番外編 2000年代名盤特集『Delrton 3030 – Delrton 3030』|ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン? Vol.164

ヒップホップの歌詞からストリートで使える英語を学ぼう

ライター:TARO

今回紹介するスラング

番外編

2000年代名盤特集『Delrton 3030 - Delrton 3030』
紹介アーティスト
Delrton 3030
番外編 2000年代名盤特集『Delrton 3030 – Delrton 3030』|ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン? Vol.164
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WHAT’S UP,  GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.164の今回は2000年代名盤特集。取り上げるのは2000年代オルタナティヴ・ヒップホップ屈指の名盤「Delrton 3030」。

Ice Cube(アイス・キューブ)のいとこでもあるラッパーのDel the Funky Homosapien(デル・ザ・ファンキー・ホモサピアン)とプロデューサーのDan the Automator(ダン・ジ・オートメーター)、そして DJのKid Koala(キッド・コアラ)が結成したプロジェクトである “ Deltron 3030 ”が2000年にリリースした「Delrton 3030」は、文明が崩壊し、コンピューターが世界を支配する西暦3030年を舞台に、世界を変えるために立ち上がったロボット戦士Deltron Zero(デルトロン・ゼロ)とビート職人The Automator(ジ・オートメーター)がラップを武器に戦っていくという設定の作品。デル・ザ・ファンキー・ホモサピアンのまるでSF小説を読んでいるかのようなストーリー展開、巧みなライミングとジ・オートメーターの不気味で奥行きのあるサウンドと組み合わさって作られたヒップホップ的アフロフューチャリズムの世界観に引き込まれてしまう一作だ。

そんな「Delrton 3030」からまずチェックするのは、アルバムと同名タイトルの「Delrton 3030」!

「Delrton 3030」

We cultivated a lost art of study and I brought a buddy オレ達は失われたアートの学問を耕し、相棒を連れてきた Automator, harder slayer, fascinating combinations オートメーター、ハードなスレイヤー、魅力的なコンビネーション Cyber warlords are aggravating abominations サイバーな軍事指導者は嫌悪感を募らせる。 Arm a nation with hatred? We ain’t with that 憎しみで国を武装?それには乗らねぇな。 We high-tech archaeologists searching for knick-knacks オレたちはハイテクな考古学者。細々とした装飾品を探してるのさ。 Composing musical stimpacks that impacts the soul 魂に衝撃を与える音楽のスティムパックを作って、 Crack the mold of what you think you rapping for 君が思うラップの型を砕く。 I used to be a mech soldier but I didn’t respect orders 以前はメカ・ソルジャーだったけど、命令を尊重できなかった。 I had to step forward, tell them this ain’t for us オレたち向きじゃないてあいつらに伝えて、前に進まなきゃいけなかったんだ。 Living in a post-apocalyptic world morbid and horrid 終末後の世界で、病的で不快な日々を過ごしてる。 The secrets of the past they hoarded あいつらがひた隠す過去の秘密。 Now we just boarded on a futuristic spacecraft 今オレたちは未来的な宇宙船に乗り込んだぜ。 No mistakes black it’s our music we must take back 間違いない、ブラック、これがオレたちのミュージック。絶対に取り戻すぜ。

文明が荒廃してしまった世界でデルトロン・ゼロは、“ a lost art of study(失われたアートの学問)” 、つまりヒップホップを探究する。そして彼が見つけ出したのは、ビート職人 “The Automator(ジ・オートメーター)”。二人の “ fascinating combinations(魅力的なコンビネーション)”に嫌悪感を募らせる支配者側のコンピューターをよそ目に、デルトロンとオートメーターの二人は、過去のヒップホップカルチャーの断片をまるで考古学者のように発掘し、魂に衝撃を与える音楽を作り出す。そして彼らは宇宙船に乗り込み、ブラック・ミュージックを取り戻すためにコンピューターとの対決に向かうてわけだ。

デルトロンとオートメーターの二人は、コンピューターを倒し、世界にブラック・ミュージックを取り戻すことができるのか?続いては、デルトロンたちとコンピューターとの戦いについて歌われている曲「Virus」をチェックしてみよう!

