「ストリートヘッズのバイブル」では音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!今回取り上げるのはナショナルジオグラフィックTVのドキュメンタリー『黒人ファラオ:異端の王の謎 』。古代アフリカに存在したクシュ王国について特集したドキュメンタリーだ。
『黒人ファラオ:異端の王の謎』とは?
最古の黒人王国と言われ、紀元前10世紀頃から形成され始めたとされるクシュ王国。かつてエジプト王朝に金を供給し、一時はエジプト全土を統治したほどの強大な王国だ。ナショナルジオグラフィックTV『黒人ファラオ:異端の王の謎』では謎の多いクシュ王国の歴史を専門家による現地調査から紐解いていく。
『黒人ファラオ:異端の王の謎』を見るべき5つの理由
①ナズのクラシック「I Can」で登場する王国、クシュとは?
ナズの2002年のアルバム『God’s Son』に収録されている名曲「I Can」。ナズの昔からファンならずともヒップホップファンなら一度は耳にしたことがあるクラシックだよね。
曲の内容は貧困や差別に苦しむキッズや若者たちに向けたナズからのメッセージなのだけど、その中でも3ヴァース目は特にアフリカの歴史について触れられている。そこで出てくるのが、このクシュ王国だ。ナズはリリックの中で、
There was empires in Africa called Kush
かつてアフリカにはクシュと呼ばれた帝国があった
とクシュ王国についてラップしているんだ。果たしてクシュとは一体どんな国だったんだろう?
② 古代アフリカで強大な力を誇り、ファラオとしてエジプトを統治
クシュ王国は紀元前10世紀頃から紀元4世紀頃まで現在のスーダンに存在したされる王国。強大な武力と豊富な黄金の採掘量で、当時のアフリカ文化圏の中で大きな力を持っていたとされる国だ。特に隣国のエジプトとは対等、また時期によってはそれ以上の力を持っていたとされ、紀元前8世紀にはエジプトとの戦いの末に勝利し、エジプトを支配、エジプト第25王朝を開き、その後約1世紀に渡ってエジプトを統治したとされているんだ。古代世界における最強国家だったエジプトにとの戦いに勝ち、実際に国を支配していたなんて改めて当時のクシュ王国の力の強大さが窺い知れるよね。
ナズは元々かなりの読書家であり、アフリカの歴史や文化の本も若い頃からよく読んでいたことから、古代アフリカに関しての言及が度々リリックに登場するラッパー。サード・アルバムである『I Am… 』では自らの顔を黄金のツタンカーメンのマスクに模したジャケットデザインを取り入れるなど、古代エジプト、そしてアフリカ文化への造詣が深いアーティストなんだ。
③ ヒップホップ、R&Bシーンへのインスパイア
実はナズ以外にも古代アフリカ、エジプト文化からインスパイアされているブラック・ミュージックのアーティストは多い。例えばローリン・ヒルは「Everything Is Everything(1999)」の中で、ヒップホップ文化の精神性に触れると共に、古代エジプトの女王、クレオパトラの名前を強い女性のシンボル的存在として出していたり、KRS・ワンはBoogie Down Productions 時代にリリースした「Why is That?(1989)」でアフリカ史とそこでブラックの人々が果たした役割について述べている。
古代のエジプトは当時世界で最先端のテクノロジーや、深淵な思想、知識を有していた国であり、周辺国とも相互に交流しあい、アフリカでの独自の文化圏を作りあげていた。
近現代にかけてヨーロッパ諸国がアフリカを侵食していく中で、その文化の多くは失われてしまい、やがて植民地支配と奴隷制というアフリカ史上最悪の時代へと突入していく。奴隷制という時代を経てアメリカで生まれた文化であるヒップホップ、R&Bのアーティストである、ナズ、ローリン・ヒル、KRS・ワンはその文化的な源流の一つをエジプトに見出してるんだ。
④ アフロフューチャリズム、ラスタファリとの交差
ブラック・カルチャーにおいて非常に重要な思想である「アフロフューチャリズム」と「ラスタファリ」。「アフロフューチャリズム」とは1930年台から90年代にかけて活動したジャズ・ミュージシャンのサン・ラーが提唱した思想で、おおまかにまとめると「欧米からの侵略や植民地支配によって世界各地に奴隷として連れて行かれたアフリカの人々が自分たちのルーツであるアフリカの文化をベースにした未来世界で理想郷を作り上げる」という思想だ。
一方「ラスタファリ」はジャマイカを中心に形作られた思想であり「奴隷としてアフリカから無理やり連れてこられた黒人の人々が、アフリカに回帰する」という考えがベースとなっている。ラスタファリにおいてはアフリカの国、エチオピアに約束の地である“ザイオン”があると言われているんだ
これらの思想はそれぞれブラック・ミュージックとも密接に関連しており、ファンク音楽の大御所ジョージ・クリントンやヒップホップのオリジネーターの一人、アフリカ・バンバータなどは「アフロフューチャリズム」に強い影響を受けているし、レゲェのレジェンド、ボブ・マーリーはラスタファリの考え方を歌を通して世界に広めたアーティストだ。
そんな音楽シーンにおいて重要なこれらの思想のルーツもやはりアフリカ。『黒人ファラオ:異端の王の謎』を観ることはその文化のルーツの一つ、そしてインスピレーションの源を辿ることにも繋がるはずだ。
⑤ アメリカにおけるブラック・カルチャーのルーツ
ヒップホップ文化はアメリカの黒人奴隷制、そしてそこから発展したジャズやファンクなどブラック・ミュージックであり、ダンスなども含めたブラック・カルチャーがベースとなって生まれたもの。そしてその根本的なルーツはアフリカだ。その歴史的背景を知らずして、ヒップホップ文化を本質的に理解することはできないし、やっぱり背景を知れば、自分が今聴いている音楽や、やっている文化をより楽しむことができるよね。ヒップホップ、ブラック・カルチャーの源流について触れるきっかけとなるドキュメンタリー『黒人ファラオ:異端の王の謎』。ぜひこの機会にチェックしてみてね!
画像出展元:ナショナルジオグラフィックTV
配信先:YouTube
