みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きにオススメの映画を紹介していくよ。
今回取り上げるのは映画『ハスラーズ』。ウォール街のストリップクラブで起こった事件を描いた、実話を基にしたクライムムービーだ。
『ハスラーズ』ってどんな映画?
幼い頃に母に捨てられ、祖母に育てられた主人公のデスティニーは、祖母との生活のためにストリップクラブで働きはじめる。そこでトップダンサーとして活躍するラモーナと意気投合し、ポールダンスやウォール街の男たちの扱い方を手ほどきされる。ふたりは協力してお金を稼ぐようになるが、2008年に起きたリーマン・ショックの影響で、ストリップクラブにも不況の波が押し寄せることに。ラモーナとデスティニーは、ウォール街の裕福な男たちからお金を騙し取る計画を企てるが…。
『ハスラーズ』を観るべき5つの理由
①年齢なんて関係ない?!50歳のジェニファー・ロペスの華麗なる肉体美
ストリップクラブのトップダンサーとして圧倒的な存在感を放つラモーナを演じたのは、ラテンの歌姫であり女優のジェニファー・ロペス。映画公開当時の年齢は、なんと50歳。しかし鍛え上げられた肉体美は年齢を微塵も感じさせず、内面から自信が満ち溢れている。
彼女のすごさは美しさだけではない。映画に惚れ込みプロデューサーを買って出ただけではなく、「お金のためじゃなくて、この映画が好きだから」と、まさかのノーギャラで出演。映画初出演となったカーディー・Bも、ジェニファーの熱心な誘いで出演をOKしたんだとか。
役作りのための努力も惜しまず、ポールダンスの練習にはシルク・ド・ソレイユのパフォーマーをコーチに迎え、2ヶ月間の猛特訓に取り組んだ。自宅のベッドルームにもポールを設置し、あざだらけになりながら日夜練習に励んだそう。その成果は存分に発揮され、映画の見せ場であるラモーナの激しいポールダンスシーンは、女性でもうっとり見惚れてしまうほどの美しさだった。
ラテン系の女優の活躍の場を広げたいという思いも持つジェニファー。年齢に関係なく、新しいことに挑戦し続ける彼女のパワフルさに、誰もが勇気をもらえるはずだ。
②個性あふれる女優たちの体当たり演技
ラモーナ役を演じたジェニファー・ロペス以外にも、個性が光る女優たちが出演している。ジェニファーとW主演を務めるデスティニー役は、台湾系アメリカ人のコンスタンス・ウー。映画『クレイジー・リッチ』で主演を務め、一躍大スターになった女優だ。そんな彼女も下積み時代は生活に困窮し、何万ドルもの借金を背負っていた過去が。苦難を乗り越えスターとして成功した彼女は、まさに主人公のデスディニーを演じるのにぴったりの存在だ。
男たちから金を騙し取るストリッパーチームのメンバーには「NOPE」での演技が記憶に新しいキキ・パーマーと「リバーデイル」に出演したリリ・ラインハート。キュートで小悪魔的な振る舞いで男たちを落としていく姿は圧巻だ。
ストリッパー仲間には、音楽界からラッパーのカーディー・Bと歌手のリゾが出演。元ストリッパーのカーディー・Bは流石の身のこなしで、デスティニーにストリッパーとしての振る舞いを説いていた。ボディポジティブのアイコンとして支持を集めるリゾも、豊満な体を惜しげもなく披露。
そのほかにも本人役でアッシャーが出演したり、Gイージーもカメオ出演したりしているから、見逃さないようにチェックしてみてね。
③物語を鮮やかに彩る音楽たち
物語を盛り上げてくれる劇中歌として流れるのは、リアーナ、ジャネット・ジャクソン、リル・ウェイン、ブリトニー・スピアーズなどの2000年代のクラブミュージックをはじめとした音楽たち。
特にオープニングで流れるジャネット・ジャクソンの『コントロール』は、監督いわく作品のテーマソングでもあるんだとか。全米R&Bチャートで首位を獲得した『コントロール』は、ジャネットらしさを貫き、その才能を確固たるものとした楽曲でもある。歌詞の一部を紹介しよう。
Control Now I’ve got a lot
なんだって出来るわControl To get what I was
自分の思い通りにしたいControl Never gonna stop
もう立ち止まらないControl Now I’m all grown unNow I’m all grown up
私は大人になったのよ そう もう大人なの
誰かに従って生きるのか、自分を信じて生きていくのか、どんな選択をしても人生は進んでいく。自分の選択次第でいかようにも変わる人生を、どう生きていくかを、音楽と共に問いかけてくれる。
④たくましく生きる女性の物語
この映画はクライムムービーであると同時に、女性たちが連帯し自分の人生の主導権を取り返していく姿を描いたシスターフッド映画でもある。主要出演者たちが女性なのはもちろんのこと、監督・脚本・共同プロデューサーを務めたのも女性であるローリーン・スカファリア。
ローリーン監督が映画の中で特に意識したのは、ストリッパーをただ性を売る存在ではなく、職業に誇りを持って働く女性として描くこと。なぜ彼女たちがストリッパーを選んだのか。札が飛び交う煌びやかな世界とは対照的に、彼女たちのままならない生活の様子も丁寧に描かれている。
これまでモノとして扱われていたストリッパーの女性たちにも、人間としての意志があるということをこの映画は教えてくれる。彼女たちが男性からチップを恵んでもらうのではなく、お金を騙し取るのを選んだのは、自分たちの人生の主導権を取り戻すためでもあったんだ。
彼女たちが行ったのは犯罪だが、一大ビジネスとして急成長していった。彼女たちがもし男性だったら、ウォール街でバリバリに稼いでいたのかもしれない。ウォール街の男性とストリッパーの女性たちの違いは果たしてなんなのか? 男性と女性の格差についても考えるきっかけを与えてくれるよ。
⑤興行収入100億円を越える大ヒットを記録
映画『ハスラーズ』は5週目で興行収入100億円を突破する大ヒット映画を記録した。主演はラテン系のジェニファー・ロペスと台湾系アメリカ人のコンスタンス・ウーであり、主要製作陣もほとんど女性。そんな映画が大ヒットを記録した事実は、映画の内容と同じくらい社会で日の目をみない人たちに、勇気を与えてくれる。
いま生活が苦しい人や自分に自信が持てない人たちにとっては、特効薬のように元気をくれる『ハスラーズ』。ぜひ観てみてね。
画像出典元:REGENTS
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