パンチラインで観る映画『スリー・ビルボード』|ストリートヘッズのバイブル Vol.30

善と悪が混じり合う、怒涛のクライムサスペンス。

ライター:Lee

みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きにオススメの映画を、作中に登場するセリフを通して紹介していくよ!

今回取り上げるのは、アカデミー賞主演女優賞に輝いたフランシス・マクドーマンド主演の『スリー・ビルボード』。
娘をレイプされ焼き殺された母親が、ろくに捜査を進めない警察に対して、抗議のビルボード(広告看板)を3つ出すところから物語が始まる。警察の人種差別が当然のように横行している田舎町で、善も悪もごちゃ混ぜになった人たちが繰り広げる人間模様が見どころだ。

そんな『スリー・ビルボード』から、パンチの効いたセリフを紹介していくよ!

『スリー・ビルボード』ってどんな映画?

ミズーリ州の田舎町に、突然3つの巨大広告看板が現れる。レイプ殺人事件の被害者の母親であるミルドレッドが、警察を糾弾するために出した広告だった。

なんとしても看板を取り下げさせたい警察と、絶対に犯人を見つけたいミルドレッド。広告看板をきっかけに、怒りが怒りを呼び、さまざまな事件が起こっていく。

『スリー・ビルボード』の名言

物語が進むにつれて、登場人物の印象がどんどん変わっていくのがこの映画のおもしろいところ。そんな人たちの人間臭さが際立つセリフを3つ紹介するよ!

①「死んだ後じゃ意味ないでしょ?」

ミルドレッドが掲げた看板のひとつである「HOW COME, CHIEF WILLOUGHBY?(なぜ?ウィロビー署長)」に腹を立てた町の警察署長ウィロビーは、看板を取り下げさせようと直接ミルドレッドを訪ねてきた。

彼女に対して、遺体から検出されたDNAは前科者に一致しないために、捜査が行き詰まっていることを伝える署長。だが、ミルドレッドは、8歳以上の男の住民の血液を採取すべきだと、強気の態度を崩さない。

署長は最後の手段とばかりに、自分がガンで余命があと少しと言うことを伝える。それに対してミルドレッドは「町中のみんなが知っている」と、一蹴。承知の上で自分を追い詰めるような広告を出したことに驚いている署長に対して、彼女が放ったセリフがこちら。

Well, they wouldn’t be 

as effective after you croak.

Right?

死んだ後じゃ意味ないでしょ?

恐るべき執念!!
娘のためなら、非道な行いもいとわない姿勢を見せつけるミルドレッド。面倒なことに巻き込まれず、余生を静かに過ごそうとする署長に、冷や水を浴びせたのがあの看板だった。

だけど、このあと署長が取った行動によって、ミルドレッドは追い詰められていく。

②「なぜ俺が会うと思うんだ? 不機嫌な君に」

ある事件をきっかけに、広告看板を燃やされてしまったミルドレッド。彼女は警察の仕業だと考え、仕返しに警察署に放火するという犯罪を犯してしまう。そんな彼女を助けたのが、密かにミルドレッドに恋心を抱く小人症のジェームス(ピーター・ディンクレイジ)だった。

いろいろ助けてくれたお返しにと、ジェームスとディナーを一緒にするミルドレッド。だがそこで、元DV夫と鉢合わせてしまう。彼は小男のジェームスと一緒にいるミルドレッドを笑い、看板に火をつけたのは自分だと、悪びれることなく告白する。

腹を立てたミルドレッドは、ジェームスにまた別の日に会おうと言い、帰ろうとするのだけど、そこでジェームスが返したセリフがこちら。

Why would I want to?

You’ve been embarrassed ever since we arrived.

なぜ俺が会うと思うんだ?

ずっと不機嫌な君に

悲しすぎる…!
元夫に対しても、ジェームスには借りがあるから一緒にいるだけだという態度を崩さなかったミルドレッド。そんな彼女の態度に、ジェームスはずっと傷ついていたんだ。会いたいなら会ってやってもいいという、彼女の傲慢な態度をキッパリとはねのけたジェームスは、とてもかっこいい。

彼の献身的な優しさを蔑ろにしていたと気づいたミルドレッドだが、時すでに遅し…。

③「あんた以外に誰がやる?」

物語の終盤、ミルドレッドは元警察官のディクソンと犯人探しの旅に出る。
ディクソンは署長を慕っているがゆえに、ことあるごとにミルドレッドと対立していたのだが、ある出来事をきっかけに改心し、事件解決のために彼女に協力していた。

実はディクソン、ミルドレッドが警察署に放火した際に、全身に大火傷を負ってしまっていた。ディクソンの協力的な態度に心を動かされたミルドレッドは、警察署に放火したのは自分だと告白する。

その告白を受けて、ディクソンが返したセリフがこちら。

Why, who the hell else would it have been?

あんた以外に誰がやる?

ディクソン、お前知ってたのか…!!
全部知ってても怒りに溺れず、ミルドレッドに協力することを決めたディクソン。赦し、赦されるから、人はどうにか生きていけるんだ。

はじめは対立していた二人が一緒に旅に出るなんて、誰が予想していただろう。そこに至るまでの紆余曲折には、人間の多面的なおもしろさが凝縮されているので、ぜひ実際に映画を観てほしい。

画像出典元:20世紀スタジオ

配信先:Amazon Prime

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