みんな、文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」では音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!今回はカンフー映画とヒップホップの関わり特集。表面上は全く違う二つのジャンルだけど、実はUSヒップホップ業界にはカンフー映画から大きな影響を受けている部分がある。今回は「カンフー× ヒップホップ」のテーマでカンフー映画から影響を受けた楽曲やヒップホップ映画を紹介していくよ!
カンフー×ヒップホップ
①ケンドリック・ラマーと『ラッシュ・アワー』
先日突如リリースした新アルバム『GNX』も話題のケンドリック・ラマー。
現代ヒップホップ界における最重要アーティストとされるケンドリックだが、実は彼もカンフー映画にインスピレーションを受けたアーティストの一人。
ケンドリックは自分のラッパーとしての別人格として「Kung Fu Kenny(カンフー・ケニー)」というキャラを持っているのだけど、実はこの “ カンフー・ケニー”はアジアが誇るカンフー俳優、ジャッキー・チェンとコメディスター、クリス・タッカーの大人気映画シリーズ『ラッシュ・アワー』の二作目で登場するキャラクター。
“ケニー”は黒人でありながら、中華風の衣装に身を包み、カンフーを使いこなす。このキャラにインスパイアされたのが、ケンドリックだ。
ケンドリックの最高傑作とされる『DAMN. 』にはこのKung Fu Kennyという言葉が多く登場する。「DNA.」のMVでは、ケンドリック自身、中華風の衣装に身を包み、『ラッシュ・アワー』で実際に“ケニー”を演じた名優ドン・チードルを重要な役どころでキャスティングしているほど。
【Kendrick Lamar – DNA.】
まさにカンフーの技のごとく、怒涛のライミングを繰り出すケンドリック。映画内でのケニーはカンフーの達人だけど、ケンドリック扮する”カンフー・ケニー”はラップの達人ってわけだ。
②DMX、アリーヤと『ロミオ・マスト・ダイ』
カンフーとヒップホップの親和性の高さを象徴するのが、ジェット・リー主演の映画『ロミオ・マスト・ダイ』。“カンフー・ヒップホップ”と呼ばれる世界観が最高にイケてる作品だ。
【ロミオ・マスト・ダイ】
特にヘッズにはたまらないのがDMX、アリーヤなど2000年代を代表する豪華ヒップホップ・スターの出演。特にアリーヤは2001年に飛行機事故で亡くなってしまったので、彼女の演技を見ることができる貴重な映画でもある。またDMXが俳優としてのキャリアを広げたのがこの映画だ。
『ロミオ・マスト・ダイ』ではとかくおもしろおかしく描かれがちだったカンフーとヒップホップを、真正面からクールに描いており、アメリカ社会におけるマイノリティであるアジア系とアフリカ系の人々がそれぞれの文化の最高にカッコいい部分をレペゼンしている作品なんだ。
③ウータン・クランと『燃えよ、ドラゴン』
カンフー映画がヒップホップ文化に与えた影響を語るうえで欠かせないのが、90年代を代表するヒップホップクルー、ウータン・クラン。
彼らはカンフー映画が大好きで、クルー名のWu-Tangはカンフー映画『Shaolin and Wu Tang (少林と武当)』の“Wu-Tang(武当、武闘)”から取ったというほど。
さらにファーストアルバムのタイトル『Enter The Wu-Tang (36 Chambers)』(邦題:燃えよウータン)は1973年公開のブルース・リー主演のカンフー映画『Enter The Dragon』(邦題:燃えよドラゴン)から取ったものだ。
ウータンのリーダー、RZA(レザ)は特にカンフー映画からインスパイアされて、特にその影響がわかるのが、「Wu-Tang Clan Ain’t Nuthing ta Fuck Wit」での彼のリリック。
【Wu-Tang Clan Ain’t Nuthing ta Fuck Wit】
And the survey said, “You’re dead!”
Fatal Flying Guillotine chops off your fuckin’ head
調査結果が言ってると、“お前はもう死んでいる”ってな
フェイタル・フライング・ギロチンがお前の頭を切り落とすぜ
“Fatal Flying Guillotine(フェイタル・フライング・ギロチン)”はカンフー映画からのサンプリング。1975年制作の香港映画『Master of the Flying Guillotine(邦題:片腕カンフー対空とぶギロチン)』が元ネタだ。なんとこの映画の中に、投げて、人の頭を切り落とすという空飛ぶギロチンという武器が出てくるのだ。つまりレザのハードなライミングはまるで空飛ぶギロチンみたくお前をやっつけちまうぜって言ってる感じだね。