんな感じなんですか?

梅原宗直:
結構文句は言われます笑

レペゼン:
やっぱ言われるんですか。

梅原宗直:
「あなたは本物のお茶の先生ではありません」とか匿名で言われたりしますね笑
でも俺打たれ強いんで、アンチ全然大歓迎なんですけど笑
じゃあ本物って何なんですかって僕も聞きたいんです。

レペゼン:
確かに。

梅原宗直:
そもそも本物とされる千利休の時代を生きてないので。
本物を語るんだったらそれを教えてもらいたいなっていうのがあって。それは誰も知らないわけで。

レペゼン:
その当時を生きてないから、わからないですもんね。

梅原宗直:
でも一番大事なのは、あんまり変化をさせすぎずに、ちゃんとした知識だけ伝えてあげるみたいな感じなんですよ。抹茶っていうのはこんなふうにして点てるんだよとか、お茶ってこんだけ種類があるんだよっていうのを伝えれたらそれでいいかなっていう。

レペゼン:
本質の部分というか。

梅原宗直:
そう。
僕みたいな奴がおるから、タトゥーだらけのやつも茶席に来れるわけで。

レペゼン:
なるほど。間口が広がるわけですもんね。

梅原宗直:
タトゥーだらけで、茶道やってみたいってやつって実はめちゃくちゃおるんすよ。そういう芽を見た目だけで判断して摘むのは、おかしいんじゃないのっていうのが僕の判断ですね。

レペゼン:
絶対そうですよね。だって千利休の時代に茶道やってた秀吉、信長とかもだいぶアウトローですもんね。

梅原宗直:
あの人らはもう無茶苦茶ですよ。
だから綺麗にしたいとか、良い格好したいっていうのもわかるんやけど、茶道ってそんな良い格好ができるもんじゃないよっていうのを教えたいですね。

海外での茶道体験

レペゼン:
今後の活動を教えてください。

梅原宗直:
最近は海外の活動が増えてますね。
去年入ってきた話でいうと、お釈迦様の誕生である4月8日に、タイで行われるお釈迦様へのお茶の献上式を担当しませんかって言われてたりします。

レペゼン:
えー!すごい!
海外の方達はあまり色眼鏡で見てないってことですよね。

梅原宗直:
全然気にしないですね。海外では見た目よりも、ちゃんとやってきたことを見てくれるんで。

レペゼン:
良いですね!

梅原宗直:
あと今年は空海が生まれて1250年記念なので、高野山では4月から6月までいろんなイベントやってます。
ぜひ高野山にも遊びに来てもらったらと思います。

レペゼン:
ぜひ遊びに行きたいです!
この度はありがとうございました!

梅原宗直:
ありがとうございました!

プロフィール

  • 梅原宗直(うめはら・そうちょく)

    梅原宗直(うめはら・そうちょく)

    茶導師。世界遺産である高野山を拠点に国内外で活動している。 大学卒業後、横浜でレゲエDJとして活動した後、茶道の道へ。2009年には武家点前流派最⾼位免状「皆伝」を取得。その後は全国各地で茶席を担当する。 2018年には高野山真⾔宗総本⼭⾦剛峯寺の奥殿にて、 ⾼野⼭参与会員限定での茶席 を⼀個⼈にて初担当。奥ノ院にて⽇々執り⾏われる「⽣⾝供(しょうじんぐ)」の抹茶を 奉納・給仕監修する。 現在は高野山にてカフェ「和真庵 」を営む傍ら、海外にも活動の幅を広げており、タイやシンガポールなど東南アジアでの茶席体験も行っている。

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