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「ストリートヘッズのバイブル」では音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!今回取り上げるのはトム・クルーズ主演のクライム・アクション映画『バリー・シール/アメリカをはめた男』。
『バリー・シール/アメリカをはめた男』とは?
元民間航空会社のパイロット、バリー・シールは、天才的な操縦技術をCIAに買われ、極秘偵察任務に参加することに。やがてコロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルと接触し、ドラッグ密輸の仕事にも手を染め始める。政府の命令と裏社会のビジネスを両立させ、巨額の富を手に入れたバリーだが、次第に麻薬取締局、そしてドラッグ・カルテルの両方から狙われることになる。
①実話に基づく驚きのストーリー
このバリー・シールという男、なんと実在の人物。1970年代から80年代にかけて、CIAのために働きながら、麻薬王パブロ・エスコバルのメデジン・カルテと組んで、コカインをコロンビアからアメリカに密輸していたという、とんでもない人物だ。天才的なパイロット技術を武器に、南北アメリカを股にかけ、まさに“アメリカをはめた”男のストーリーは必見の価値ありだ。
②トム・クルーズが自ら操縦!?
破天荒すぎる飛行機アクション
この映画の魅力はなんといってもそのド派手な飛行機アクション。天才パイロットと言われたバリーの操縦技術を、華麗なアクション映像として見事にビジュアル化している。しかもなんと映画内の飛行機の操縦は実際に主演のトム・クルーズが自ら行ったということ。特に民家のそばに不時着して、標識や街路樹にぶつかりながら進むシーンは圧巻。ヤバすぎるアクションの連続で約2時間の映画があっという間に感じるはずだ。
③ハリウッドを代表する
イケメン俳優が演じる“愛すべき悪役”
ハリウッドを代表するアクション俳優トム・クルーズ。『トップガン』、『ミッション・インポッシブル』などザ・イケメン、そしてセクシーなキャラを演じることが多いトムだが、この映画ではバリー・シールというちょいダサだけど憎めない悪役をコミカルに演じきっている。いつもはクールで全てが完璧なトムのファニーな演技を楽しめるのもこの映画の大きな見所の一つだよ。
④政府が麻薬密輸を黙認した!?
アメリカ政府と麻薬カルテルの「国家ぐるみの陰謀」に触れているのも見どころ。実はバリーが活動した1980年代はアメリカでCrack epidemic(クラック・エピデミック)というコカインの大流行が起きた時期。この経緯が『バリー・シール』で描かれているんだ。事の始まりは中米のニカラグアという国がアメリカに対抗する社会主義政権を樹立したこと。ニカラグアはメキシコとコロンビアの真ん中あたりに位置する国で、アメリカにとってはご近所さん。そんな国が自分たちに対抗する政権を作ったとなっては、”世界の警察”アメリカさんとしては面白くない状況だよね。そこでアメリカ側が考えたのがニカラグアの政府に対抗する反政府ゲリラ”コントラ”の支援だったんだ。
「コントラに武器をたくさん与えてニカラグアの政府をやっつけさせよう。」そう考えたアメリカは武器輸送にうってつけの人材を見つけ出す。それがバリーだ。バリーはアメリカから大量の武器をニカラグアに飛行機で運ぶことになるのだが、そこに目をつけたのがコロンビアの麻薬王、パブロ・エスコバル。エスコバルが考えたのは「アメリカから武器を積んでニカラグアに降ろした後、飛行機はカラになるやん。ほな、そこにコカイン積んでアメリカに持って帰ったらええやん!」という密輸方法だ。
そこでバリーはアメリカから武器をニカラグアに運び、帰りはコカインを大量に持ち帰るという前代未聞の仕事を引き受ける事になり、その報酬で巨万の富を得ていく。その一方でアメリカにコカインが大量流入し、クラック・エピデミックに繋がっていく。このコカイン流入の動きをアメリカ側は知っていたが、バリーの役割がアメリカにとっても必要だったので黙認していたのでは?と言われているんだ。
⑤ヒップホップシーンとのつながり
実はそのクラックの流行で最も深刻な影響を受けたのが、アメリカの貧困地区で暮らしていた人々。1980年代から1990年代のクラック・エピデミックを経験したラッパーたちの多くがドラッグが流行し、荒廃したゲットーの様子を楽曲で歌っている。特にスパイク・リー監督の映画『Clockers』の挿入歌であり、Chubb Rock や Jeru The Damajaらが組んだユニット”The Crooklyn Dodgers”の「Return of the Crooklyn Dodgers」でChubb Rockは、
Now clock kids, who got the cocaine? Don’t tell me it’s the little kids on Soul Train. The metaphor sent from my brain to my jaw. It comes from other places, not the tinted faces.
Yo、クロック坊主、誰がコカイン持ってんだ?ソウル・トレインのちびっ子達だなんて言うなよ。このメタファー、脳みそからアゴに送られてきたのさ。こいつは他の場所から来てんのさ、色付きの顔からじゃねぇよ。
と歌っている。
Cubb Rockがラップしてるのは「コカインがアメリカに入ってきたのはアメリカ政府に責任あるやろ!クラックの大流行を黒人達のせいばっかにせんといてや!」て事だね。
画像出典元:Amazon Prime