ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアや仕事について全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月のゲストは神奈川県金沢区で和菓子屋「たんの和菓子店」を開かれている丹野 耕太さん、丹野 ひかりさんご夫妻にヒップホップキャリアをお伺いしました。第3回は和菓子の見せ方への徹底的なこだわり、そして和菓子作りとヒップホップの意外な共通点についてお伺いしました。
前回の記事はこちら→ DJから屏風作りへ。異色の職人、片岡 孝斗とは?
若者世代を呼び込む和菓子の“ 魅せ方 ”
レペゼン:
横浜市金沢区のお店の引き継ぎから始まり、現在の場所に移転して「たんの和菓子店」をオープンした丹野さんですが、お店を始めるにあたって特に力を入れたことはありましたか?
丹野 ひかり:
和菓子屋さんのイメージを変えたいっていう気持ちがありましたね。皆さんが持つ和菓子屋のイメージって、高齢のご夫婦がやっていて、ちょっと薄暗い、昔ながらのお店みたいなものだと思うんです。
レペゼン:
確かに。
丹野 ひかり:
和菓子離れって言われている中で、普段和菓子に馴染みがない年齢層の方にどうやって来てもらうのかは、一番苦労した点ですね。それでどうすればいいかって考えたら、それこそ店内でヒップホップをかけたりとか、お店の袋をかわいくしたりとか、和菓子に興味のない世代をいかに引き込むかをすごく考えました。食べてくれたら美味しいって言ってもらえる自信はあったんで。
丹野 耕太:
間口広くして、ガラス貼りで外からも見えるようにとかね。
和菓子屋っぽくあえてしないで、バランスを取ってます。
レペゼン:
やっぱり敷居が高いイメージがありますもんね。
丹野 ひかり:
茶道をやってないと食べちゃいけないっていう固定概念があるんですよね。
それをなくすためにコーヒーとか紅茶と一緒におすすめしています。
丹野 耕太:
フランスのアンティークのお皿に和菓子を盛り付けるとかもね。
レペゼン:
確かにそういった取り組みがあると、若い方も興味を持ちやすいですよね。
丹野 ひかり:
ただ実際に置いているお菓子は、生クリームを使った和洋が混じったようなお菓子ではなくて、オーソドックスなお菓子しか販売してないんですよ。おはぎ、桜餅、あと大福とか。なのでやっぱり魅せ方が大事なのかなと思いますね。
そういったことを続けていたら、やっぱり若い方が多くなってきました。本当にありがたいです。
丹野 耕太:
最近はおじいちゃん、おばあちゃんもくるし、30~40代もくるし、若い子だと中高生が学校帰りに来てくれます。
レペゼン:
めちゃくちゃ良いことですね!
開店当初に勇気をもらったラップソングはケンドリック・ラマー
レペゼン:
開店当初に励まされたヒップホップソングはありますか?
丹野 耕太:
何曲かあるんですが、一つあげるとすれば、Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)の「King Kunta」ですかね。僕も奥さんも両方、ノリノリになっちゃうビートが好きなんです。
関わっている人たちも結構好きで。Thundercat (サンダーキャット)とか、George Clinton(ジョージ・クリントン)とか。
この曲は開業当時によく聴いて、励まされた感じですね。
Kendrick Lamar「King Kunta」
レペゼン:
良いですね。
丹野 耕太:
あと、Common(コモン)が好きで。
『Like Water for Chocolate』に入ってる「The Light」も綺麗な曲で、好きですね。
レペゼン:
名曲ですよね。僕も大好きです。
丹野 耕太:
取材ってなって、自分でも当時好きだった楽曲について改めて調べたんですが、ヒップホップの音作りって結構和菓子にも通じるところがあるなと思って。
レペゼン:
なんでしょうか?
古いお菓子に自分の感性を掛け合わせて、新しいものを生み出す
丹野 耕太:
やっぱりサンプリングですよね。古い曲に別の魅力をつけてアップデートするっていう。
それって和菓子にも繋がるんです。僕らも古いお菓子に自分の感性を掛け合わせて、新しいものを生み出しているので。それが若い子に受け入れられているのは、ヒップホップと通じるところだなって思いますね。
レペゼン:
確かにそこはすごくリンクしますよね。
丹野 ひかり:
和菓子を作る時に使う木型が良い例ですよね。
江戸時代からいろんな人が同じ木型を使ってきているんですが、私たちが作るとまたそれまでとは違うお菓子になったりするんですよ。
レペゼン:
James Brown (ジェームス・ブラウン)の、ドラムロールをどういう風に色付けしていくかみたいなことですよね。
丹野 耕太:
そうです笑
あと共通点で言えば、東と西の和菓子ってちょっと違うんです。
レペゼン:
東西抗争ですか!?
丹野 耕太:
抗争はないんですが笑
同じ桜餅でも東はクレープ状の生地で「長命寺」と言うのに対して、西は道明寺粉と呼ばれる餅米を粗く砕いたものを使用していて「道明寺」と言うんですよ。
レペゼン:
なるほど。地域によってスタイルが違うんですね。
ヒップホップマップみたいに和菓子マップ作りたいです。
丹野 耕太:
笑
次回は新店舗を構えるまでのお話、そしてお店を立ち上げる時に励まされたラップソングについて聞いていくよ!お楽しみに!
プロフィール
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丹野 耕太・ひかり
横浜市金沢区で和菓子店「たんの和菓子店」を営む。夫・耕太さんは高校卒業後、横須賀の和菓子屋で約10年間修行、その後工場長を務めた後に独立。ひかりさんと共に金沢区の老舗和菓子店の店舗を引き継ぐ形で開業する。その後、現在の場所に移転し「たんの和菓子店」をオープン。モダンなグレートーンの壁やカウンター、そして温かみのある木製のインテリアやアンティークといった従来の和菓子店のイメージを一新する内観に加えて、ショーケースに並ぶ色とりどりの季節の上生菓子と、耕太さんが選ぶジャジーなヒップホップサウンドが訪れるお客さんの五感を楽しませる。