ヒップホップ好き酒蔵 / 元坂 新平が車で流すラップソング|あの人も実はヒップホップ Vol.14

弟とのわだかまりを解かしてくれた西海岸ヒップホップ

ライター:TARO

ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のお気に入りの曲を毎月紹介していく「あの人の勝負曲」。今月は、元坂酒造株式会社|酒屋 八兵衛 の専務取締役の元坂新平(げんさか・しんぺい)さんをゲストにお迎えし、酒蔵としてのお話や、日本酒に合うヒップホップ曲などについて聞いていきます。第2回目の今回は元坂酒造の新作日本酒 “ KINO ”に込めた想いと「車で流すラップソング」について話して頂きました。

「徹底的に“HOOD(地元)” を醸す酒にこだわりたい」

Photo by  カワナアキ

レペゼン:
元坂酒造ではどんな日本酒を作ってるんですか?

元坂新平:
主力は父の代からやっているブランドの「酒屋八兵衛」ですね。
僕が蔵に帰る前から作っていて、もう40年以上たくさんの方に飲んで頂いているブランドです。

レペゼン:
多くの人に愛されているブランドなんですね。

元坂新平:
本当にありがたいことに。
ただ一方で、自分が酒造りをしていく中でどんどん考えていくことが変わったりとか、これまでと違う方法で、何か新しい価値観が作れないかなとか考えることもあって。それは従来の「八兵衛」っていうプラットホームではやりづらかったので、昨年新しいブランドを作ったんです。

レペゼン:
どんなブランドなんですか?

元坂新平:
「KINO」というブランドです。
農業に帰る、「帰農(きのう)」という意味から取りました。

【KINO】



レペゼン:
デザインもかっこいいですね!
農業にフォーカスしたブランドということですか?

元坂新平:
そうです。
僕の地元の三重県多気郡って農業が中心の場所なので、家の周りが田んぼばっかりなんですよ。
歩いていけるお金が使えるとこが神社か自販機くらいしかない。
そういう中で、僕らが地元に貢献できることは何かって考えたら、酒造りを通して地元の農業の価値、田んぼ1枚の価値を高めて行くことだなって思ったんです。

【地元・三重県多気郡の風景】

Photo by  カワナアキ

レペゼン:
素晴らしい。お米は地元の農家さんから仕入れているんですか?

元坂新平:
「KINO 」に使うお米は自分たちで作ってます。
徹底的に“HOOD(地元)” を醸す酒にこだわりたいと思いまして。

レペゼン:
地元の若い方で農業をされている方は結構いるんですか?

元坂新平:
正直少ないですね。いわゆる少子高齢化の状況です。
周りの家も高齢者の方だけになってきて、子供もいないし、若い息子たちは都市部に出て行っています。それで今、耕作放棄された田んぼがどんどんソーラーパネルの設置場所に変わっていってるんですよ。

レペゼン:
えー!
ということはどんどん田んぼがなくなっていってるんですか?

元坂新平:
そうなんです。
地元の風景が変わっていってて、やっぱりそこに寂しさや虚しさを感じるんですね。そういうところと戦いたいというか。
自分がやる仕事で自分が好きだった田舎の昔からの景色っていうのを守れたら良いなと思って、この「KINO」というブランドを立ち上げたんです。

レペゼン:
素晴らしい。ぜひ飲んでみたいです。

酒造りで弟と喧嘩、わだかまりを解かしてくれた西海岸ヒップホップ

【友達とノリで撮った“All Eyez On Me ” 風写真  “ All Rice On Me ” 】

レペゼン:
普段の移動は車ですか?

元坂新平:
そうですね、三重県は車ないと終わりなんで。

レペゼン:
運転してる時はどんな曲を聴きますか?

元坂新平:
ウェッサイすね。
車ってなんかウェッサイが合う気がしません?
ニューヨーク系の硬いビートは、どちらかというと電車で、ウェッサイは車に合うかなと。

レペゼン:
わかります。
若い時からウェッサイが好きだったんですか?

