ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアや仕事について全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。
今月のゲストは世界的なDJの二大大会、「DMC」と「IDA」の両方で優勝した経歴を持つDJであり、現在は新潟県南魚沼市で米農家「こまがた農園」を経営する“DJ CO-MA”こと駒形宏伸(こまがた・ひろのぶ)さんにお話を伺いしました。全国区のお米コンテストでも優勝するなど、お米農家としてもチャンピオンになるという偉業を成し遂げている駒形さん。Vol.3では、米農家とDJの両立の難しさ、目標を達成するためのヴィジョンの描き方、大会前に勇気をもらったヒップホップソングについて語っていただきました。
前回の記事はこちら→ 世界一のDJが米農家に!異色のキャリアを持つ駒形宏伸とは?
米農家とDJを両立する中で抱いていた葛藤と嫉妬
レペゼン:
米農家とDJを両立しながら、DJの世界大会「DMC」と「IDA」の両方で優勝された駒形さんですが、東京や大阪などの都会では、DJだけで仕事していている方もいると思います。
そんな時に自分は米作りをしていて、時間ないな、悔しいなとかは思わなかったですか?
駒形宏伸:
めちゃくちゃ思ってましたね。
働きながら何やってんだろうみたいな。オレが働いてる間にみんなどんどん差がついていくんじゃないかと。
すごい焦ってましたね。
レペゼン:
そんな忙しい中でも結果を出されたわけですが、どのように練習をしていたんですか?
駒形宏伸:
んーまぁとにかくダラダラずっとやっても、良いもんでもないなと思ってたのはありますね。
当時決められた時間でしか練習できなかったんで、ある意味その時間はめちゃくちゃ集中できたんですよ。それは良かったのかもしれないです。ただやっぱ睡眠時間が足りないんで、ホント月一回は風邪引いてましたけど笑
レペゼン:
睡眠不足はやっぱ体に一番悪いですよね笑
練習のプランは決めたりしてたんですか?
駒形宏伸:
全くノープランです。ただ畑とか田んぼで作業してる時に、頭の中でルーティンを構築したりはしてました。
例えばスネアとスネアの間にもう1個スネア入れたらこうなるなみたいな。
レペゼン:
農作業しながら考えてたんですね。
駒形宏伸:
そうです。あのキックの音で、右のターンテーブルにもキックを1個入れたり、引いたりしたら、こうなるなとか。
農作業中にずっと考えてるんですよ。自宅に帰って、それをすぐ試すみたいな感じで。
ため込んだのを一気に練習でやる感じでしたね。
レペゼン:
仕事の時間に考えちゃうわけですね。
駒形宏伸:
そうですね。実戦を意識して練習時間にバーってぶつけてみたいな。あとは思いついたメロディラインをケータイに録音したりとか。
当時はガラケーでしたけど、自分の声でメロディラインを歌って、録音してました。当時のガラケーは着メロを作る機能があって、それに録音してましたね笑
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米農家DJが感じる米作りとDJの共通点とは?
レペゼン:
米農家もDJも職人肌な職業かと思うのですが、何か共通点とかありますか?
駒形宏伸:
自分的には何のジャンルでもそうなんですけど、自分がいいなと思ったことに対して、目標とかができて、そこにどう向かっていけば目標を達成できるかみたいな道のりの描き方は、農業でも音楽でも共通してる部分かなとは思います。
レペゼン:
目標までのマスタープランということですね。
駒形宏伸:
例えば、米はどのタイミングでどういった肥料をやれば、どういうお米になるのかとか。結構しっかりプランを考えています。稲を刈り取る作業を自分の思ってる時期にしたいんで、逆算するんですよね。この日に植えれば、こうなるとか。全部逆算ですね。
レペゼン:
DJでもそういう形で?
駒形宏伸:
そうですね。練習していつまでに完全に仕上げてなきゃいけないとか。身体に覚えさせなきゃいけないんで。反復練習期間っていうのが絶対必要なんです。僕はその期間を1ヶ月って決めてて。何月に1本目のルーティンができて、何月に2本目のルーティンができてるっていうのは、自分の中で決めてやってましたね。
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米農家の決して譲れない美学
レペゼン:
今回は、駒形さんがDJの大会前に勇気をもらったヒップホップを教えてください。
駒形宏伸:
やっぱりRHYMESTER(ライムスター)の「B-BOYイズム」です。
もう初っ端の「決して譲れないぜ この美学 ナニモノにも媚びず」のところが良いですよね。そのパンチラインが1発目で来るところがすごく好きです。
【RHYMESTER – B-BOYイズム 】
レペゼン:
「B-BOYイズム」を聴いて挑んだ大会とかありますか?
駒形宏伸:
DMCとかも全然聴いてましたね。移動中とかに聞いて、気持ちを高めてました。ライムスターは好きなので結構聞きますね。
レペゼン:
「決して譲れないぜ この美学」ってことですけど、米作りにおいての「美学」はありますか?
駒形宏伸:
ありますねー。わかりやすいところで言うと、肥料ですね。動物性の肥料と植物性の肥料って味が変わるんですよ。
植物性をやると、凄い洗練された、研ぎ澄まされたような味になる。動物性だとパンチが生まれるんですよね。
で、両方やっぱり欲しいので、その黄金比率っていうのを探してる最中です。
レペゼン:
良いですね。しかも米作りって1年かけてのものだから、その結果が出るのもなかなか時間がかかりますよね。
駒形宏伸:
そうなんです。時間をかけて、いかに自分の理想の味に近づけるかってすごい難しいんですが、やっぱりそこが面白いんですよね。本当に米作りにも各農家の美学があると思いますね。
DJと農家という二足の草鞋を履きながら、DJの世界チャンプという称号を手にした駒形さん。次回はDJを指導したCreepy NutsのDJ松永さんとの関わりやや、現在進めているプロジェクト「南魚沼産コシヒカリ KNOW THE FUTURE FINAL しろのちから」、そしてお米を使った自家製の米粉のシフォンケーキ屋のオープンなど今の駒形さんの活動について聞いていくよ!お楽しみに!