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WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.230。
今回取り上げる英語は「turn up(ターン・アップ)」。「音量を上げる、盛り上がる」という意味の言葉だ。
早速USラップのリリックから「turn up」の使い方をチェックしてみよう!
まず紹介するのは、Chris Brown(クリス・ブラウン)の大ヒット曲「Turn Up the Music」!
Chris Brown「Turn Up the Music (2012 )」
Turn up the music ‘cause this song just came on
Turn up the music if they try to turn us down音量を上げな、この曲が流れたら
音量を上げな、あいつらがオレたちの気分を下げようとしたら
タイトルの“ Turn up the music ” は「音楽の音量を上げろ」という意味。
クリス・ブラウンは自分の曲が流れたら音量を上げて盛り上がろうと言ってるわけだね。また“Turn up the music if they try to turn us down”の部分で使われている、“ turn down」は「音量を下げる、拒否する」という意味の言葉。このリリックでは、“ turn up ”の対義語として使われており、“turn us down(オレたちを下げる = オレたちの気持ちを下げる)” というニュアンスで使われているんだ。ひとつのヴァースで対義語もセットで学べるなんて… なんてお得なリリックなんだ..
続いて紹介するのは甘い歌声が魅力のシンガー&ラッパー、Bryson Tiller (ブライソン・ティラー) の「Exchange」!
Bryson Tiller「Exchange (2015)」
Yeah, is you at Two Keys or Tin Roof?
Turn up with young Tiller, we just gettin’ looseTwo KeysかTin Roofにいるの?
ヤング・ティラーとアガってこう。ワイルドにいこうぜ
Two Keys と Tin Roof はブライソンの地元、ケンタッキー州レキシントンにあるバーの名前。ブライソンはバーで女の子と待ち合わせをしていて、これからデートに行くって感じだね。
ここでの “ turn up ” は「音量を上げる」から派生してシンプルに「盛り上がろう」というニュアンスでの使われ方。英語のフレーズはシチュエーションに寄って、いろんな使い分けができるから、おもしろいよね。
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.230のラストを飾るのは、Lil Baby(リル・ベイビー)の「The Bigger Picture」。2020年5月に警察官の暴行によってアフリカン・アメリカンの男性、ジョージ・フロイド氏が死亡した痛ましい事件を受けて、作られた曲だ。
Lil Baby「The Bigger Picture (2020)」
You can’t fight fire with fire
I know, but at least we can turn up the flames some
Every colored person ain’t dumb and all whites not racist
I be judging by the mind and heart, I ain’t really into faces火で火には勝てないさ
わかってる、でも少なくとも、炎をあげることはできるだろ
全ての有色人種はバカじゃないし、全ての白人は差別主義者じゃない
オレは思考と心で判断しているし、顔にはマジで興味がないんだ
この曲がリリースされたのは2020年の6月。「ブラック・ライヴズ・マター」運動が起こり、アメリカ全土に広がるデモや暴動が毎日のように報道されていた時期だ。
そういった時期にリル・ベイビーは警察の暴力やアメリカ社会での人種差別に怒りを示しながらも、肌の色でいがみあうのではなく、常に“ mind and heart (思考と心)”で相手を理解することの大切さを発信したんだ。
つい一方の立場に寄ってしまいそうになる混乱の期間にこういったメッセージをすぐに発信できるのは、その勇気や覚悟も含めてなかなかできるものじゃないよね。
“ bigger picture(全体像、大局的な視点)” で物事を見ている彼だからこその発信であり、ラップというアートの本質を強く感じることができるリリックだ。
【歌詞出典元】Genius
*訳は全て意訳です。