ブースを見なくても自分が回していると伝わるプレイをしていたい。終わることのないDJ CRONOSFADERの探究

あのDJプレミアも頷かせた実力派DJのキャリアとこだわり

ライター:ほりさげ

パーティーを通して人の心を強く揺さぶり続ける人たちがいる。彼らはなぜ、この仕事を選んだのか?このコーナーではパーティーというカルチャーに関わり続ける演出家たちの過去から現在まで続くキャリアを紐解いていきます。
今回話を聞いたのは、主に大阪のアンダーグラウンドシーンを中心に活動するDJ CRONOSFADER(クロノスフェーダー)さん。現行のUSヒップホップの中でもアンダーグラウンドなアーティストに精通し、現場のプレイはもちろん、定期的にリリースするミックスCDや7インチレコードといった作品を通して尖った世界観を表現している。これまでメディア露出はほとんどなかったDJの知られざるキャリアを深堀りしていきます!

金沢出身のヒップホップDJ

レペゼン :
今日はよろしくお願いします。まず読者の方向けに自己紹介をお願いします。

CRONOSFADER :
よろしくお願いします。CRONOSFADER(クロノスフェーダー)です。1984年生まれで、出身は石川県の金沢です。8年前(2018年)くらいに大阪に出てきました。

レペゼン :
出身は金沢なんですね。大阪に引っ越されたのは、何かきっかけが?

CRONOSFADER :
けっこう軽い感じでしたね。30歳くらいで仕事を辞めて一ヶ月くらいニューヨークに行ったんですよ。帰国後、「大阪に行ってみたいな」と思って引っ越しました。

レペゼン :
そのあたりも後ほど深くお聞きしたいと思います。現在の活動内容を教えていただけますか?

CRONOSFADER :
大阪を拠点にDJをしているのと、あとは『THE VOID』っていうヒップホップのミックスと、『DELIVERY MONDAY』っていうミックスの2シリーズを、定期的にリリースしています。

レペゼン :
現場のプレイと並行して、ミックスCDにも力を入れられているんですね。

CRONOSFADER :
そうですね。『THE VOID』は、先月パート13が出ました。

レペゼン :
すごい!今、そのペースでミックスを作られている方は少ないかもしれませんね。

憧れの先輩B-BOYたちの
パーティに遊びに行って…

レペゼン :
そうやって精力的に活動されている CRONOSFADERさんですが、ヒップホップとの出会いはいつですか?

CRONOSFADER :
中3くらいの時ですね。地元に「ノアズアーク」と「COMPACT」っていう洋服屋さんがあったんですが、そこの人たちがやっていたパーティに行った時にレコードでDJをやっている人たちを見て興味を持ち始めました。
あとは当時スケボーもしてたんですけど、スケボーのビデオでも後ろでガンガンヒップホップが流れていて。「これやばいな」と気になり始めました。特にZoo York(*)から出た「mixtape」っていうスケートのビデオに、DJ ロックレイダのジャグリングやファット・ジョー、メソッドマン & ゴーストフェイスキラなどのフリースタイルが入っていたのは今でも記憶に残っています。

※ … 1993年にニューヨークで設立された、東海岸を代表する老舗スケートボードブランド

レペゼン :
そういうカルチャーが入ってきていたということは、金沢はヒップホップが根付いていた町なんですね。

CRONOSFADER :
大きい街ではないんですが、自分は金沢でヒップホップを知りましたね。当時パーティにいけばスケーターが1番遊んでいたし、DJもやっているスケーターもいたりしたので、そうやってB-BOYや街で遊んでる人たちと音楽が密接に繋がっていたのが大きいかもしれません。しかもバイナル熱が強い人が多い環境だったので、自分もバイナルへの気持ちは強かったです。

レペゼン :
当時はどういうふうにレコードをディグっていたんですか?

