ストリートカルチャーと日本文化の融合で可能性を切り開く屏風職人・片岡孝斗

ヒップホップ好き屏風職人が語る奥深き屏風の世界

ライター:TARO

ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアや仕事について全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月のゲストは東京・墨田区にある片岡屏風店の三代目、片岡 孝斗(かたおか こうと)さん。ヒップホップが好きでDJもされているという片岡さんのヒップホップキャリアについてお伺いしました。

前回の記事はこちら→ シンガー酒造、西平せれなのミュージック・キャリアとは?

唯一無二の屏風を作るヒップホップ好き屏風職人・片岡孝斗とは?

レペゼン:
自己紹介をお願いします。

片岡孝斗:
東京都墨田区にある片岡屏風店の三代目、屏風職人の片岡 孝斗と申します。
1988年生まれ、今年36歳です。ブラックミュージックやヒップホップがずっと好きで、時々DJもやってます。

レペゼン:
ありがとうございます。
ヒップホップ好きな屏風職人さんということでインタビューさせて頂くのを楽しみにしておりました。まずは、三代目を務められている片岡屏風店について教えてください。

片岡孝斗:
元々私の祖父が戦後すぐ1946年に創業した会社です。場所はスカイツリーの真下で、かれこれ創業70、80年ぐらい。都内唯一の屏風店で、ずっと屏風を作っています。

【片岡屏風店制作の屏風】

レペゼン:
お客さんはどういった方が多いのでしょうか?

片岡 孝斗:
基本的には人形店さんです。お節句用のひな飾りの時に、おひな様の後ろに飾る小さいサイズの屏風を納めています。あとは個人の方々です。例えば、着物とか帯とか思い出の品物を屏風に仕立て直す、リメイクする仕事をやっています。「これ、おばあちゃんが着てたのよ」という感じで、リメイクにいらっしゃる方が多いですね。
あと企業さんの事務所に飾る用のインテリアでも制作しています。

レペゼン:
実際、屏風業界の状況っていかがでしょうか?

片岡 孝斗:
うちの祖父が創業した時期は、おひなさまとか5月人形、お節句と言われているものの屏風飾りの需要があって。当時は本当に作れば売れた時代らしく、たくさん職人を抱えていてもずっとやってたんですけど、いかんせん少子化とか、文化離れのあおりも受けまして、最近はかなり少なくなってきています。

レペゼン:
そもそもおひなさまを置けるような大きめの和室や日本風の建物自体少なくなってきてますしね..。

片岡 孝斗:
そうなんです。現在は従来のやり方を継続していくのはなかなか難しい。
なので最近は日本の文化を海外に発信したり、新しい屏風の形を作ることを意識しています。
具体的には、海外の方やストリートで活躍してるアーティストとコラボした屏風制作などですね。私がずっと好きだったヒップホップの感覚を取り入れつつ、新しいことにチャレンジしていきたいなと考えています。

【ペインター、デザイナーのSOLID BLACKLINE氏と共同制作した屏風】

国宝に屏風が多いのはなぜ?知られざる屏風の世界

レペゼン:
そもそも屏風というのはいつぐらいから日本にあるものでしょうか?

片岡孝斗:
諸説ありますが、約1300年前くらいに中国から日本に入ってきた文化と言われてます。当時はいわゆる国交上でのギフトだったようですね。そこから次第に高貴な方が自分の権威を見せるためにインテリアとして使うようになったとされています。

レペゼン:
素人考えで、申し訳ないのですが、屏風の印象ってアニメの「一休さん」の印象があって。お殿様の後ろに屏風が飾ってあって、そこに虎の絵が描いてあるみたいな。

片岡孝斗:
おっしゃる通りです。特に屏風の文化が盛り上がったのが、「一休さん」の時代の少し後の戦国時代、安土桃山時代で。

レペゼン:
織田信長とかの時代ですね。

片岡孝斗:
そうなんです。当時は屏風がキャンバスだったんですよ。
和紙を張り合わせて、そこに金箔を貼って絵を描くという。それがいわゆる狩野派などの豪華絢爛な屏風です。そこから一気に大きなムーヴメントになったっていう。

レペゼン:
美術館などでも戦国時代や安土桃山時代の豪華な屏風が展示されているのを見たことがあります。

片岡 孝斗:
そうですね。実は屏風ってかなり保存性が高く、そのおかげで結構昔のものが綺麗に残っているんです。例えば襖(ふすま)に描かれる「襖絵」というものもあるのですが、やっぱり日光で絵が弱ってしまったりとか、外的な要因で絵が劣化したりすることが多いんです。ただ、屏風って畳むことができるので、画面が守られてる。なので今、国宝として美術館、博物館で展示されている絵は屏風に描かれてるものが多いんですよ。

屏風を作る時に聴くヒップホップ

レペゼン:
屏風作りの時は音楽を聴きますか?

片岡 孝斗:
スタッフが帰った後、一人で作業する時によく聴きますね。その時は個人の方から受注頂いたものを作ってることが多くて。自分が好きなテイストのもの、ちょっと変わったものを作ってたり、自分の色が出てるものを作る時に聴いてます。

レペゼン:
良いですね。どういった感じの曲を聴きますか?

片岡 孝斗:
90年代のヒップホップが好きなので、よく聴きます。何をよく聴いてるかなと思って、プレイリストで一番聴いている曲を見たら「Souls Of Mischief – 93 ‘Til Infinity」でしたね。

【Souls Of Mischief – 93 ‘Til Infinity】

レペゼン:
名曲ですね。チルなバイブスが好きです。

片岡 孝斗:
ああいう感じが好きですね。なのでSmif-N-Wessun「Wrekonize」とかも良いですよね。

【Smif-N-Wessun – Wrekonize】

レペゼン:
ちょっとこうトラック的にレイドバックして、緩い感じが好きなんですか?

片岡 孝斗:
そうですね。作業BGM的にも聴きやすいので。
屏風作る時はやっぱり作業に集中したいので、あんまりリリック云々よりはサラッと聴ける感じが良いですね。バチバチのトラップとか聴くと、なかなか集中できないので笑

前回までの記事はこちら → 焼酎にヒップホップとレゲエを聴かせる異色の酒造、西平せれなとは?

プロフィール

  • 片岡 孝斗(かたおか こうと)

    片岡 孝斗(かたおか こうと)

    屏風職人。1946年創業の東京唯一の屏風店、片岡屏風店の三代目。大学卒業後、アメリカ留学、新潟の協力工場での勤務など経て、職人の道へ。現在は老舗屏風店の三代目として、伝統的な屏風制作に取り組む一方、ヒップホップ文化から受けたバイブスを胸に、ストリートカルチャーのアーティストや海外のアーティストとコラボした新しい形の屏風のクリエイションを行っている。また落語家とラッパーを中心に、様々なジャンルの人々が芸や作品で表現することを目的としたグループ「音詞噺 -otoshibanashi-」のメンバーとしても活動するなど、多方面で活躍の幅を広げている。

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