ジェイ・Z主催の超大型音楽フェスティバルを追ったドキュメンタリー『メイド・イン・アメリカ』とは?

アメリカの音楽史を塗り替えた伝説のフェスティバルを目撃せよ!

ライター:Lee

みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きにオススメの映画を紹介していくよ。

今回取り上げるのは映画『メイド・イン・アメリカ』。2012年にはじまったジェイ・Z主催の超大型音楽フェスティバルの裏側を追ったドキュメンタリーだ。

『メイド・イン・アメリカ』ってどんな映画?

史上最も偉大なラッパーのひとりであるジェイ・Zがフィラデルフィアで超大型音楽フェスティバル「メイド・イン・アメリカ」を開催。豪華アーティストが集結し、伝説となった2日間のフェスティバルのライブ映像から舞台裏の、そしてアーティストたちのインタビューを記録したドキュメンタリーだ。

『メイド・イン・アメリカ』を観るべき5つの理由

①ジェイ・Z渾身の大規模フェスティバル

音楽には、境界を越える力がある。まだまだ人種差別やジェンダー差別が残るアメリカで、誰もが自然体で楽しめる場所を作るためにジェイ・Zは「メイド・イン・アメリカ」を開催した。ヒップホップ、ロック、ポップ、R&B、カントリーなど、音楽もジャンルの垣根を超えて様々な世代のアーティストが集まった。「自分にやれることをやっただけ」とジェイ・Zは語っていたが、豪華すぎるアーティストが賛同して集まったのは、彼がこれまで積み上げてきた功績があるからだ。

フェスは労働記念日の週末にあたる9/1と9/2にフィラデルフィアの公園で開催された。フィラデルフィアはアメリカを象徴する都市のひとつであり、生活するためのお金を稼ぐのに必死で夢を見る暇がない若者もたくさんいる。そんな彼らに、音楽の力によって夢を与えたいというジェイ・Zの願いが「メイド・イン・アメリカ」には込められているんだ。

②豪華すぎるアーティストたちが出演

この映画には豪華アーティストによるライブ映像もたくさん収録されている。特に注目すべきは、この日のために13年ぶりに再結成したヒップホップレジェンドであるRun-D.M.C。舞台裏では何事もきっちり決めたがるDMCとフィーリングで臨むRUNの対比が描かれていておもしろい。ライブ映像のかっこよさはダントツだ。

さらに10年ぶりの復活公演となったディアンジェロをはじめ、ジル・スコット、リタ・オラ、リック・ロス、ミーク・ミル、スウェディッシュ・ハウス・マフィアなど、様々な音楽ジャンルからアーティストたちが集結している。

舞台裏を映した各アーティストのインタビューでは、まだ彼らが夢見る少年少女だった時代の話も聞くことができる。アーティストの人間味と才能の素晴らしさを同時に味わえるのはドキュメンタリーならではだ

③アカデミー賞監督であるロン・ハワードが監督

監督としてメガホンをとったのはアカデミー賞で監督賞と作品賞を受賞した『ビューティフル・マインド』や、世界的大ヒットを記録した『ダ・ヴィンチ・コード』などの監督を務めたロン・ハワード。

彼は『メイド・イン・アメリカ』をただのコンサート映画として撮るのではなく「メイド・イン・アメリカの意味、つまりフェスティバルが何を表しているのか、ジェイ・Zがなぜそれをやっているのか、そして各アーティストとどのように関わっているのかという構造を反映している」と述べている。

だからライブ映像はもちろんのこと、ジェイ・Zやアーティストへのインタビュー、そしてフェスに関わる人たちにも焦点をあてた構成になっている。成功や表舞台だけではなく、そこに至る過程や裏側を映し出すことで、夢物語がリアリティのあるものとして観る人の前に現れるんだ。

 

④心を揺さぶるジェイ・Zの言葉たち

ドキュメンタリーの合間には、ジェイ・Zへのインタビューが差し込まれている。彼の人生観や哲学が語られる中でも、胸を打つ言葉をいくつか紹介する。

「俺は誰にでも天才レベルの才能があると信じてる。どんな人間にも備わってると思うんだ」

「私は希望を与えたい。貧しい公営団地出身でも夢を叶えられるのだと」

「みんな同じ人間だ。この自由と勇気の地でその思いを分かち合った。夢を叶えて生きる姿は素晴らしい」

リリックを書かないことで有名なジェイ・Zにも夜通しリリックを書きまくった駆け出しの時代があり、デモテープをいくら送っても相手にされない時代があった。ときには道を踏み外しそうにもなった。だけどそこから這い上がり、努力でアメリカン・ドリームを叶えた彼の言葉には勇気がもらえるはずだ。

⑤アーティストだけじゃない。フェスティバルの周辺の人たちも記録

『メイド・イン・アメリカ』では、表舞台に立つアーティストだけではなく、その周辺の人たちにも焦点をあてている。フェスでフードを出展するシングルマザーの女性は、フェスでお金を稼いでフードトラックを買おうと試行錯誤したり、無名アーティストがフェス出演のために奮闘したりと、フェスをきっかけに実際に夢を叶える人たちが出てくる。

一方でフェスの裏方として働くスタッフは長時間労働に疲れ、生活苦を吐露する。苦しい若者の現状が映し出される。また、フェス会場のすぐそばに住む地元のおばあちゃんはフェスに対して「騒がしいだけ。すごく迷惑」と言ってのける。

フェスの光の部分だけではなく影の部分も映すことで、絶賛される行いの全ては正しいことなのか?と考えるきっかけを与えてくれる。ジェイ・Zもインタビューの中で「俺は物事をあらゆる方向から見ようとする」と語っており、彼のそんな精神性が反映されているのかもしれない。

ともあれ、アメリカンドリームを象徴するジェイ・Zが実現した『メイド・イン・アメリカ』。ぜひとも落ち込んだり挫けそうになった時に観てほしい。

 

画像出典元:フェーズ 4 フィルム
配信先:U-NEXT

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