CRONOSFADER :
レコードを買うにも、当時はまだネットはなかったんで、DJブースにレコードを覗き込みに行ったり、DJ プレミア(*)とかDJ エクリプス(*)とかのミックステープから曲を学んだりしていました。

※ … USのヒップホップシーンを長年に渡って牽引してきたDJ/プロデューサー。ヒップホップデュオ「ギャング・スター」のメンバーとしても知られ、数々のクラシックを生み出している。

※ … 90年代からニューヨークで活動するDJ/プロデューサー。WNYUのラジオDJとしての顔も持ち、NYのアンダーグラウンドシーンを長く支え続けるキーマンとして今なお根強い人気を誇る。

レペゼン :
自ら貪欲に情報をとりに行っていたんですね。

能登半島地震を受けてNYで開催された
チャリティイベントに出演!

レペゼン :
30歳でニューヨークに滞在したということですが、その頃の思い出深いエピソードがあれば教えてください。

CRONOSFADER : 
いろいろありましたが、1番はM.O.Pのリル・フェイムのPVに出たことですね。

【 MIC HANDZ feat FAME (M.O.P.) – DON’T GET STOMPED 】

レペゼン :
めちゃくちゃすごい経験ですね!どういう経緯だったんですか?

CRONOSFADER :
彼がフィーチャリングで入っていた曲のPVの撮影をやっている現場に遊びに行ったら、偶然自分も出させてもらうことになったんです。それはニューヨーク滞在の中でも特に衝撃的な出来事でした。

レペゼン :
初ニューヨークでPV出演とは、相当引きが強いですね笑
ニューヨークにはその後も何度か行かれたんですか?

CRONOSFADER :
今までに4~5回ほど行ってて、一昨年はDJもさせてもらいました。ちょうど石川県の地震があった後で、それに向けたチャリティイベントをニューヨークでやるという話があって。

レペゼン :
えー!そんな動きがニューヨークであったとは。しかもそこにCRONOSFADERさんがブッキングされたのも熱いですね。

CRONOSFADER :
そうですね。ありがたいことに、「石川県にゆかりのあるプレイヤーを呼びたい」ということで連絡をいただきました。

レペゼン :
フライヤーを見ると超ビッグネームもクレジットされていますが、パーティでの売上はもちろん被災地に送られたということですよね?

CRONOSFADER :
送られました。そうやってニューヨークに住んでいる日本人や、現地のアーティストたちが参加してイベントを開催してくれたことにとても感謝していますし、 海外でこういう動きをしてくれたことをこれからも伝えていきたいです。

この日はDJだけでなく、急遽ライブのバックDJも任されたそう

レペゼン :
この記事を通して広まってほしいですね。

選曲なしで一発どり!?
独特なミックスCD制作

レペゼン :
8年程前に大阪に移住されたということですが、当時、繋がっている大阪のプレイヤーはいたんですか?

CRONOSFADER :
はじめはほとんどいなかったんですけど、少しずつ友達ができていきましたね。

レペゼン :
良いですね。そこから大阪でのDJの活動も増えていくと思うんですが、主な活動の場はどういったところだったんですか?

CRONOSFADER :
いろんなクラブで出させてもらいましたし、それこそ自分で『THE VOID』ってパーティをやったりもしていましたね。でもコロナで一度やれなくなって、その代わりに同じ名前のミックスCDのシリーズを作り始めたんです。

SoundCloudにアップされている過去のミックス作品

レペゼン :
そういう流れなんですね。ミックスCD、『THE VOID』のコンセプトや注目ポイントを教えてください。

CRONOSFADER :
その時々の新譜の中で、自分がかっこいいと思ったものをチョイスしています。特徴としては、あらかじめ選曲をしないことです。

レペゼン :
「選曲しない」とはどういうことですか?

CRONOSFADER :
例えば60分のミックスを作ろうと思ったら「1曲目はこれ、2曲目はこれ……」と順番を決めてから録るじゃないですか。それをせずに、しかも一発どりで録ることにこだわっています。できるだけその時のライブ感をパックしたくて。

レペゼン :
なるほど。その場の閃きを大事にされているんですね。現時点で既にパート13まで出ているということですが、それほどまでにミックス作りに取り組むモチベーションはどういったところにあるんですか?

ジャケットも1枚ずつシルクスクリーンでプリントするというこだわり!

