ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のお気に入りの曲を毎月紹介していく「あの人の勝負曲」。
今月は「キングオブコント2022」ファイナリストであり、芸人フリースタイルラップ部に所属するなどヒップホップ好きとしても知られるお笑い芸人のいぬ・太田さん(写真右)をゲストにお迎えし、キングオブコントの裏話や、「出番前に聴くラップ」「ネタ作りの時に聞くラップ」など4回に渡ってインタビューしていきます。
第3回目の今回は「ネタ作りの時に聴くラップソング」ついて、そしてキングオブコントの舞台裏について話して頂きました。
「ネタ作り前にテンションをあげてくれるラップソング」
レペゼン:
ネタ作り中にもヒップホップを聴くんですか?
太田:
ネタ作り前に、テンションをあげるために聴きますね。
学生の頃、物語がめっちゃ速いスピード流れてくる「速聴」っていうのをして、頭の回転を速くしてからテスト勉強とかしてて。それと同じ要領でネタ作り前にヒップホップを聴いてますね。
レペゼン:
なるほど。例えばどんな曲聴きます?
太田:
テンションがあがる曲だとCreepy Nutsと菅田将暉さんの「サントラ」を聴いてます。
Creepy Nuts × 菅田将暉 「サントラ」
レペゼン:
へえ!好きなリリックとかありますか?
太田:
歌の中でいろんな職業について話をしてるんですけど、「芸人とはなにか」みたいな部分も入ってて。
悩み事 隠し事 私事だらけを書く仕事
悩み事 隠し事 のみこんで笑顔でやる仕事
っていう。
R指定さんが思うラッパー像と僕らがやってる芸人像にリンクする部分があって。原点を思い出すというか。何かを生み出す時の入り口になってくれる曲ですね。
レペゼン:
確かにR指定さんのラップはテンポも速いですし、脳が活性化しそうですね。
聴いてる曲からインスパイアされて、ネタのセリフに使うことってありますか?
太田:
セリフに使うことはないですけど、フリースタイルを題材にしたネタみたいなのは作りました。
レペゼン:
シチュエーションをネタにしたってことですね。
太田:
そうっすね。
「フリースタイルバトル」っていうネタでラッパーと空手家がバトルするんですけど、ラッパーが空手をめっちゃディスった後、普通にボコボコにされるっていう笑
いぬ「フリースタイルバトル〜最強モンスター〜」
レペゼン:
発想がマジで面白いですね。
ネタ作りの時は相方の有馬さんと話し合うんですか?
太田:
大体相方が設定を持ってきて、そこからふたりで揉んでいきますね。僕もたまに出すんですけど、大体相方が多いです。
レペゼン:
ネタ作りに詰まった時のルーティンとかありますか?
太田:
体を動かすのが好きなので、ネタに詰まった時は散歩に行ったりします。
やっぱりファミレスとか家に閉じこもって根詰めてやっちゃうと、何も浮かばなかったりするんで。ちょっと外の景色を見に行ったり、空気を吸いに行ったりしますね。
キングオブコントの舞台裏
レペゼン:
キングオブコントのキスのネタはどうやってできたんですか?
太田:
あれは相方が韓国ドラマ「愛の不時着」にハマってた時期があって。ああいうラブストーリーを作りたいってずっと言ってて。
で、僕らの中で腕立て伏せの動きがおもしろいって話になった時に、これをラブストーリーに繋げられないかって発想して作っていきました。
いぬ「夢の中で」
レペゼン:
すごい。その発想の転換がヒップホップですね。
太田:
普段から賛否両論あるネタをやってたんですけど、今年はやりたい事は変えずに伝え方を変えようと思って、僕らなりにラブストーリーというとっつきやすいネタにしたつもりだったんです。
でも気持ち悪いとかめちゃくちゃ言われました。僕らなりの純愛の表現だったんですけど。
レペゼン:
いや、本当に最高でしたよ!
でも審査員によって点数差が結構あったじゃないですか。あの時はどういう心境でしたか?
太田:
ネタが終わった瞬間は、トップ3には入っているだろうなっていう感覚があったんです。最初の山内さんが91点で「あっ思ったより低い。まあまあでも…」ぐらいで。その次の秋山さんは高かったけど、小峠さん、飯塚さんは思ったより低くて。「こんなに分かれるか!?」と思ってたら松本さんには95点つけてもらって。
レペゼン:
ドキドキですね。
太田:「あれ?どっち?もしかしたら…」と思ってたら、その時に3位だったコンビの点数に1点足りなくて即敗退になって。
もう点数が出るたびに激しく気持ちが上がり下がりして、ジェットコースターみたいでした。
レペゼン:
審査コメントで松本さんには褒められてましたけど、飯塚さんには「禁じ手だ」って言われてたじゃないですか。あの時はどんな気持ちだったんですか?
太田:
あの時は敗退するって思ってなかったんで「やべえやべえ」って焦ってて。
実は、もし負けたときは服を脱ごうと思ってたんです笑
レペゼン:
そうだったんですか!
太田:
上半身裸になって、ムキムキの体を見せてやろうと笑
でもネタ終わった瞬間に「これはイケた」と思ったから、そのことをすっかり忘れてて。で、負けたときに「あ、やべ脱がないと」って急に思い出して脱ごうと思ったら、ピンマイクがガッチガチに留まってて全然取れなくて。
レペゼン:
笑
太田:
ずっとモゾモゾしながら喋ってました笑 もういろんな感情がぐちゃぐちゃでしたね。
レペゼン:
じゃああんまりコメントは聞けてない感じですか?
太田:
全く聞いてなかったっすね笑
勝つと思ってたら負けたし、服脱がないとと思ったら脱げないしで、「もう終わっちゃう終わっちゃう」って焦ってました笑
レペゼン:
そんな裏話が笑
いやあ、漢、FORK、いとうせいこうあたりがもし審査員だったら、間違いなく優勝でしたけどね。
太田:
そうかもしれないですね。
で、Lilyさんあたりにハマらないみたいな笑
レペゼン:
まさに笑
実際、次からネタの方向性を変えてみようって思ったりしないんですか?
太田:
めちゃくちゃ迷ってますね。
ああいうネタじゃ結局勝てないってなると、マイルドにしなくちゃいけないのかなと思いつつ…。でもそれができない自分たちの不器用さもあって。
だからこれまでああいうスタイルを貫くしかなかったのもあるんですけど。
レペゼン:
マヂカルラブリーの野田さんは、自分たちのスタイルを貫いてM-1で優勝しましたもんね。
太田:
そういうのかっこいいっすよね。
レペゼン:
太田さんの中のヒップホップがまだ消えきれないですね。
太田:
それしかできない不器用さでいうと、すごいヒップホップかもですね。
レペゼン:
かっこいいです!
ヒップホップ好きお笑い芸人/いぬ・太田さんがネタ作りの時に聴いていたラップソングはCreepy Nutsと菅田将暉さんの「サントラ」!次回はスベった時に聴く一曲について聞いていきます!お楽しみに!