目 次
パーティーを通して人の心を強く揺さぶり続ける人たちがいる。彼らはなぜこの世界に飛び込んだのか?どんな出会いを経験してきたのか?何が彼らを突き動かすのか…!このコーナーでは、パーティーというカルチャーに関わる演出家たちのキャリアを紐解いていきます。
今回のゲストは、長野在住のDJ K-TRACK(ケートラック)さん。新旧・国内外問わずカバーする守備範囲の広さと、的確にフロアをアゲるスキルの高さで知られる敏腕DJとして知られています。一時期は東京のクラブシーンでも研鑽を重ねた彼は、長野に戻った後も地に足のついた活動を継続中。ローカルから大都会まで、さまざまなクラブの景色を見てきたDJの半生と美学に迫ります。
長野県内を転々と。
キャリア17年目のK-TRACK

レペゼン :
今日はよろしくお願いします。自己紹介からお願いします。
K-TRACK :
お願いします。DJ K-TRACKです。1990年生まれで、出身は新潟県で今は長野市在住です。個人でDJとしてやっているのと、ラッパーのRYO(*)と、UntyAbes(アンティーエイブス)としても活動しています。
※ … レペゼン松本のMC。アグレッシブな曲から生活感のある曲まで多彩に歌い分け、ライブでは県内随一のパフォーマンス力を誇る。
レペゼン :
新潟から長野に引っ越されたのは何がきっかけなんですか?
K-TRACK :
就職を機に引っ越してきました。仕事が転勤族なので、数年おきに住むところが変わるんですよね。2009年に新潟の高校を出て、就職で長野県松本市に引っ越したのが最初です。DJを始めたのもそこからです。
レペゼン :
え!DJを始めたのは社会人になってからだったんですか。K-TRACKさんとお会いしたのが2011年くらいだったんですが、その時には既に貫禄が漂っていたので、当時まだまだ若手だったとは驚きです。じゃあDJを始められた後も定期的に引越しがあったんですか?
K-TRACK :
はい。松本で4年くらい住んだ後、飯田市、長野市と移った後、次は東京に出て。そこから長野市に戻ってきて、諏訪に行って、今、また長野市ですね。
レペゼン :
かなりあちこちを転々としてきたんですね。
「俺、こっちかもしれない」
フロアを仕切る存在への憧れ

レペゼン :
ヒップホップとの出会いは何歳頃だったんですか?
K-TRACK :
高校の時ですね。地元は新潟県関川村というめちゃくちゃ田舎なところで、小学校の学年が5人とかだったんですよ笑
もちろんヒップホップやってる奴なんていなくて。高校で地元からちょっと遠いところに通うようになるんですけど、そこで出会った友達とか先輩がヒップホップ好きだったんです。それに影響を受けて自分もハマりました。
レペゼン :
高校生の時だったんですね。ヒップホップを初めて聴いた時の初期衝動みたいなものは覚えていますか?
K-TRACK :
NITROとかキングギドラとかを聴いたのが最初だったんですけど、それまで聴いてたJポップとは明らかに違いましたね。「良い曲」とかじゃなく「かっこいいのが正義」みたいな。そこからはとにかく「ヒップホップっぽいことをしたい」と思って、ブレイクダンス、スケボー、グラフィティ、ラップ……といろんなことをかじるようになりました。
レペゼン :
いろいろ挑戦していたんですね。その中でもDJの道に進んだきっかけはなんだったんですか?
K-TRACK :
新潟のラッパーのライブを見に行った時にDJっていう存在を初めて知って「かっこいい!俺、こっちかも」って思ったんです。ライブが終わった後もずっとお客さんを盛り上げているDJを見て、どこかフロアを仕切ってる感じがしたんです。そこから機材を買い揃えてレコードを買う生活が始まりました。
レペゼン :
そうやってDJを始めるためのベースができていくわけですね。
日本語&レコード縛り!?
尖りまくりの若手時代

レペゼン :
松本市に引っ越してからDJを始められたということですが、街のプレイヤーとはどう繋がっていったんですか?
K-TRACK :
「とりあえずヒップホップ系の店に行けば情報があるだろう」と思って行ってみたんです。そしたらやっぱりフライヤーが置いてあって。それを眺めてたら店員さんから話しかけられて「レコード買ったりしてるんですよ」みたいに話していたら、イベント関係者の人に繋げてもらえたんです。
レペゼン :
トントン拍子だ笑
DJを始めた時のことは覚えていますか?
K-TRACK :
はじめは尖っていたので、レコードで日本語ラップだけでDJしていたんです。でも先輩のDJに「クラブでDJするのにそれじゃダメでしょ」って注意されて。そこからUSの新譜のレコードも買い始めました。
レペゼン :
尖っていたとはいえ、先輩からのアドバイスはきちんと聞いていたんですね。
K-TRACK :
やっぱりお客さんはお金を払って来ているわけですからね。その先輩からは「ある程度のルールの中で個性を出すのが必要」ということを教わりました。
知らない番号からの着信に
「俺、何かしたかな……」

