pain|ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン? Vol.250

ヒップホップの歌詞からストリートで使える英語を学ぼう

ライター:TARO

今回紹介するスラング

pain

痛み
紹介アーティスト
Cordae, Juice WRLD, Lyrical Lemonade, Eminem, Nas
pain|ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン? Vol.250
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WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.250の今回取り上げる英語は “pain(ペイン)”。「痛み」という意味で、特にラップのリリックには頻出の単語だ。ラップは自分の痛みを言葉にして吐き出すことで、新たな希望を作り出す表現手段。今回は有名ラッパーたちが彼らの “pain ”の歌ったリリックを見ていこう。

まず取り上げるのは気鋭の映像集団Lyrical Lemonade(リリカル・レモネード)とCordae(コーディ)、そして2019年に惜しくも亡くなってしまったJuice WRLD(ジュース・ワールド)のコラボ曲、「Doomsday」。

Lyrical Lemonade, Juice WRLD & Cordae「Doomsday(2023)」

I’m the type to come in the game and just launch pain

オレは試合に参加して、ただ痛みを発信してるタイプのやつさ

Eminem(エミネム)のキャリア初期の一曲「Role Model」のトラックを使ったダークな世界観の中で披露されるコーディとジュース・ワールドのテクニカルなマイクリレーがたまらない一曲。紹介するリリックは曲の冒頭、コーディのヴァースだ。
ラップ業界というゲーム(試合)に参加して彼がやっているのは、painをlaunch(ローンチ)すること。launchは「〜を立ち上げる、送り出す、ロケットやミサイルなどを打ち上げる、放つ」という意味の単語だ。

メリーランド州・プリンスジョージズ郡育ちのコーディは少年時代をキャリア初期のヒット曲「Broke As Fuck」で、“Grandma passed, had a heart attack, only 62. My cousin shot‚ got me paranoid, who to trust or not. Gave my brother 25 years, that really sucked a lot. Post-traumatic stress is building up​​(おばあちゃんは心臓発作で死んだ。たった62歳だった。いとこが撃たれ、オレはおかしくなった。誰が信用できて、できないのか。兄弟は25年くらった。マジで終わってた。PTSDレベルのストレスが重なる。)”
と振り返っており、かなり過酷な環境で育ってきたことが伺える。

コーディはそんな抱えてきた痛みをラップを通して解放することで自分の内面と向き合っているんだ。

続いて紹介するのは「Doomsday」の元ネタ、エミネムのキャリア初期の楽曲であり、往年のファンの中ではカルト的な人気を誇る一曲「Role Model」。

Eminem「Role Model(1999)」

Will someone please explain to my brain
That I just severed the main vein with a chainsaw and I’m in pain?

誰かオレの脳に説明してくれよ
チェーンソーで大静脈を切断したばかりなんだけど。これって痛いのかな?

自虐要素とグロテスクさ、そしてダークユーモアのエッセンスがアーティスティックに組み合わされた初期エミネムの世界観が最も凝縮されている一曲。
エミネムは小さい頃に母親に虐待され、また学校でも徹底的にいじめられた経験を持つラッパー。
あまりにも過酷な少年時代を過ごした彼は感覚が麻痺してしまっていて、“pain(痛み)”を感じることができなくなってしまっている。自分自身で“main vein(大静脈)”を切断しても、痛みを感じない。
だから周りの人に「これって痛いのかな?」って聞いてるってわけだね。そしてこんなハードなことを言いながら、しっかりテクニカルなライミングをしてくるのがエミネム。“explain(説明する)”、“brain(脳)”、“meain vain(大静脈)”、“pain(痛み)”という流れでライミングをたたみかけているんだ。

ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.250のラストを飾るのは、Nas(ナズ)の「N.Y. State of Mind」。

Nas「N.Y. State of Mind(1994)」

Musician, inflictin’ composition of pain

音楽家、痛みの作文を与えてる

音楽家であるナズがリスナーに聴かせるのはただの歌詞ではない。“composition of pain(痛みの作文)”だ。日本のラップシーンを牽引し続けるラッパー、ANARCHY(アナーキー)の著書のタイトルとしても知られるこの「痛みの作文」という言葉はまさにラップという芸術を象徴している。
差別、貧困、虐待、いじめ、周囲からの拒絶、絶望的な孤独。そんな様々な過酷な状況を生き抜いてきた人たちが作り上げてきたラップ・ミュージックという芸術は今世界を席巻するムーヴメントとなって、多くの人の心に希望を与えているんだ。

【歌詞出典元】Genius
*訳は全て意訳です。

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