世界の“BYOUBU”へ。屏風職人・片岡 孝斗が見据える新たな日本文化の地平線

ウータン・クランに勇気をもらい屏風業界の未来を切り開く

ライター:TARO

ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアや仕事について全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月のゲストは東京・墨田区にある片岡屏風店の三代目、片岡 孝斗(かたおか こうと)さん。ヒップホップが好きでDJもされているという片岡さんのヒップホップキャリアについてお伺いしました。

前回の記事はこちら→ DJから屏風作りへ。異色の職人、片岡 孝斗とは?

世界の“BYOUBU”へ。海外アーティストとのコラボレーション

レペゼン:
今回は第4回ということで、最近の片岡さんの活動について教えて頂きたいです。海外のアーティストとコラボした屏風なども制作されているとお伺いしたのですが。

片岡 孝斗:
ありがたいことに、そういった依頼も増えてきてまして。先日はスウェーデンのアーティスト Karl Patric Näsman(カール・パトリック・ナーズマン)さんとコラボしました。
彼は屏風の文化や歴史にも興味があったみたいで、直接メールで「今度日本に行くので、屏風について聞きたい」という話をもらって。

レペゼン:
素晴らしいですね。

片岡 孝斗:
結局2週間くらい日本にいたんですけど、その間に仲良くなって、一緒にお酒飲んだり、ご飯食べたりするようになったんです。それで「なんかコラボしたいね」ということを社交辞令で言ったら、マジでその彼と屏風を使ったアートプロジェクトをスウェーデンでやることになって。現地のアーティストグループとコラボ屏風を制作して、展示するというプロジェクトで、スウェーデンに来てくれと。

レペゼン:
すごい!!向こうで屏風を作ったんですか?

片岡 孝斗:
こっちで6割方作って送って、その後、現地の5人のアーティストと仕上げをする感じでしたね。事前にどんな作品を作るかっていう話はしてたんですが、締切まで1週間しかなくて。なかなか大変でした笑
なんとか間に合わせましたけど笑

【展示会の様子】 

レペゼン:
さすがです。
現地の反応はどうだったんですか?

片岡 孝斗:
すごく良くて、大盛況でした。

レペゼン:
素晴らしい。
下世話な話ですが、そういうのってお金は発生するんですか?

片岡 孝斗:
スウェーデンの行政から助成金が出てましたね。僕の交通費や制作費もそこから出てたみたいで。結構、北欧はアートのそういうのが多いんですよ。コロナ禍で日本にはアート支援がないっていうのが顕著に出たように、やっぱりヨーロッパ、特に北欧ってアートに対して行政からのバックアップがすごい強い。なのでこの屏風の企画も意外とパーンって通ったみたいで。

レペゼン:
日本の行政も変わっていくと良いですね。

老舗屏風店の三代目がヒップホップから学ぶ“破壊と再生”

レペゼン:
ヒップホップ好きであり、DJとして活動する片岡さんですが、仕事としては伝統的な屏風作りと、海外のアーティストとのコラボや、ヒップホップ・ストリートカルチャーとコラボする屏風作り、どちらが多いんですか?

片岡 孝斗:
もちろん伝統的なものが多いんですが、ヒップホップ的なものは僕が多くしていってます笑
自分のパーソナルな部分を仕事とミックスするっていう方が、面白いと思うんですよ。
だからガンガン個人でも営業に行きますし。

【ペインター・SOLID BLACKLINE氏とのコラボ屏風】

 
レペゼン:

良いですね!
DJとしても活動されていますが、ヒップホップから学べるもの、屏風作りに活かせることはありますか?

片岡 孝斗:
カルチャーというところにおいて言えば、屏風ってずっと止まってるんですよね。江戸時代がマスターピースとされてて、そこから止まっちゃってる。対してヒップホップは、これまでブーンバップ1本だったところが、今ではいろんなジャンルが出てきて、かなり可能性が広がってる。

レペゼン:
確かに。ヒップホップは様々なジャンルの音楽の要素を吸収して、急速に進化してますよね。

片岡 孝斗:
やっぱり破壊と再生だと思うんです。私も屏風業界でそれをしたいんですよね。屏風を進化させたい。そういう気持ちがありますね。

ウータン・クランで切り開く屏風シーンの地平線

レペゼン:
そんな中で、未来を切り開きたい時に勇気をもらえるヒップホップはありますか?

片岡 孝斗:
でも、やっぱBack to the Basicなところでいくと、Wu-Tang Clan(ウータン・クラン)なんですよね。
もう最近ずっとウータン・クラン聞いてて。

レペゼン:
良いですね。

片岡 孝斗:
一回 原点回帰して、そこから何か開いていくってところで言えば、ファーストに戻るって意味で、『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』の「Protect Ya Neck」とかですかね。

【Wu-Tang Clan – Protect Ya Neck 】

レペゼン:
なんと言っても邦題「燃えよウータン」ですからね。

片岡 孝斗:
そうですね笑
MVもテメーで撮ってますからね。そのハンドメイド感も含めてカッコいいです。

レペゼン:
熱いです。
実際、片岡さんが特に屏風業界の中で変化させたい部分ってどんなところでしょう?

片岡 孝斗:
そもそもなんですが、屏風って聞くと皆さん、一休さんじゃないけども、「絵を描くの?」って言われるんですよ。
実際は、屏風自体を作る人間がいて、それに絵を描いたりとか、デザインする人がいて成り立つのが屏風。でもやっぱり、絵師である尾形光琳が描いた屏風は、尾形光琳が作ったものってなっちゃうんですよね。

レペゼン:
確かに。尾形光琳が描いた屏風自体を誰が作ったのかは知らないですもんね。

片岡 孝斗:
そう。恐らくそういうのを言わない美学もあったんでしょうけど、その結果が今のざまなんですよ。
要は職業として屏風屋が存在するってことをまず世の中の人が知らない。だから僕はやっぱり、屏風屋っていう仕事があることが、アートや伝統文化を作り上げるために欠かせない存在なんだってことを伝えていきたいですね。

レペゼン:
応援しております。
改めてこの度はありがとうございました!

片岡 孝斗:
ありがとうございました!

 

前回までの記事はこちら → ストリートカルチャーと日本文化の融合で可能性を切り開く屏風職人・片岡孝斗

プロフィール

  • 片岡 孝斗(かたおか こうと)

    片岡 孝斗(かたおか こうと)

    屏風職人。1946年創業の東京唯一の屏風店、片岡屏風店の三代目。大学卒業後、アメリカ留学、新潟の協力工場での勤務など経て、職人の道へ。現在は老舗屏風店の三代目として、伝統的な屏風制作に取り組む一方、ヒップホップ文化から受けたバイブスを胸に、ストリートカルチャーのアーティストとコラボした新しい形の屏風のクリエイションや海外アーティストとアートとしての屏風の共同制作など行っている。また落語家とラッパーを中心に、様々なジャンルの人々が芸や作品で表現することを目的としたグループ「音詞噺 -otoshibanashi-」のメンバーとしても活動するなど、多方面で活躍の幅を広げている。

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