ヒップホップヘッズから屏風職人へ。片岡 孝斗の職人ライフとは?

狐火も所属する落語家、ラッパー、屏風職人の異業種クルー「音詞噺 -otoshibanashi-」の活動も紹介!

ライター:TARO

ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアや仕事について全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月のゲストは東京・墨田区にある片岡屏風店の三代目、片岡 孝斗(かたおか こうと)さん。ヒップホップが好きでDJもされているという片岡さんのヒップホップキャリアについてお伺いしました。

前回の記事はこちら→ DJから屏風作りへ。異色の職人、片岡 孝斗とは?

ヒップホップヘッズ、屏風職人になる

レペゼン:
大学卒業後、アメリカ留学を経て、屏風職人としてのキャリアに進まれた片岡さんですが、修行などはされたんですか?

片岡 孝斗:
屏風職人において、修行ってのはあんまりなくて。基本的な技法を守りながら、現場で学ぶという感覚ですね。
「これをやるまでが1人前」みたいな概念は多分ないのかなと僕は思ってます。もちろん表具屋さん(屏風や掛け軸などを作るお店)によっても違うと思うのですが。

レペゼン:
そうなんですね!
片岡さんもすぐに現場に入られたのですか?

片岡 孝斗:
僕は父の希望で、まず新潟にある協力工場でしばらく出向のような形で働きました。屏風って実はかなり作業工程が細分化されてて。紙を貼り付けるために使う木枠(きわく)などは専門の工場で作り、そこに僕たち屏風職人が紙を貼って、絵師の方が絵を描くという流れなんです。父としては職人として働く前に一度他の現場を見ておく必要があると考えたんでしょうね。

【新潟の工場にて】


レペゼン:
新潟での生活はどうだったんですか?

片岡 孝斗:
スノボーが好きだったんで、結構楽しんでましたね笑
ただその後、東京に帰ってきてから、本格的に屏風職人の仕事を始めると、やはり自分の技術不足で上手くいかないことも多くありました。

レペゼン:
先輩の職人さんや、二代目のお父様から怒られたりとか?

片岡 孝斗:
そうですね。三代目ということで周りも気を遣ってくれたりした部分もあったのですが、やっぱり失敗も多かったので、怒られることはありましたね。例えば金具を打つ工程で、打ち損じちゃって屏風の木枠を凹ませちゃったりとか。その度に先輩の職人さんにリカバリーの仕方とかを教えてもらいつつ、やってましたね。

レペゼン:
そうなんですね。
そんな職人としてのキャリア初期に励まされた曲とかはありますか?

擦り切れるまで聴いたアレステッド・ディベロップメント

片岡 孝斗:
僕、Arrested Development(アレステッド・ディベロップメント)がすごく好きなんです。
アルバムの『Among the Trees』に入ってる「Honeymoon Day」とか。あとリーダーのSpeech(スピーチ)が超好きで。当時はスピーチのアルバムを死ぬほど聴いてた記憶がありますね。特に新潟にいた当時は、川と山の場所だったので。彼らの音楽がむちゃくちゃマッチしたのは今でも強烈に覚えてます。

【Arrested Development – Honeymoon Day】

レペゼン:
先日のビルボードライブでの日本公演も盛り上がりましたよね。
アレステッド・ディベロップメントは音として癒されるみたいな感じですかね?

片岡 孝斗:
そうですね。特にスピーチのソロのアルバムはラップというよりは、歌ものに近かったんで、そういう意味でもかなりグっと入ってきました。特に「Redemption Song」っていうボブマーリーの曲のスピーチverが最高に格好良いですね。多分トップソングに入るかな。

【Speech – Redemption Song】


片岡 孝斗:
あとは「Like Marvin Gaye Said (What’s Going On)」とか。擦り切れるまで聴いてましたね。

【Like Marvin Gaye Said (What’s Going On)】

 

落語家、ラッパー、屏風職人の異業種クルー「音詞噺 -otoshibanashi-」とは!?

レペゼン:
そんなヒップホップ、そして伝統文化を愛する片岡さん、「音詞噺(おとしばなし)」というグループで活動されているとお伺いしたのですが、一体どんなグループなんですか?

片岡 孝斗;
落語家とラッパーなど、いろんなジャンルの職業の人が集まって、芸や作品で新たな表現を作り出していこうというグループですね。メンバーには落語家の桂笹丸(かつら ささまる)さん、ラッパーの狐火(きつねび)さんなどが所属してます。

音詞噺のTwitterはこちら

【片岡さんが制作した音詞噺の屏風】

レペゼン:
めちゃくちゃおもしろそうなグループですね。どういったきっかけで結成されたのですか?

片岡 孝斗;
実は僕、落語会を開いていて。うちの職人で元々歌舞伎役者をやってた人間がいるんですが、彼が落語をやっていて、彼と一緒に会社で寄席を開いているんです。地域寄席なので、20人とかそこら集まればラッキーぐらいの小さい寄席なのですが。15回くらい続けてます。

レペゼン:
良いですねー。

片岡 孝斗:
で、僕は落語という文化に結構のめり込んでしまってですね。そんな時に落語家の桂笹丸さんがラッパーの狐火さんと二人で公演をするということを聞いて。僕は狐火さんの大ファンなんです。めちゃくちゃ聴いてて。それで「狐火さんと二人で公演をする桂笹丸さんってどんな人だろう?」と思って、とりあえず桂笹丸さんの公演に行ったんですね。

レペゼン:
なるほど。

片岡 孝斗:
その時の公演のテーマが自分の好きなことを紹介するということだったんですが、聞いていると、なんと桂笹丸さんはヒップホップがすごい好きだと。

レペゼン:
おぉ!!アツいです!!

片岡 孝斗:
「ヒップホップ好きな落語家なんているのか!」と思いましたね。
そこで思い切って話しかけたんです。「屏風店の片岡と申します。僕もヒップホップ好きで、狐火さんのファンなんです」と挨拶させて頂いて。で、狐火さんとの公演にも行ったりしていくうちに、なんだかんだ狐火さんとも仲良くなって、みんなで飲みに行くようにもなったんです。

レペゼン:
めっちゃ良いですね!

片岡 孝斗:
で、桂笹丸さんから、「異業種のグループを作りたい」という提案があって、それで「音詞噺」というグループが結成されたんです。僕は「音詞噺」の屏風を作ったりとか、全体会をやる時はDJやったりしてますね。楽しくやってます。

 

前回までの記事はこちら → ストリートカルチャーと日本文化の融合で可能性を切り開く屏風職人・片岡孝斗

プロフィール

  • 片岡 孝斗(かたおか こうと)

    片岡 孝斗(かたおか こうと)

    屏風職人。1946年創業の東京唯一の屏風店、片岡屏風店の三代目。大学卒業後、アメリカ留学、新潟の協力工場での勤務など経て、職人の道へ。現在は老舗屏風店の三代目として、伝統的な屏風制作に取り組む一方、ヒップホップ文化から受けたバイブスを胸に、ストリートカルチャーのアーティストとコラボした新しい形の屏風のクリエイションや海外アーティストとアートとしての屏風の共同制作など行っている。また落語家とラッパーを中心に、様々なジャンルの人々が芸や作品で表現することを目的としたグループ「音詞噺 -otoshibanashi-」のメンバーとしても活動するなど、多方面で活躍の幅を広げている。

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