ヒップホップ好き酒蔵 / 元坂 新平が初めて触れたラップソング|あの人も実はヒップホップ Vol.15

日本酒とヒップホップに共通するクリエイティヴの方向性

ライター:TARO

ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のお気に入りの曲を毎月紹介していく「あの人の勝負曲」。今月は、元坂酒造株式会社|酒屋 八兵衛 の専務取締役・元坂新平(げんさか・しんぺい)さんをゲストにお迎えし、酒蔵としてのお話や、日本酒に合うヒップホップ曲などについて聞いていきます。第3回目の今回は元坂さんが思う酒造りとヒップホップの共通点、そして「初めて触れたラップソング」について話して頂きました。

「伝統に敬意を払いながら、新しいもの作りをする。そこは酒造りとヒップホップがリンクする部分だと思う。」

Photo by  カワナアキ

レペゼン:
日本酒業界でヒップホップにリンクするところとかあります?

元坂新平:
やっぱりクリエイティヴの方向性が似ていますね。
ヒップホップって昔のファンクとかソウルをサンプリングして、新しいトラックを作るじゃないですか。それと同じで日本酒業界でもこれまでの伝統を継承しながらも新しいクリエイティヴに挑戦する若い人が増えてきてます。

レペゼン:
なるほど。伝統がしっかりあるから、新しいことにもチャレンジしやすいと?

元坂新平:
そう。僕の感覚からすると何もやられてないから、逆に何でもできる。
ただ、自分のひらめきをミックスして新しいものを作る人がいる一方、逆にどんどん原点に帰っていく人がいたりもする。そこもヒップホップの曲作りと近いですね。トラップ・ビートを作る人もいれば、ブーンバップに戻る人もいるというか。

レペゼン:
確かに。すごく似てますね。

元坂新平:
全てのモノ作りに共通する部分でもあると思うんですが、伝統に敬意を払いながら、新しいものを作っていくという所はすごくヒップホップとリンクする部分だと思います。

元坂酒造での酒造りの様子



Photo by  カワナアキ

レペゼン:
やっぱり、ものづくりって共通する部分があるんですね。
ところで、実際日本酒ってアルコール全体でいうとどれくらい売れてるんですか?

元坂新平:
日本酒はマジで売れてないジャンルですよ。
アルコール飲料の全体シェアを100%としたときに、大体6%くらいです。

レペゼン:
そんなに少ないんですね…

元坂新平:
そうなんです。だからアンダーグラウンドシーンの鬱憤みたいなのがすごくたまってて。大手ビールメーカーに対するヘイトみたいなのがすごいです。

レペゼン:
大手ビールメーカーに対するヘイト笑

元坂新平:
細かい話ですけど、バラエティー番組のグルメ企画とかで飲食店の店内がカメラ映る時、日本酒の瓶って全部裏向けられているんですよ。

レペゼン:
えー!

元坂新平:
スポンサーにビールメーカーが入ったりしていると、日本酒は映さへんみたいなことやられますね。別にええやんみたいな。オレらは脅威にもなりませんやんと思いますけど。
オレもビールを飲んでるしね笑

レペゼン:
ビーフですね笑

元坂新平:
まぁ抑圧されてるわけじゃないですけど、ナニクソみたいな気持ちはありますよね。
悔しいから、もうとことん自分のモノ作りを突き詰めて世間に表明していこうみたいなマインドはあります。

レペゼン:
応援しております!

伊勢の「411」でくらった Dr.Dre

レペゼン:
初めてヒップホップに触れた曲を教えてください。

元坂新平:
Dr.Dreの「Nutting But A “G” Thang」ですね。

レペゼン:
クラシックですね。
どうやって「Nuthin’ But A “G” Thang 」を知ったんですか?

元坂新平:
中学生の時に三重県の伊勢って町によく遊びに行ってたんですが、そこに「411」っていうイケてるストリート系の服屋さんがあって。そこで「Nuthin’ But A “G” Thang」が流れていたんです。

レペゼン:
まず「411」っていう名前が懐かしすぎる笑

元坂新平:
ですよね笑
そのお店のブーンボックスから流れてくる「Nuthin’ But A “G” Thang」がクソかっこよくて。
お店の人に恐る恐る「これ何て曲ですか?」って聞いて、「ドクター・ドレーって言うんやで」って教えてもらいました。

レペゼン:
良いですねー!

元坂新平:
で、速攻地元帰ってCD屋行くけど、マジでドクターのDもなくて。三重から名古屋のタワーレコードまで買いに行きました。

レペゼン:
「Nuthin’ But A “G” Thang」のどの辺が好きだったんですか?

元坂新平:
あのシンセのリフとか、スヌープのラップのフロー、そして何よりこれがブラック・ミュージックなんだっていう黒さがマジでくらいましたね。

レペゼン:
間違いないですね。
酒蔵を継ぐ前はDJしてたということですが、そこからヒップホップにハマってDJになっていくんですか?

【DJ時代の元坂さん】

元坂新平:
そうですね。最初はSnoop Dogg、2Pac、Death Row、Eminem、Jay-Zあたりを聴いてて。
で、The Neptunesが出てきてファレルのビートってカッコいいなとかっていうくらいには、もう既にDJやってました。

レペゼン:
DJは東京で?

元坂新平:
いや、最初は地元の三重で、高1の時に始めました。お年玉でDJセット買って。
最初にDJをしたのは三重の松坂にある「ロック・アイ」ってクラブでしたね。

レペゼン:
あの時代の地方にある感じの名前ですね笑
曲はどうやって調べていたんですか?

元坂新平:
当時、マンハッタンレコードの通販で毎月届くカタログみたいなのがあったんですよ。
そこに乗ってる3行くらいの曲のレビューとかめちゃくちゃ読んで勉強してました笑
時々欲しいやつをチェックして、ファックスで注文したりもしてましたね。

レペゼン:
全てが懐かしすぎる笑
実際に東京に行ったりはしてたんですか?

元坂新平:
高1の時、家出して渋谷のハーレムに行きましたね。
ただ実はその時ロサンゼルスに行こうと思ってて。

レペゼン:
ロサンゼルス!?

元坂新平:
オレは空港行けば電車みたいにロスまでいけるって思ってたんです。
だから家出してそのまま名古屋の空港に行って、チェックインカウンターのお姉さんに「LAまで1枚」って言いました笑

レペゼン:
可愛すぎる少年ですね笑

元坂新平:
でお姉さんが「ここではチケットは買えないから、旅行代理店行ってきてね」ってちゃんと教えてくれて笑
結局調べたらLAに行くのに全然お金足りなくて…。
それで新幹線に乗って東京へ行きました。

レペゼン:
青春ですね笑

元坂新平:
そうですね笑
今となっては良い思い出です。

元坂さんが初めて触れたヒップホップはDr.Dreの「Nutting But A “G” Thang」!
次回10月25日アップ予定の第4 回では日本酒に合うラップ曲を聞いていきます!お楽しみに!

プロフィール

  • 元坂新平(げんさか・しんぺい)

    元坂新平(げんさか・しんぺい)

    三重県の酒蔵「元坂酒造」7代目。専務取締役。 高校卒業後に上京し、都内のクラブでDJとして活動した後、地元に戻り父である「元坂酒造」6代目・元坂 新 (げんさか・あらた)から酒造りを学ぶ。現在は三重県の土着品種「伊勢錦」と地元の宮川の水で作られた「“HOOD(地元)"を醸す酒」を作ることに力を入れており、昨年には「全ての産業は農に帰する」というテーマの元に作られた「新ブランド「KINO/帰農」をリリースした。

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