番外編 2000年代名盤特集『Kanye West – The College Dropout』|ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン? Vol.182

ヒップホップの歌詞からストリートで使える英語を学ぼう

ライター:TARO

今回紹介するスラング

番外編

2000年代名盤特集『Kanye West - The College Dropout』
紹介アーティスト
Kanye West
番外編 2000年代名盤特集『Kanye West – The College Dropout』|ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン? Vol.182
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WHAT’S UP,  GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.182の今回は2000年代名盤特集。取り上げるのは2004年にリリースされたKanye West(カニエ・ウェスト)のデビューアルバム『The College Dropout』。

メインストリーム・ヒップホップのサウンドはこのアルバムの以前以後に分かれると言っても過言ではないほどそれ以降のヒップホップのサウンドに影響を与えた1枚だ。クラシックなソウル・ミュージックをサンプリングし、それをドラマティックに再構築した音作りや曲の中での展開の豊富さ、そして銃や犯罪と行ったギャングスタなラップとは距離を置いた家族や宗教、そして中産階級の家庭に生まれたカニエの自身の等身大の生活を歌ったラップ。そうしたものが一体となった『The College Dropout』はオーバーグラウンドで絶大な支持を受け、カニエは一躍シーンのトップスターになったんだ。

そんな『The College Dropout』からまず紹介するのはLauryn Hill (ローリン・ヒル)の「Mystery Of Iniquity 」をサンプリングした「All Falls Down」!   

「All Falls Down」 

The prettiest people do the ugliest things
最も美しい人々が最も醜いことをするのさ
For the road to riches and diamond rings
富とダイヤモンドの指輪への道のためにな
We shine because they hate us,
あいつらがオレ達を憎むから、オレ達は輝く
floss ‘cause they degrade us
あいつらがオレ達を劣化させるから磨きあげてるんだ オレ達は
We tryna buy back our 40 acres
オレ達の40エーカーを買い戻そうとしてるのさ

「All Falls Down」からカニエの作詞のセンスが溢れ出るリリック。まず冒頭の、                                  The prettiest people do the ugliest things For the road to riches and diamond rings 最も美しい人々が最も醜いことをするのさ 富とダイヤモンドの指輪への道のためにな                                   で歌われているのは、自分の私利私欲のためにはなんでもする金持ち連中のこと。 金持ちてのは一見綺麗に着飾っているように見えても、内面はどす黒いやつが多いぜてことだね。そして次のライン、“We shine because they hate us, floss ‘cause they degrade us(あいつらがオレ達を憎むから、オレ達は輝く。あいつらがオレ達を劣化させるから磨きあげてるんだ)” で歌われてるのは、白人と黒人の対立。白人達が黒人を蔑むほど、黒人たちは努力して自分たちを輝かせているということだね。そしてそんな黒人達が取り返すのは、「オレ達の40エーカー(our 40 acres)」。実はこれ、南北戦争の際に、北軍が黒人たちに約束した「戦争後に40エーカーの土地とラバ一頭を与える」という約束のこと。しかしこの約束は結局守られることはなく、黒人たちに土地は与えられることはなかった。つまりカニエが歌っているのは、アメリカの黒人達はその時に受け取るはずだった 40エーカーを自分たちの力で取り戻そうとしているということなんだ。

続いてはソウルの女王、Aretha Franklin(アレサ・フランクリン)の「Spirit in the Dark」をサンプリングした「School Spirit」! 

「School Spirit」

Told ‘em I finished school and I started my own business
あいつらに「学校を終えて、自分のビジネスを始めた」て言ったんだ
They say, “Oh you graduated?”
 そしたら「卒業したの?」って。
No, I decided I was finished
違ぇよ、もう辞めたんだよ
Chasing y’all dreams and what you’ve got planned
お前らの夢や、お前らが計画してきた事を追いかけるのを
Now I spit it so hot, you got tanned
今、オレは熱くスピットする、お前を日焼けさすくらいに
Back to school and I hate it there, I hate it there
学校じゃ、嫌なことだらけ
Everything I want, I gotta wait a year, I wait a year
 欲しいもの全て一年待たなきゃならないし
This nigga graduated at the top of our class I went to
 あいつはオレ達のクラスのトップで卒業したけどさ
Cheesecake, he was a motherfucking waiter there
 この前チーズケーキに行ったら、ウェイターやってたぜ

カニエが、シカゴの美大を自主退学し、アーティストとしての道を歩み始めた当時の自分を振り返ったリリック。周りに大学を退学したことを伝えたら「卒業したの?」て聞かれたけど、カニエは自分で終了させただけ。なぜなら大学で学んでいても意味がないと思ったから。そして彼はプロデューサーとして確固たる地位を歩んでいくわけだけど、その後アメリカのチェーンレストラン、チーズケーキに行ったら、なんと当時クラスのトップで卒業したやつがウェイターとして働いている。退学したカニエの方が出世してるてわけだね。学歴なんて意味ねぇだろという熱いメッセージが込められたリリックだ。

「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.182、2000年代名盤特集『The College Dropout』のラストを飾るのはChaka Khan(チャカ・カーン)の「Through the Fire」をサンプリングした「Through the Wire」!  

「Through the Wire」

In the blink of a eye, his whole life changed. 
一瞬の瞬きの間に、彼の全人生は変わってしまった
If you could feel how my face felt. 
もし君がオレの顔が感じた痛みがわかるなら
You would know how Mase felt (Mason Betha!). 
メイスが感じてたこともわかるだろうな 神に誓うよ
Thank God I ain’t too cool for the safe belt. 
神様に感謝、安全ベルトを巻かないほどイケてもなかったよ
I swear to God, driver two wanna sue. 
相手のドライバーは訴えたがってる
I got a lawyer for the case, to keep what’s in my safe safe. 
オレは弁護士を雇ってる。オレの金庫の中のものを守るために
My dawgs couldn’t tell if I… 
オレのドッグスは気づかないだろうな もしオレが…
I looked like Tom Cruise in Vanilla Sky, it was televised.
オレがバニラ・スカイのトム・クルーズみたいになって、テレビ放映されたらさ。

2002年、カニエ・ウェストはレコーディング・スタジオからの帰り道に車で交通事故を起こし重傷を負い、その結果、アゴに “ wire (ワイヤー)”を通すことに。そんな大怪我からのリハビリを行なっている時期に作ったのがこの曲。つまり「Through the Wire(ワイヤーを通して)」歌った曲なんだ。 ちなみに“ If you could feel how my face felt. You would know how Mase felt(もし君がオレの顔が感じた痛みがわかるなら、メイスが感じてたこともわかるだろうな)”で歌われてるのは、90年代から2000年代にかけて活躍したラッパー、Maseのこと。Maseは過去にWu-Tang ClanのGhost Face Killa(ゴースト・フェイス・キラ)のことをチャかして喧嘩になったことがあり、ゴースト・フェイス・キラのクルーとメイスが出会った時に、ゴースト・フェイス・キラの連れであるI-Chamがメイスを殴り、あごを粉砕したことがあるらしいんだ。交通事故で顎を大怪我してしまった自分とメイスを重ねてるてわけだね。 そして「オレがバニラ・スカイのトム・クルーズみたいになって」の箇所ででてくる「バニラ・スカイ」は2001年公開のトム・クルーズ主演の映画。主人公のトムは交通事故で、顔に傷を負った青年という設定だ。カニエは事故で重傷を負った自分の顔はまるでバニラ・スカイのトム・クルーズみたいで、ドッグスたちもカニエだと気づかないだろうと言っているんだ。

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