「ストリートヘッズのバイブル」では音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!
今回はラッパーたちに影響を与えた映画やアニメのキャラシリーズ「ドラゴンボール編」。
『ドラゴンボール』とは?
もはや説明不要とも言える、鳥山明氏の大ヒット漫画・アニメシリーズ。
七つ集めると、どんな願いも一つだけ叶えられるという秘宝・ドラゴンボールと主人公・孫悟空(そん・ごくう)を中心に展開する「冒険」「夢」「バトル」「友情」などを描いた長編漫画作品だね。1984年に『週刊少年ジャンプ』で連載を開始すると、1986年にはアニメ放送を開始、その後全世界80か国以上で放送され、爆発的な人気を獲得。現在も根強い人気を誇る日本漫画・アニメ史における金字塔と言える作品だ。
今回はそんなドラゴンボールとヒップホップシーンのリンクについて紹介していくよ!
①スーパーサイヤ人という最強アイコン
ドラゴンボールといえば、まず真っ先に出てくるアイコニックな概念、スーパーサイヤ人。悟空やベジータといった“サイヤ人” たちが極限の怒りによって覚醒し、それまでの自分を遥かに超える圧倒的な力を得る状態のことだね。
外見も、それまでの黒髪から金髪になり、身体の周りには金色のオーラが放たれるこの変身はまさに「限界突破」や「レベルアップ」の象徴。
読者のみんなの中にも子供の頃に、スーパーサイヤ人になろうとトライしてみた人はいるんじゃないかな?
USラッパーたちの中にも子供の頃に見た「ドラゴンボール」に多大な影響を受けたラッパーたちがいる。特に、アメリカで「ドラゴンボール」が放送された90年代後半から2000年代初頭に子供時代を過ごしたラッパーたちへの影響は絶大。
その代表例が、Lil Uzi Vert(リル・ウジ・ヴァート)やDenzel Curry(デンゼル・カリー)などの世代。特にリル・ウジ・ヴァートやデンゼル・カリーはそれぞれ「Super Saiyan」「SUPER SAIYAN SUPERMAN 」と”スーパーサイヤ人”をタイトルに入れた曲を作っているんだ。
【 Lil Uzi Vert – Super Saiyan Trunks 】
【Denzel Curry – SUPER SAIYAN SUPERMAN 】
ラッパーたちがまさに限界突破して、次のレベルに行くためのアイコニックなメタファーとしてスーパーサイヤ人はリリックに取り入れられているんだ。
②ファッションやアートワークにも影響
ドラゴンボールの影響は、リリックや概念だけでなく、ファッションや髪型にも及んでいる。例えばLil Yachty(リル・ヨッティ)は「自分がアジア人だったら、トランクスみたいなボブにするね。」とドラゴンボールの登場人物、トランクスのヘアスタイルへの憧れを「88 rising」でのインタビューで話している。
またBAD HOPのT-Pablowは2017年に『Super Saiyan1 The EP』をリリース。EPのジャケットアートワークでもドラゴンボールに敬意を表しているよね。
③アメリカ以外の国でも影響を与え続けるドラゴンボール
「ドラゴンボール」がヒップホップシーンに与えている影響はもはや日本やアメリカに留まらない。実は今世界でも最もラップミュージックが盛り上がりを見せている国の一つ、アルゼンチンでもラッパーたちに大きな影響を与えているんだ。現在アルゼンチンでは”ラテン・トラップ”というヒップホップ、ラップ・ミュージックのジャンルが大きなムーヴメントになっているのだけど、その中でも特に人気のアーティストが、ラテン・トラップシーンでも異彩を放つ若手、Saramalacara(サラマラカラ)だ。現在では南米のキッズたちに絶大な人気を誇る彼女が認知度を高めるきっかけになったのがサウンドクラウドで初めてリリースした一曲「Budokai Tenkaichi」。そう「ドラゴンボール」に出てくる強者たちの最強決定戦、「天下一武道会」のことだ。アルゼンチンでも大人気の「ドラゴンボールZ」をテーマにしたテレビゲーム「Budokai Tenkaichi」からとったんだって。
「ドラゴンボール」が描く世界観、そしてスーパーサイヤ人という概念は、ヒップホップ文化における「自己実現」の概念と大きくリンクしている。悟空をはじめ、登場人物たちが修行し、自らを高め、強敵たちを倒していく展開や、そして限界突破して「スーパーサイヤ人」になるという設定は、貧困や困難な環境から這い上ろうとするラッパーたちをインスパイアし続けているんだ。