元坂新平:
最初はウェッサイ入りですね。
で、NasとかDJプレミアのトラックのカッコ良さでいきなりガーンてきて、一時そっちを深掘りしてました。20歳超えたぐらいにウエスタンのこのギャングスタのノリが若干合わなくなる時ありません?笑

レペゼン:
めっちゃわかります笑
ちょっと重いというか。
でも結局帰ってきちゃうんですよね笑

元坂新平:
そうそう笑
今はドライブする時はいつもウェッサイ流してますね。
仕事でストレスが溜まった時とかはゴリゴリのギャングスタ流してます笑

レペゼン:
わかるなー笑
その中でもよく聴く曲はありますか?

元坂新平:
Dubeeの「My Thang」っていう曲すね。

レペゼン:
渋いですねー。
何か「My Thang」に関する思い出はありますか?

元坂新平:
弟との喧嘩に関する思い出がありますね笑

レペゼン:
詳しく聴きたいです!

元坂新平:
今、弟は杜氏(とうじ)* としてお酒造りの方のリーダーをやっているんですが、元々は彼も地元から出ていたんです。で、彼が蔵に帰ってきた時にめっちゃ喧嘩になっちゃって。

*酒造りの最高責任者のこと

レペゼン:
酒造りに関してですか?

元坂新平:
そうですね。方向性は一緒なんですけれども、具体的にどう造るかで揉めるみたいな。
車の運転で例えると、酒造りをやるリーダーになる人って運転者なんですよ。

レペゼン:
なるほど。

元坂新平:
杜氏が運転席に座り、運転ハンドルを握るやつだとしたら、オレはその助手席に乗ってて、右行けとか、ここ左行けとか指示だけ出してた感じです。それで弟はブチギレて、「黙っとけ」みたいになって。
弟とはその後一年ぐらい凄くわだかまりがある状態があったんです。

レペゼン:
結構長いですね!
そのわだかまりはどうやって解消したんですか?

元坂新平:
一年くらい経った後、福岡の酒屋さんに呼ばれて二人で出張行ったんですけど、その後に二人でクラブに行くことになったんです。で、その時のDJがリクエストを受け付けてたんですよ。
それで弟に「リクエストしてこいよ」って言ったらDubeeの「My Thang」って紙に書いてて。
「こいつめっちゃわかってるな」と!

レペゼン:

元坂新平:
そこでわだかまりが解けたんすよ。
「お前、それ行くんだ」てなった時に「こいつと一生仕事できるな」と思いました。

レペゼン:
めっちゃ良いエピソードですね!
弟さんもヒップホップが好きなんですか?

元坂新平:
好きですね!
オレがコンピレーションっぽく作ったMDを貸したりとかしてました!

レペゼン:
MDで自分のコンピ作るの懐かしすぎる笑
今は弟さんとは仲良いんですか?

元坂新平:
仲良いです。
リスペクトし合ってるし、お互いの領域を守ってますね。
俺は営業やブランディングをして、弟は、ちゃんと実務的に酒造りをしてるって感じです。

【弟さんとの一枚】

レペゼン:
その1曲で繋がったわけですね。
今車とかで流れたりとかした時にもテンション上がりますか?

元坂新平:
めっちゃくちゃ上がりますね。
例えば、自分のプレイリストをシャッフルして流してて、夕暮れ時に海辺を走ってる時とかに急に流れると「えっどっかから見てたん?」みたいになります笑

レペゼン:
良いですねー!笑
では元坂さんの「車で流すラップソング」はDubeeの「My Thang」ということで。

元坂新平:
レイドバックなトラックがすごく運転にハマる一曲です。

元坂さんが車で聴くヒップホップはDubee「My Thang」」!次回10月18日アップ予定の第3回では初めてヒップホップに触れた曲を聞いていきます!お楽しみに!

プロフィール

  • 元坂新平(げんさか・しんぺい)

    元坂新平(げんさか・しんぺい)

    三重県の酒蔵「元坂酒造」7代目。専務取締役。 高校卒業後に上京し、都内のクラブでDJとして活動した後、地元に戻り父である「元坂酒造」6代目・元坂 新 (げんさか・あらた)から酒造りを学ぶ。現在は三重県の土着品種「伊勢錦」と地元の宮川の水で作られた「“HOOD(地元)"を醸す酒」を作ることに力を入れており、昨年には「全ての産業は農に帰する」というテーマの元に作られた「新ブランド「KINO/帰農」をリリースした。

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