WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.166の今回は2000年代名盤特集。取り上げるのは、サウス・ヒップホップ・シーンのクリエイティビティーを全世界に知らしめたOutkast(アウトキャスト)の4thアルバム「Stankonia」。
アウトキャストはアトランタのラップ好きの高校生だったAndre 3000(アンドレ・3000)とBig Boi(ビッグ・ボーイ)が地元のショッピング・モールで出会い結成したデュオ。ファンクやソウル、ジャズやテクノなど、多様な音楽の要素を取り入れたサウンドで2000年代のシーンを席巻したレジェンド・デュオだ。4thアルバムの「Stankonia」はそれまでヒップホップシーンの中で認知度を得ていたアウトキャストがシーンの枠組みを超え、全世界でヒットするきっかけとなった作品なんだ。
そんな「Stankonia」からまずチェックするのは「Ms. Jackson」!
「Ms. Jackson」
I’m sorry, Ms. Jackson, ooh, I am for real ごめんなさい、ミス・ジャクソン、本当に申し訳ないと思ってる。 Never meant to make your daughter cry あなたの娘を泣かせるつもりはなかったんだ。 I apologize a trillion times 1兆回謝るよ。
ビルボード100で1位を獲得し、グラミー賞の最優秀ラップ・パフォーマンス賞を受賞した 大ヒット曲「Ms. Jackson」。キャッチーでメロディアスなフックが耳に残る2000年代のヒップホップ・シーンを代表する1曲だ。実はこの曲はアンドレ3000が元カノであるErykah Badu(エリカ・バドゥ)の母に向けて作ったとされる曲で、タイトルになっている “ Ms. Jackson(ミス・ジャクソン)” はエリカの母のことを指していると言われている。アンドレはエリカと別れてしまったことを本当に申し訳なく思っていて、彼女への思い、そして彼女の母に対しての想いを歌に込めたされているんだ。
続いては、世界のクラブシーンを席巻した大ヒット曲「B.O.B.」からビッグ・ボーイのリリックをチェキ!
「B.O.B.」
Uno, dos, tres, it’s on ウノ、ドス、トレス、さぁ始まりだ。 Did you ever think a pimp rock a microphone? マイクをロックするピンプて考えたことあったか? Like that there boy and will still stay street まるで“あのボーイ”とストリートで居続けてるみたいに。 Big things happen every time we meet でかいことが起きるぜ、オレたちが会う度にな。
ハイスピードでアップテンポなビートに、ゴスペルのボーカルを取り入れたフックで幅広いリスナーの支持を受けたアウトキャスト最大のヒット曲の1つである「B.O.B.」。音楽メディア「ローリング・ストーンズ」が選ぶ史上最も素晴らしいヒップホップ・ソング50にも選ばれているね。“ Big things happen every time we meet(でかいことが起きるぜ、オレたちが会う度にな。)” で歌われてるのは、ビッグ・ボーイとアンドレ3000の関係性。全く方向性が違う二人だけど、その二人が出会うと間違いなくでかい事が起きるてわけだ。
「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.166、2000年代名盤特集、「Stankonia」のラストを飾るのは、ビッグ・ボーイの巧みなライミングとアンドレ3000のコンシャスなリリックが組み合わさった1曲「Spaghetti Junction」!!
「Spaghetti Junction」
Yeah, they can bite, but cannot be us パクっていいぜ。どうせオレたちにはなれない。 They can come and pick up little slang but cannot see us やってきて、少しのスラングをつまむだけ。オレたちを見ることすらできない。 You ought to be ashamed, trying to fit in my Adidas 恥ずかしく思いな。マイ・アディダスに足を合わせようとするのを。 So Run like D.M.C. is me and, no, don’t got no heater D.M.C.みたくRunがオレ、いやいやピストルは持ってねぇよ。 Well, we zippin’ around the corner in that golden stankin’ Lincoln オレたちはゴールドで装飾されたリンカーンに乗って、コーナーをうろつく。 I got my heat up under my seat シートの下が熱いぜ。 Just in case these youngsters tryin’ to take it 万が一、あの若い連中が襲いに来た時のためさ。 Pullin’ the pistol on another black man was never the plot ピストルを若い黒人に向けることは、計画にはないぜ。 But sometimes my brothers lose theyself and try to take my spot でも時々ブラザーたちは自分を見失って、オレのスポットを奪おうとするんだ。 They come like black stallions in the night あいつらは夜中にブラック・スタリオンのようにやってくる。 Usually around fo’ or five is when they figure the time is right 大体、4時か5時さ、その時間が良いんだとさ。 When you good and sleep; I couldn’t sleep until I seen it お前が良い子して寝ているとき、オレはそれを確かめるまで、眠れなかった ‘Wit my own eyes, ‘til they come over the hill—surprise オレ自身の目で、あいつらが丘を上がってくるまで。サプライズさ。
“ Yeah, they can bite, but cannot be us(パクっていいぜ。どうせオレたちにはなれない。)” で使われている “ bite ” はスラングで「(技などを)パクる」という意味。 でもアウト・キャストのオリジナルなスキルと方向性をパクったって彼らにはなれない。“ You ought to be ashamed, trying to fit in my Adidas(恥ずかしく思いな。マイ・アディダスに足を合わせようとするのを。)” で歌われている “ my Adidas ” とはRun-D.M.C.の大ヒット曲「My Adidas」のサンプリングであり、「自分のスタイル」を意味するメタファー。他人のスタイルをパクってパフォーマンスをすることは、ヒップホップシーンではとても恥ずかしい事だと歌ってるんだ。そして、ビッグ・ボーイは彼の愛車、リンカーンのシートの下にピストルを入れている。万が一襲われた時の護身用てわけだけど、ビッグ・ボーイだって本当は同じ黒人を撃ちたくない。ただもし襲われた時は自分の身を守らなくちゃいけないという過酷な現実を伝えているんだ。 そして多くのギャングたちは夜に強盗などの目的でうろつき回る。大体夜中の4時〜5時が彼らの活動時間だ。ゲトーの夜の闇の中で素早く動き回る彼らの姿は、まるで “ブラック・スタリオン(黒い馬)” のようであり、ギャングたちが去るまでは恐怖で眠りにつくことができないてことだね。 タイトルである「Spaghetti Junction(スパゲッティ・ジャンクション)」は、アトランタにある高速道路のインターチェンジ、Tom Moreland Interchangeのこと。まるで皿に上のスパゲッティの麺のように道路が複雑に入り組んでいることから、そう呼ばれているんだ。フックの部分のリリックではジャンクションについてこのように歌われている。
Be careful where you roam cause you might not make it home (In the junction, in the junction) 歩き回る場所には気をつけな。おうちに辿り着けないかもしれないぜ。 (ジャンクションではな。)
スパゲッティ・ジャンクションでは一回、道を間違うとなかなか抜け出すのが難しい。それはまるでゲトーで生きるアフリカン・アメリカンの人々の人生と同じだ。 アウトキャストの二人はスパゲッティ・ジャンクションとゲトーの人々の人生を重ね合わせて、アメリカのアフリカン・アメリカンの人々が直面している過酷な現実を伝えているんだ。