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「ストリートヘッズのバイブル」では音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!今回取り上げるのはコアなヘッズとアニメファンからカルト的な人気を誇る日本アニメ屈指の名作『サムライチャンプルー』。
『サムライチャンプルー』とは?
2004年にフジテレビ系列で放送されたテレビアニメ。時代劇とヒップホップカルチャーをチャンプルー(ごちゃまぜ)した独創的な世界観、音楽とシンクロした革新的なアニメーション、そして日本を代表するヒップホップアーティスト、Nujabesらを起用したサウンドトラックで世界中で大きな支持を受けるジャパニメーションの金字塔。
①「 ヒップホップ×サムライ」。
世界に衝撃を与えた至高のオープニング映像
「サムライチャンプルー」の見所はなんと言っても「サムライ」、「ジャパニメーション」、そして「ヒップホップカルチャー」の融合だ。まず冒頭から魅了されるのがオープニングのアートワーク。Nujabes と Shing02 による楽曲「battlecry」で始まるOP映像は、江戸時代の天才絵師・伊藤若冲が色彩豊かに動物や植物を描いた「動植綵絵」が流れる背景の上で、作中に登場するキャラクターたちが躍動。日本の伝統と当時最先端のアニメーション、そしてヒップホップミュージックをまさに“チャンプルー”した至高の映像芸術になっているんだ。
② “Lo-fiのルーツ”──
Nujabesと『サムライチャンプルー』が
築いたビートの系譜
世界で最も聴かれている日本人アーティストの一人であるNujabes。トラックメイカー、ヒップホップ・プロデューサーとして多くのクラシックを残した彼の名が世界的に知られるようになったきっかけの一つがこの『サムライチャンプルー』なんだ。「サムライチャンプルー」は2005年に北米のカートゥーン ネットワーク「Adult Swim」で放送が開始、以降ヨーロッパやアジアなどでも徐々に放送され、各地でカルト的な人気を得るようになる。
そこでまず多くのキッズたちが衝撃を受けたのが、オープニングの「和×ヒップホップ」のアートワークとNujabes と Shing02の楽曲「battlecry」。それまでのヒップホップ音楽にはあまりなかったジャジーでスムースな音感、丁寧に重ねられた音のレイヤーが生み出す無限の広がりと奥行き、そしてそこから生み出される唯一無二の柔らかく、そして優しいビートの肌触りは全世界の音楽好きのキッズたちの心を虜にし、後の「Lo-fi(ローファイ・ヒップホップ):チルでメロウ、そしてジャジーなヒップホップビート」というジャンルの誕生に大きな影響を与えたんだ。
③ DJ、スクラッチ、ブレイクランス…
映像に溢れるヒップホップ要素
『サムライチャンプルー』が革新的なのは、ビジュアルや音楽だけでなく、アニメーション、映像表現としてヒップホップのエレメントを表現していること。DJのスクラッチに合わせての場面転換、ブレイクダンスの動きを取り入れたチャンバラアクションなど、映像の随所にヒップホップカルチャーを感じる要素がまさに“サンプリング”されており、放送から20年経った現在でも今観ても全く色褪せることなく、超絶にカッコいいのだ。
④ 今では実現不可能。
日本を代表するアニメクリエイターと
ヒップホップアーティストが集結
今では実現不可能とも言える日本屈指のクリエイターが集結しているのがのもこのアニメを名作たらしめている要素の一つ。まず監督に『カウボーイビバップ(1998)』などで知られる日本を代表するアニメ監督、渡辺信一郎。自身、筋金入りの音楽好きであり、ヒップホップも大好きだったことから、Nujabesにサウンドトラックの制作を依頼したそうなんだ。また世界のキッズに衝撃を与えたオープニング映像の演出は後に『時をかける少女(2006)』『サマーウォーズ(2009)』の監督となる細田守(当時は橋本カツヨ名義)。原画担当は「ルパン三世」シリーズの映画で監督を務めた小池健など、まさに日本アニメ界を背負って立つスーパークリエイターたちが集結。さらに音楽面でも90年代のジャパニーズ・ヒップホップを代表するクルー「SHAKKAZOMBIE」からTsutchie、独自のサウンドクリエイションで国内外で高い評価を受ける「FORCE OF NATURE」、そしてエンディングテーマは日本が誇る歌姫MINMIが歌っているなどサウンド面でも最強のチームが参加している。そんな日本最高峰のクリエイター、アーティストたちが作り上げたのが『サムライチャンプルー』なんだ。
⑤あの有名ラッパーも
「サムライチャンプルー」に夢中!?
世界のヘッズたちのバイブルに
日本アニメの金字塔『サムライチャンプルー』。その影響は本場、USのヒップホップシーンにも大きな影響を与えており、例えばWiz Khalifa(ウィズ・カリファ)は Curren$y(カレンシー)との楽曲「The Checkpoint」で「サムライチャンプルー」の映像をサンプリングして使っているし、アニメファンを公言しているFlying Lotus(フライング・ロータス)は渡辺監督を非常にリスペクトしており、「More feat. Anderson .Paak」では渡辺監督にMVの制作を依頼、MVでは超絶イケてるアニメーションが完成しているんだ。世界のヒップホップシーンに大きな影響を与えている『サムライチャンプルー』。まだ観たことがない人はぜひこの機会にチェックしてみてね。