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WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.280の今回取り上げる英語は「trench(トレンチ)」。「貧困地域、犯罪が多発する地域」といった意味のスラングだ。もともと「trench」は「(戦争で使われる)塹壕」という意味の言葉。塹壕は戦争の最前線で戦う兵士達が敵からの攻撃を避けて行動するために、土を掘って作る空堀のことであり、当然戦闘中は地獄のような状況になる場所だ。そんな日々生きるか死ぬかわからない場所といった意味からスラングでは、“ghetto(ゲットー)”と同じような使われ方をしている単語だ。
今回もUSラップのアーティストたちのリリックから「trench」の意味を学んでみよう!
まず取り上げるのは、Lil Durk(リル・ダーク)「All My Life」!
Lil Durk「All My Life ft. J. Cole(2023)」
You can’t blame my past no more, I come from the trenches
Some said I’d never be a superstar,
but I know I’m differentお前にオレの過去は責めれないよ、オレはトレンチ出身
オレは絶対スーパースターになれないって言ってたやつもいた
でもオレは知ってた、自分が他の連中とは違うってことを
全米で最も危険とされる地域の一つ、シカゴ南部のイングルウッドで育ったリル・ダーク。父親は彼が幼い頃に逮捕、投獄され、一家は極貧の中で生きていくことになる。
貧困による薬物の乱用やギャングの抗争が常に周りで起きている環境で、リル・ダークはラッパーとして身を立てることを決意。キャリアの初期からMy SpaceやYouTubeを使ったプロモーションで、次第にシーンのプロップスを得て、今ではアメリカを代表するラッパーの一人にまで成り上がった。”トレンチ” 出身でも、夢を叶えられることを自らの力で証明したんだ。
続いては、Mustard(マスタード)と Migos(ミーゴス)の「Pure Water」!
Mustard & Migos「Pure Water(2019)」
I’m from the trench, I got the dirty money rinsed
オレはトレンチ出身、汚い金を洗浄したぜ
「Pure Water」からOffset(オフセット)のリリック。
アトランタのトレンチで育ったオフセットはミーゴスのメンバーとして世界を席巻。Trap Musicのムーヴメントを牽引する存在として、ラップシーンのトップに君臨してきた。
そんな彼らの音楽のスタイルの名前になっている言葉、”trap” は基本的には「罠」という意味だが、そこから派生して「治安の悪い地域」という意味や、「trap house(ドラッグの密売所)」という意味で使われてきた単語。Trap Musicはそういった犯罪多発地域で生まれた背景を持つ音楽だ。つまりオフセットたちは昔は犯罪としてのtrapで稼いでいたお金を、今では音楽としての trap music で稼いで、“rinse(洗浄)”してるってわけだね。
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.280のラストを飾るのはPolo G(ポロ・G)の「Martin & Gina」
Polo G「Martin & Gina(2020)」
We from the trenches, we moved onto the finer things
Now you done went from H&M to a designer fiendオレたちはトレンチ出身、今は手にしていく、高級品
君もH&M からデザイナーブランド中毒になっちまったぜ
シカゴのゲットー、Cabrini-Green Homesで極貧の家庭に生まれ、小さい頃からストリートでさまざまな困難を乗り越えてきたポロ・G。そんなタフな環境を生き抜いてきたポロ・GはYouTubeやサウンドクラウドで、楽曲のリリースを始め、2018年には「Finer Thing」で、2019年には「Pop Out」でスマッシュ・ヒットを記録。人気ラッパーの仲間入りを果たす。
その後、サードアルバム「Hall of Fame」でビルボード200で1位を獲得するなど、USを代表するトップラッパーとなったポロ・Gは、昔はH&Mばかり着ていたパートナーにデザイナーブランドを惜しげもなくプレゼントできるくらいになっているって感じだね。
【歌詞出典元】Genius
*訳は全て意訳です。