ナメられたくない!1人のDJとして認めてもらう為にしたこととは?

男性が圧倒的に多い業界の中で勝負し続けるために大切なこととは?

ライター:DJ SHUNSUKE

パーティーを通して人の心を強く揺さぶり続ける人達がいる。
彼らは何故、今の仕事を選んだのか?
このコーナーではパーティーというカルチャーに関わり続ける演出家たちの過去から現在まで続くキャリアを紐解いていきます。

第十四回はヒップホップの現場を代表するフィメールDJの1人、DJ SAORIさんのキャリア、後半についてお送りします。

ナメられたくない!1人のDJとして認めてもらう為にしたこととは?

SHUNSUKE:
圧倒的に男性が多いクラブ業界の中でFemale DJとして活動していくにあたって、苦労したことはある?

SAORI:
女性っていうだけで何かナメられてる気がしてました。「どうせできないだろう。」みたいな目で見られてるような。お店の人もDJの人達も女性だからか優しくしてくれるんですよ。でもどこか本音で話をしてくれていないんじゃないか?って思ってました。お客さん扱いされてるなって感じたりとか。やっぱり一人のDJとして見てほしかった。あとは若いってだけで舐められるのも凄く嫌でした。これは年齢の話なので男性にも当てはまるのかもしれないですけどね。

SHUNSUKE:
自分自身ある程度キャリアを重ねてきた今思う事は、男女関わらず、「本気で話をして伝わるのかな?」という部分はあるかもしれない。そういう意味では腹くくってやってるのが分かるまでは少し気を使っちゃうっていうのもなんとなくわかる気がする。古い考え方かもしれないけれど…。お客さん扱いから、仲間として見てもらうためにどんな努力をして乗り越えたの?

SAORI:
とにかく悔しかったんでメチャクチャ練習しましたね。技術的にも精神的にも「本気で取り組んでる」と言う事を認めてもらえないと仲間に溶け込めないだろうなと自分でも感じていましたし。冷静に自分自身と向き合いつつ、今の状態では同等な話は多分できないんだろうなって思ったので。もう本当に沢山練習しました。ずいぶん時代は変わりましたが、今でもナイトクラブ業界は男社会が圧倒的に多い世界です、DJとして認めてもらう為にはまず練習ですよねきっと。

音楽を前提としていないブッキングは受けたくない。

SHUNSUKE:
1人のDJとして、しっかりとした実力がある事を理解してもらうしかないってことだよね。DJとして理解してもらった後の女性独特の苦労とかあった?

SAORI:
服装の事は色々言われましたね。女の子なんだからかわいい格好して来いよ、みたいな。クラブに遊びにくる女の子はドレスのような服を着たりセクシーな恰好したり、オシャレしたりしてる子が結構多かったから言われたんでしょうね。パーティらしい格好と言うか。私もクラブやパーティに遊びに行くだけの時にドレスコードがあればそういう恰好をしていきますけど、DJをしに行ってるので。荷物もかなりありますし、動きやすいカジュアルな恰好で行きたいんですよ。

SHUNSUKE:
まあ、パーティの演出側に服装を求めるのもちょっと違うよね。音楽の内容を求めるならまだしも。

SAORI:
周りが求めてる私に対しての服装っていうのが、私が思っているものと違ったのには結構苦労しました。やっと今、女の子の服装も全体的にカジュアルになってきたので以前に比べると少し楽になった気がします。とは言え当時はやっぱりなんだかきつかったですね。何を求められてるの?って。
洋服の話で思い出しましたけど「水着を着て来てください」って言われたパーティもありました。ホワイトパーティだったりマスクパーティだったりが流行った時代でもあったので「水着パーティっていうコンセプトです」って言い切られたんですけどね、断固お断りしました。そもそもパーティとしての売り出し方が音楽とは関係ないし、それをやるなら私がDJをしなくても良いですよね?って話ですし。音楽を前提としていないブッキングは受けたくないです。

SHUNSUKE:
自分の中で確固たる信念を持ってDJし続けてるんだね。長い間シーンの前線で走り続けてるけれど、全て乗り越えて続けてこられている理由はなんだと思う??

SAORI:
やっぱりナイトクラブでDJするのが本当に楽しいんです。現場を卒業して制作に移行する方とかもいるし、クラブ以外の場所に活動を移してる人もいますよね。それはそれで素晴らしいことだと思うんですけど、私自身はできる限り現場で活動したいなって思ってます。だから、より多くの人にナイトクラブで遊んで欲しいし、より遊びに来やすい場所にしていきたいなって思ってます。

もっとナイトクラブに遊びに来て欲しい。そして音楽を聴いて欲しい。

SHUNSUKE:
これからクラブに来る人のための楽しむためのアドバイスや提案ってある?

SAORI:
「音楽を知っているとクラブでの楽しみ方がすごく増えるよ」ってことですかね。やっぱりナイトクラブは音楽を聴いて楽しむ場所なので。ナイトクラブって、普段全く関わらないような人たちと、同じ曲で盛り上がったりすることで仲良くなったりする事があります。これって結構すごいことだと思ってて、間違いなくナイトクラブの持つ魅力の一つなんです。でもそれって音楽を知ってないと出来なかったりする。楽しみ方は様々なので音楽を調べてこい!って強要するつもりは全然ないんですけど、せっかく遊びに来るなら知ってた方が楽しいよ!っていう話です。ナイトクラブでプレイされる音楽を知る方法がないのであれば、聞いてくれたらどんどん教えるし。本当に音楽を通して得るものって大きいですから。音楽の聴き方も多様化してますよね、昔はナイトクラブに行かないと聞けなかった音楽が携帯一つで信じられない量の情報が手に入る。無理しないでも情報が得られる時代だからこそ、少しでも良いので音楽を聴くための時間を割いてくれたら良いなって思います。

SHUNSUKE:
提案する側としても積極的に聴いてもらえるような方法を考えていかないといけないよね。

SAORI:
そうですね、色々私も考えてはいるけど、なかなか実践出来なかったりもするので。時代にあった提案方法を考えていかないといけない。TikTokとかもその一つなのかもしれないですよね。DJやナイトクラブが、これまでより一般的に気軽に楽しめる場所に変わっていくように、自分なりの課題を見つけてどんどん音楽の提示をしていきたいです。

プロフィール

  • DJ SAORI

    DJ SAORI

    HIPHOPカルチャーに影響を受けレコード集めに没頭し、出身地である群馬県を拠点にDJを始める。その選曲センスはDJを始めた頃から注目を集め、わずか数年でその名北関東に広まる。常にフロアを意識したプレイスタイルは新旧織り交ぜた幅広い選曲で繰り広げ、その信頼と知名度は確実なモノにしつつある。現在は都内に拠点を移し、毎月数々のイベントへ出演し精力的に活躍中の実力派DJ。

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