「Virus」

I wanna devise a virus ウイルスを考案したいぜ。 To bring dire straits to your environment お前のとこに危機をもたらすためのな。 Crush your corporations with a mild touch マイルドなタッチで、お前のコーポーレーションを潰す。 Trash your whole computer system and revert you to papyrus お前の全てのコンピューターシステムを壊して、パピルスに戻してやる。 I want to make a super virus スーパー・ウイルスを作りたいぜ。 Strong enough to cause blackouts in every single metropolis 全ての大都市で停電を引き起こすくらい強い。 Cause they don’t wanna unify us なぜならあいつらはオレたちを団結させたくないんだから。 So fuck—it total anarchy and can’t nobody stop us クソ野郎、マジで無政府状態さ、誰もオレたちを止められないのさ。

コンピューターウイルスを使って、敵のシステムをぶっ壊そうと考えるデルトロンとオートメーター。“ Trash your whole computer system and revert you to papyrus(お前の全てのコンピューターシステムを壊して、パピルスに戻してやる)” で歌われている「パピルス」とは、古代エジプトで使われていた紙の一種。人類の文明が始まった頃に作られた紙であることから、ここでは「初期状態」を意味する言葉として使われているて感じだね。つまり、デルトロンとオートメーターの二人はコンピューターシステムをぶっ壊して、工場出荷状態に戻してやるぜということを言っているわけだ。

「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.164は2000年代名盤特集、「Delrton 3030」のラストを飾るのは、敵のボスと戦うクライマックスを描いた「Battlesong」!

「Battlesong」

Land Ho, Sicilia we entered the port ランド・ホー、シシリア、オレたちは港に入ったぜ。 Fill out a few forms then we meet our challenger named Qusar いくつかのフォームを記入して、クエーサーという名のチャレンジャーに会う。 (No matter who you are I’ll handle ya) (お前が誰であれ、乗りこなしてやるよ) He’s a real charmer 彼はマジで魅力的なやつだぜ。 I threw on my plasteel armor オレはプラスチックの鎧を投げた。 He wants to absorb the talents that I worked so hard for あいつはオレがワーク・ハードした才能を吸収したがってる。 A biter hard core バイター、ハードコア。 I busted a few shots and opened him like a car door 数発をぶっ放して、やつを車のドアみたいに広げた。 He was a quadruped, four arms あいつは四本足で四本腕。 He hit me with four fore arms made of bronze ブロンズの前腕でオレを打ちつけた。 I said Automator play the song オレはオートメーターに「曲をかけな!」て言ったんだ。 (You got it) (わかったぜ!) Was the theme テーマソングさ。 Made a slight alteration in my scheme オレの計画に少し修正を加える。 Set him up with a cognition beam with his double team 2人のタッグでかます知識のビームで、あいつをぶっ倒す。 Leaned toward his dome piece and reamed the back of his neck やつの頭のピースに寄りかかって、首の後ろを絞る。 With a cranial disruption siphon 頭蓋骨分断吸い上げ器でな。 Squeezed out his brain like juice やつの脳みそをジュースみたいに絞り出した。 Like a python まるでパイソンさ。

デルトロンとオートメーターの敵のボスと戦うため、宇宙船でシシリアという 星に辿り着く。そこで戦う敵、クエーサーは四本足で四本腕の怪物。 かなりの強敵に最初は苦戦する二人だが、最後は2人で必殺の “ cognition beam(知識のビーム)” で敵を倒す。そしてまるで“python(ニシキヘビ)”が獲物を丸呑みするように、敵の脳みそを絞り出してやるて感じだね。そしてこのクライマックスの戦いのヴァースを通してテーマとなっているのは知識。

He wants to absorb the talents that I worked so hard for あいつはオレがワーク・ハードした才能を吸収したがってる。

の箇所ではデルトロンがワーク・ハードして手に入れたヒップホップの知識を敵のクエーサーが奪おうとしている。つまりヒップホップのシーンではタブーとされる “bite(バイト。相手のスタイルをパクること。)” をしようとしてるわけだね。そして結果として オートメーターと協力して放った知識のビームで敵を倒したデルトロンは、“ Squeezed out his brain like juice(やつの脳みそをジュースみたいに絞り出す)”。 “juice”はスラングで、「尊敬、力」といった意味を持つ単語。そして“ Like a python(まるでパイソンさ。)” で出てくるパイソンはニシキへビのことであり、ヘビは世界では、知恵や知識の象徴とされる生き物。つまりデルトロンは知識を武器に敵と戦い、尊敬と力を手に入れたてわけ。いやはや、細かいメタファーをストーリーに合わせて散りばめるテクニック、改めてラップ戦士、デルトロン・ゼロことデル・ザ・ファンキー・ホモサピアン半端ないぜ。

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