CRONOSFADER :
やっぱり自分がヒップホップを聴き始めた時はミックスCDで育ったので、自分もCDで出したいんですよね。あとは現行のブーンバップで、90’sのヒップホップが好きな人にも響く曲もけっこうあるので、それをフレッシュに届けれたら良いなと思っています。

レペゼン :
素敵です。CRONOSFADERさんがUSのDJのミックステープで曲を知ったように、今、『THE VOID』をきっかけにヒップホップのかっこ良さに触れるヘッズもいると思います。

金沢のパーティで共演した
DJプレミアから、まさかの…

レペゼン :
これまでのキャリアの中で忘れられない現場はありますか?

CRONOSFADER :
金沢にいる時に、それこそ金沢にDJプレミアが来たんですよね。前日くらいまで僕は出る予定はなかったんですが、ある人の代わりにDJすることになったんです。その出番がプレミアの次で。

DJプレミア(右)の隣で淡々とプレイするCRONOSFADER(中央)

レペゼン :
うお!すごい順番ですね。

CRONOSFADER :
でもプレイしてたら、イベントの関係者がブースに来て「お前、やばいぞ!」って声をかけてきたんですよ。僕がちょうどプレミア本人の曲をかけた後くらいにそれを言われたので「ゲストの曲かけるのNGやったかな……」と焦ったんですけどその逆で、プレミアとそのマネージャーが俺のプレイにぶち上がっていたらしく。

レペゼン :
えー!めっちゃ熱いですね!ずっと聴いてきたアーティストに認められたとは。

CRONOSFADER :
そうなんです。で、僕のDJが終わった後にプレミアが来て「ミックスCDはないのか?」って聞かれたんですよ。その時はミックスCDを作ったりはしてなかったんです。「あの時に渡せたら何か変わったかもな……」と思ったことも、その後ミックス作りに力を入れるきっかけになりました。

見なくても分かるくらいの
“CRONOSFADER節”を滲ませたい

レペゼン :
DJ中に大事にしているものや意識していることを教えてください。

CRONOSFADER :
自分のプレイを聴いてくれた人が、「この曲かっこいい」とか「アガった」とか、1曲でも記憶に残って帰ってもらえると良いなと思います。

レペゼン :
ありがとうございます。では最後に、目指しているDJ像や、今後やってみたいことを教えてください。

CRONOSFADER :
矛盾してるかもしれないんですけど、DJブースを見なくても「CRONOSFADERが回してる」って分かるようなプレイをずっとしていたいですね。たまに割と違うジャンルの中に混ざったりすることもあるんですよ。ハードコアのイベントに1人だけヒップホップのDJとして呼ばれたり、月に一回、BAR INC(*)ってところで行われている「ISANDLA LOUNGE」では、ディスコ、ソウル、ファンクなどをメインにプレイしたりと、最近はヒップホップだけではなく、今までにプレイしたことのない環境や場所でのプレイにも挑戦していて。どのジャンルをかけていても、自分の中で持ってる「ドープ」を届けられたら良いなと思っています。

※ … 上質な音楽とカクテルを楽しめる大阪・心斎橋のミュージックバー。国内外の著名なDJが出演することでも知られ、音好きの間で話題となっている。

レペゼン :
これからも、そんな“CRONOSFADER節”をキャッチしたいと思います。本日はありがとうございました。

CRONOSFADER :
ありがとうございました。

プロフィール

  • DJ CRONOSFADER(クロノスフェーダー)

    DJ CRONOSFADER(クロノスフェーダー)

    大阪を拠点に活動するDJ。HIPHOPを軸に、BOOM BAPから現行サウンドまで独自の感覚で横断し、多彩な現場でDJ PLAYを展開している。重心の低いグルーヴ、黒さを感じさせる選曲、タイトなミックスを持ち味とし、派手なギミックに頼らず、音そのものの説得力で空間を掌握するスタイルが特徴。ジャンルや時代に左右されない審美眼と確かな選曲眼を武器に、大阪アンダーグラウンドシーンで独自の存在感を放ち、刺さる者には深く刺さるDJのひとりである。

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