映画『イングロリアス・バスターズ』を観るべき理由|ストリートヘッズのバイブル Vol.107

至極の言語エンターテインメントであり、痛快復讐劇。

ライター:TARO

みんな、文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」では音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!今回取り上げるのは、クエンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』。

『イングロリアス・バスターズ』とはどんな映画?

舞台は第二次世界大戦中、ナチス占領下のフランス・パリ。ナチスに家族を殺されたショシャナは、ナチスの幹部が出席する映画の上映会の夜、復讐を果たそうと計画を練る。
またユダヤ系アメリカ人によって結成された対ナチスの特殊部隊 “バスターズ” もナチスを叩き潰すためにパリに乗り込む。ナチスを憎むものたちがパリに集結し、物語が大きく動き始める。

『イングロリアス・バスターズ』を観るべき理由

①世界が度肝をぬかした!!俳優クリストフ・ヴァルツの圧倒的な演技

『イングロリアス・バスターズ』の中で圧倒的な存在感を放つのが、ナチスの大佐を演じるオーストリア出身の俳優、クリストフ・ヴァルツ。もはや『イングロリアス・バスターズ』は彼の映画と言っても過言ではない。

何がすごいかってまずその圧倒的言語能力。ドイツ語、フランス語、英語、そしてイタリア語まで使いこなすその言語能力の高さは、日本のような多言語環境ではない場所で育った人間からすると、まず度肝を抜かれるポイントだ。

さらに狡猾なナチスの大佐を演じるそのスマートな演技、そしてタランティーノ映画の真骨頂である「会話」を最大限に引き立てる立板に水のような話し口調。さらに会話の流れの中で一気にシリアスな場面を作り出す空気の持っていき方。タランティーノ本人から“He’s one in a million(彼は100万人に一人の逸材)”と言われたほど素晴らしい演技を見せているんだ。

そんなヴァルツだけど、実はこの映画以前はオーストリアを中心に活動していた俳優であり、この映画の公開当時は世界的には無名の状態。ハリウッドのデビュー作でいきなり世界のオーディエンスの心を鷲掴みにしたわけだ。

②至極の“言語エンターテイメント”

ヨーロッパを舞台にした映画ならではの「言語エンターテイメント」という部分もこの映画の大きな魅力。フランス語、ドイツ語、英語、そしてイタリア語と複数の言語が飛び交い、さらにそのその「言葉」の違いによって生み出される変化が各シーンで重要な要素となっているんだ。

例えば、映画の冒頭、クリストフ・ヴァルツ演じるナチスの大佐、ハンス・ランダがフランス語で会話を進めた後、突然英語に切り替える場面はこの映画内での “言葉” の重要性を印象付けるシーン。

またアイルランドとドイツにルーツを持つ俳優、マイケル・ファスベンダー演じるイギリス軍人がドイツ人としてナチス側に潜入する場面は、“言語”と“文化”の違いを上手く使った本作屈指の名場面。ぜひ本編でチェックしてみてね。

③スカッとする歴史改変ストーリー

この映画の基本ストーリーは、ナチスに家族を殺されたものや、ユダヤ系アメリカ人による特殊部隊“バスターズ”がナチスをぶっ潰していくという復讐劇。

そのぶっ潰し方はまさに痛快で、特にラストシーンではこれでもかというぐらいにヒトラーやナチスの幹部たちを徹底的に叩き潰している。ただ実際の歴史は違っていて、ヒトラーはソ連軍によるベルリン占領を目前にした1945年4月30日に、自らの命を絶ったし、その他の多くのナチスの幹部たちも自殺したか、外国に逃亡したりした。

つまりは彼らは数百万人のユダヤ人を大虐殺したホロコーストの報いを受けていないんだ。歴史って難しいのは、いつも必ず悪人が相応の報いを受けるとは限らない。でも映画の中では自由に描くことはできる。ナチスがしっかりとその大殺戮の報いを受けるとしたら?そんなifを表現したのがこの『イングロリアス・バスターズ』なんだ。

画像出典元:ユニバーサル・ピクチャーズ

配信先:U-next

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