レペゼン :
自分がK-TRACKさんを知った時には、既にいろんな現場でプレイされていました。どうやって活動範囲を広げていったんですか?
K-TRACK :
RYOさんのバックDJを始めてから繋がっていった感じはありますね。
レペゼン :
そうだったんですか。RYOさんとはUntyAbes結成以前からずっと一緒に動かれていますよね。一緒にやるきっかけはなんだったんですか?
K-TRACK :
DJを始めて少し経ったくらいの頃、知らない番号から電話がかかってきて「RYOだけど」って言われたのが最初ですね。その時は「何かしたかな……」って心配になったんですけど、そこで「バックDJをやってほしい」と誘われたんです。そこからライブにくっついていったりして交友関係が広がっていきました。
レペゼン :
RYOさんからのご指名だったんですね!あえて初歩的な質問をしたいんですが、バックDJというのはどんな役割を担っているんですか?
K-TRACK :
UntyAbesとしてやる前は、自分は基本的には制作には口を出さなかったんですけど、この名前をつけてからは、プロデュース、トラックメイク、プロモーションなども全部やるようになりました。なのでマネージャー兼プロデューサーみたいなポジションですね。
レペゼン :
全体の統括を担っているんですね。K-TRACKさんの話を聞いていると、裏方的なポジションが好きな印象を受けます。
K-TRACK :
好きなのかな?でも勉強はめっちゃしましたね。例えばサブスクでの再生数を伸ばすにはどうすれば良いのかとか、新規のリスナーを獲得する仕組みはどうなってるんだろうとか、そういうのは自分がやっています。RYOさんはそういうの苦手ですからね笑
レペゼン :
フロントマンとしてのRYOさんとプロデューサーとしてのK-TRACKさん。めっちゃ良いバランスですね。
ダメ出しすらもありがたい!!
IBEX TOKYOでの修行時代

レペゼン :
東京に住んでいたのはいつ頃ですか?またその頃の活動についてもお聞かせください。
K-TRACK :
2017年の10月から丸2年くらい住んでいました。DJを始めた頃と一緒で、初めは全然ツテも何もない状態だったんですが、そこで声をかけてくれたのが、中目黒のSolfa(ソルファ)で働いていた長野出身の友達だったんです。その子経由で六本木のIBEX TOKYO(以下 : IBEX)(*)でレジデントを務めているDJ IVERさんと繋げてもらったんですよ。
※ … 耳が肥えた海外リスナーが多く集う老舗クラブ。ヒップホップやR&B、レゲエなど本場のブラックミュージックを軸としたDJプレイが楽しめる場として愛されている。
レペゼン :
まさに松本の時と同様、人づてに繋がったんですね。六本木は海外のお客さんが多いと思いますが、DJへの反応も違ったりするんですか?
K-TRACK :
六本木のクラブの中でもIBEXはまた違いますね。お客さんの8割くらいがブラックの人だから、ヒップホップもレゲエもアフロミュージックもできなきゃいけないし、その場にいる人が何を求めているかを察知することが求められました。
レペゼン :
なるほど。常に緊張感があるような状態ですか?
K-TRACK :
すごかったですよ。花形である土曜日に回させてもらうためにテスト的にオープンDJをさせてもらうことがあったんですけど、2曲くらいで交代させられることもありました笑
レペゼン :
厳しい!笑
毎回が真剣勝負ですね。
K-TRACK :
正直、東京に出る前の長野時代は限界を感じていたんです。同じ現場、同じメンバーでやっていると、どうしてもマンネリしてくるじゃないですか。一方、IBEXでは内容が悪かったらストレートに言われるんですよ。長野では自分のDJに何か言ってくれる人なんか1人もいなかったから、そうやってダメ出しされることすらもめっちゃ嬉しくて。だから東京でやっていた時期がなければ今はないですね。
レペゼン :
それを今、長野のクラブシーンに還元されているのも本当に素晴らしいです。
ブラックミュージック全般
かけられる地肩の強さ

レペゼン :
「DJやってて良かった」と思う瞬間はどんな時ですか?
K-TRACK :
褒められた時かな?笑
レペゼン :
シンプルですね笑
誰から褒められた時ですか?
K-TRACK :
誰でも良いです。それこそIBEXでやってる時にアフロミュージックをかけたら、お客さんがブースに走ってきて、「日本人なのになんでこの曲知ってるの!?本当にありがとう!」って言ってもらえたことがあって。あと最近だと、レゲエをかけてる時にたまたま長野のレゲエのサウンドクルーのボスの人が反応してくれたりとか。そうやってお客さんやプレイヤー問わず聴いている人から喜んでもらえる瞬間は嬉しいですね。
レペゼン :
他の畑の人にも刺さるというのはすごいことですよね。そのジャンルのトレンドをおさえていないと難しいわけじゃないですか。
K-TRACK :
正直、レゲエの人の前でレゲエをかけるのは勇気が要りますけどね笑
でもトータルでできるというのは見せていきたいです。ヒップホップ、レゲエ……というジャンルごとではなく、同じブラックミュージックとしてとらえながら柔軟に選曲をしたいですね。
ローカルのクラブからF1の舞台まで。
K-TRACKが目指す景色

レペゼン :
最後に、今後の展望や目指しているDJ像についてお聞きできますか?
K-TRACK :
これからは、バーとか飲食店とか、クラブ以外での現場のDJもしていきたいですね。
レペゼン :
良いですね。これまでにそういう場所から声がかかったりすることはありましたか?
K-TRACK :
今までは、白馬とか竜王といったスキー場でDJさせてもらったり、あとはスラックライン(*)の大会でも呼んでいただいたりしました。都内のクラブDJだと、スポーツの現場でも回したりするじゃないですか。自分もああいうのをやりたいですね。自分は車も好きなので、特にF1でのDJとかはめっちゃやりたいです笑
※ … 幅約5cmの細いベルト状のラインの上を、歩いたり跳ねたりしてバランス感覚を楽しむスポーツ。
レペゼン :
積極的に口にして、実現していきましょう笑
いろんな場所でK-TRACKさんのプレイが見られるようになることを楽しみにしています!本日は貴重なお話をありがとうございました。
K-TRACK :
ありがとうございました。

