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ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアや仕事について全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月のゲストは鹿児島県・奄美大島で黒糖焼酎の製造を行う老舗酒蔵、西平酒造の四代目、西平せれなさん。シンガー、トラックメイカー、そしてDJとしても活動する西平さんのキャリアについてお伺いしました。
前回の記事はこちら→ DJ、ヨーロッパ放浪、そしてパン屋へ。異色のキャリアを持つパン職人、蔭山充洋とは?
シンガーで酒造。奄美大島で黒糖焼酎を作る西平せれなとは?
レペゼン:
自己紹介をお願いします。
西平せれな:
鹿児島県の奄美大島で黒糖焼酎を作っている西平酒造の四代目、西平せれなです。
シンガー、トラックメイカーとしても活動していて、ポップスやテクノ、民族音楽などをミックスした音楽を作っています。
レペゼン:
ありがとうございます。インタビューさせて頂くのを楽しみにしてました。
まずは四代目を務められている西平酒造について教えてください。
西平せれな:
鹿児島県の奄美大島にある酒造で、今年で創業97年です。2027年に100周年ですね。
元々、私のひいおばあちゃんとひいおじいちゃんが沖縄で泡盛の会社をやっていて、会社が奄美に移って今に至ります。初代の杜氏(とうじ)がひいおばあちゃんですね。そこから数えて私で四代目になります。
*杜氏・・・酒蔵における酒造りの最高責任者
【創業当時の西平酒造】
レペゼン:
あくまで一般的なイメージですが、日本酒の世界って男性社会で、割と女人禁制のイメージがあります。そんな中で、ひいおばあ様は約100年前にすでに杜氏という形で酒作りに参加されていたんですね。
西平せれな:
そうなんですよ。沖縄や奄美では昔から女性が酒造りに携わってるんです。
一説によると、お酒造りって結構夜中の作業とかも多いんですが、男の人はすぐ酔っ払って寝ちゃうので自然と女性が働くようになったとも言われてます笑
レペゼン:
なるほど笑
西平酒造のおすすめのお酒はありますか?
奄美の伝統と西洋のミクスチャー焼酎「加那 -KANA-」
西平せれな:
おすすめは「加那 -KANA-」ですね。「加那」は奄美の言葉で「愛しい人」という意味です。 黒糖焼酎では珍しい、樫樽で寝かせて作った焼酎でして。樫樽の色が移った琥珀色の色味も綺麗ですし、木の風味と黒糖の甘みが組み合わさってすごく味わい深い、まろやかな味のお酒になってますね。
【加那 -KANA-】
加那の詳細はこちらから→ 西平酒造オンラインショップ
レペゼン:
飲んでみたいです!樫樽で寝かせるのは珍しいということですが、通常はあまりないんですか?
ワインとかウイスキーはそういうイメージがあります。
西平せれな:
元々日本にある伝統的な製法では、樫樽はあまり使わないですね。比較的珍しいものかと思います。あと私たちが作ってるのは黒糖焼酎なので原料が黒砂糖なんですが、ちょっとラム酒にも近い部分もあって。西洋的な樫樽で熟成させる製法との相性がすごく良いんですね。
レペゼン:
面白いです。
日本と西洋のミクスチャーってことですね。
西平せれな:
そうですね笑
レゲエでまろやかに。音楽聴かせる独自のお酒醸造法
レペゼン:
お酒に音楽を聴かせているとお伺いしたんですが。
西平せれな:
はい。ソニックエージングという手法で、先程の「加那 -KANA-」に使ってる製法です。スピーカーから音楽を流すときに感じる振動ってあるじゃないですか?その振動で樽の中の原酒が揺れて、その揺れ具合で樽に触れる面積が変わったりするんです。それがお酒の色味や味に影響するという考え方ですね。
レペゼン:
すごい…!
実際にどんな音楽を聴かせているんですか?
西平せれな:
私たちの酒造では、樽ごとにロック、レゲエ、ヒップホップ、奄美民謡みたいに分けて、それぞれの樽にいろんなジャンルの音楽を聴かせてます。
それで色のつき方とか風味のつき方が変わるんじゃないか?っていう実験ですね。
レペゼン:
おもしろすぎる…!
実際違いは出てるんですか?
西平せれな:
プロジェクトを始めて4か月なんですが、すでに違いを感じてます。
レペゼン:
どう違うんですか?
西平せれな:
ヒップホップやレゲエはお酒に樽の色がより濃く移っていて、風味的にもまろやかになっていました。逆にベース音がない、緩やかな音楽の奄美民謡の島唄は色の変化があまりなく、口に入れた時にちょっとピリっとするような感じがありました。私がテイスティングしたところ、レゲエが一番まろやかでしたね。
レペゼン:
レゲエなんだ!興味深すぎます!
西平せれな:
レゲエの樽の酒は、口に入れた瞬間に凄いとろっていう感じで、風味がすぐにフワって伝わってきくるんです。恐らくベース音の強さが関係してるのかなと。ヒップホップやレゲエはベース音が強いので、より強くお酒に振動が伝わって、お酒が樽の表面と多めに触れていると思うんです。それが樽の風味をお酒に移すことつながってる気がします。
レペゼン:
興味深いです。
西平せれな:
ただ樽の風味がよく出てるからおいしいとも限らないんで。どっちがおいしくなるとかじゃなくて、そういう違いを楽しめればいいかなと思っています。
レペゼン:
楽しみ過ぎますね。
それって何年ぐらいで結果が見られるんですか?
西平せれな:
今のところ、3年計画でやってるんですよ。
最終的には体制を整えて、毎年ちゃんと出荷できるようにはしたいなと思ってますね。
ヒップホップ酒樽のプレイリストを入手
レペゼン:
ちなみにヒップホップ酒樽は、どういう曲を聴かせているんですか?
西平せれな:
実はヒップホップに関してはオーストラリア出身のスタッフ、ジョンさんが担当していて。
レペゼン:
笑
西平せれな:
今日は彼からプレイリストの一部をゲットしてきました。
1. Intro
2. Eddy Senay – Down Home
3. A Tribe Called Quest – Find A Way
4. Paz – Laying Eggs
5. Rex Brown Company & Wersi Electric String Orchestra – Hot Track
6. Organized Konfusion – Fudge Funk
7. Jeru The Damaja – Intro (Life)
8. Jeru The Damaja – Perverted Monks In Tha House (Skit)
9. Group Home – Intro
10. Beatnuts Skit
11. Blendcrafters – Melody
12. DJ Nu-Mark feat. Chali 2na – Chali 2na Comin’ Thru
13. Vitamin D – No Good
14. Prophetix – True Urban Grit (T.U.G)
15. Viktor Vaughn – Saliva
レペゼン:
Jeru The Damaja も入ってる!
熱いプレイリストですねー!
西平せれな:
ジョンさん的には、A Tribe Called Quest(ア・トライブ・コールド・クエスト)やDJ Nu-Mark(DJ ヌマーク) あたりがお気に入りでよくかけるとのことです。特にA Tribe Called Questの「Find A Way」が好きみたいです笑
【A Tribe Called Quest – Find A Way 】
レペゼン:
良いですねー。ちなみにレゲェは何をかけてるんですか?
西平せれな:
レゲエはBob Marley(ボブ・マーリー)の「Legend」ってアルバムを丸ごとかけてますね。
【 Bob Marley – Legend】
レペゼン:
ということはトライブよりもボブ・マーリーの方が味がまろやかになるってことですよね。すごいな。きっとボブ・マーリーのLOVE AND PEACEなバイブスが焼酎と合うんでしょうね。
西平せれな:
そうかもしれないです笑
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