「音楽で生活出来る人が増える手助けをしていきたい。」

20年間、ナイトクラブで活動を続けるDJ SHINOBUのキャリアとは?

ライター:DJ SHUNSUKE

パーティーを通して人の心を強く揺さぶり続ける人達がいる。
彼らは何故、今の仕事を選んだのか?
このコーナーではパーティーというカルチャーに関わり続ける演出家たちの過去から現在まで続くキャリアを紐解いていきます。

第十五回は20年間、ナイトクラブで活動を続けるDJ SHINOBUさんのキャリア、後半をお送りします。

DJだけではなく、A&Rという仕事を始める

SHINOBU:
箱DJとして過ごした時間は長くなかったんですが、お店の閉店を機に今の会社に入りました。Farm Recordsという会社です。元々箱DJをしていたお店に出資をしていた事もあって、わりとスムーズにDJをしながらレコード会社に就職できました。夜から昼に生活が一気に変わったので、最初は体を慣らすためにもDJを我慢した時期もありましたね。あとは会社から信頼を得たかったというのもあります。

SHUNSUKE:
会社ではどんな仕事をしてるの?

SHINOBU:
いわゆる「A&R」という仕事をしています。アーティストの発掘から育成まで幅広い仕事内容です。
昼の生活に慣れたころに、このままの音楽シーンで良いのだろうか?なんて思う事もあって最初はオフィシャルのミックスCD作成から動き出しました。僕はたまたまDJで生活する事が出来た時期がありますけど、技術はあるのに食べていけていない若い子達が数多くいる事も知っていたので、もっと音楽でしっかりと生活出来る人が増えるような手助けみたいなこともしていきたいと考えてます。これまでは自分が前面に立つことも多かったですけど、今は「裏方として出来る事はもっとあるんじゃないか」って考える事が凄く増えました。元々はヒップホップに物凄く力を入れている会社ではなかったんですけど、糸口を探しながら、少しずつ世間に自分のカッコイイと思うものを押し出していけるように動いていきたいなって思っています。

レコードレーベルで働く人間の印象的な楽曲とは?

SHUNSUKE:
レーベルで働く事でとんでもない量の音楽と向き合っていると思うんだけど今までのキャリアの中で衝撃をうけた楽曲とかってある??

SHINOBU:
Kornとかには結構衝撃をうけましたね。Follow The Leaderっていうアルバムが出た当時、中学生だったんですけど「こんなの日本にいないぞ、すげえ。」ってなりました。しっかりと洋楽を聞くようになったきっかけでもあります。

 

SHUNSUKE:
ヒップホップとはどんなふうに出会ったの??

SHINOBU:
洋楽を聞き始めたころに、スケーター的な文化とも出会うんです。そうすると自然と耳に入る音楽も変わってきて。まずJay-Zとかを聞いてみようか、なんていうのがきっかけだったように思います。BLUEPRINTとかは凄く印象に残ったアルバムですね。あとは、当時自分の回りにそんなにヒップホップに明るい人もいなくて、人伝いに「そういうの好きならP&Pマーケットの店長に聞いてみれば?」なんて言われて、行ってみてお話したのが現Nubianのコンボさんでした。Pete RockやA Tribe Called Questとか教えてもらったような記憶があります。

SHUNSUKE:
コンボさん!凄い話だ。僕らが若い頃にとても応援してくれた恩人ですね。

世界標準と個性を持ち合わせるシーンになってほしい

SHUNSUKE:
長い間、シーンを見てきたと思いますがこれからの日本のシーンへ期待する事ってありますか?

SHINOBU:
ナイトクラブが昔ほど閉鎖的なものじゃなくなって、気軽に遊びに行ける場所に変化してきたわけですけど、どこでも似たような音楽が掛かっている気がするんです。個性が薄い気がする。そこに細かな違いはあるかもしれないけれど、一般のお客さんには伝わりにくいというか。ジャンルで言えばヒップホップばっかりのお店やハウスばっかりのお店があって良いと思うんです。色んな音楽をごちゃまぜにして楽しむのもいいけれど「この音楽を聞きたいならこのクラブ!」ってお店がもっとあってもいいように思いますね。あとは、今って本当に世界で流行ってるものがタイムリーに聞ける状態にあるじゃないですか、でも国内で本当の世界基準のパーティをしているお店は少ないとも思うんです。インバウンドのお客さんも本当に多いわけで、世界の当たり前も求められてる。個性とか言った後なんでなんだか矛盾する部分もあるんですが、世界基準と強烈な個性、こういう二面性を持ったナイトクラブシーンって面白いなって僕は思います。伝わりにくいですね笑

音楽的な面で言えば、今国内では本当に日本語ラップが流行ってますよね。この凄まじい流れが一過性のもので終わらないでほしいなって強く思います。ブームではなくてしっかりと世間に認知をされるものになってほしい。自分が若い頃も日本語ラップは流行りましたが、その後、全くクラブで掛からないような時期もありました。ずっと残る、ずっと続くべき音楽だとおもうので。自分の仕事で、その手伝いが微力でも出来たら本望だと思ってます

プロフィール

  • DJ SHINOBU

    DJ SHINOBU

    2003年頃より都内にてDJ活動を開始。 主に渋谷・新宿・六本木・西麻布にて年間200本以上のイベントに出演し、数々の国内外のアーティストと共演し経験を積む。 HIPHOPを軸に幅広い選曲とスキルでフロアを盛り上げコントロールするプレイは必見。2000年台半ばから渋谷CLUB HARLEMのレギュラーパーティーの火曜日 REDZONE、水曜日KID STARR、金曜日PUNCH OUTを経て週末、土曜日のMONSTERにレギュラー出演。同時に渋谷Atom、Camelot等都内主要クラブにて活動。2014年より同渋谷HARLEMにて自身が主催のパーティーBUBBLEを立ち上げ3年間マンスリーイベントとして開催。2021年に行われた東京オリンピック、パラリンピックでは競技DJとして参加。現在は西麻布MUSEのResident DJ、またFARM Recordsのディレクターとしてアーティスト楽曲制作を手がけている。

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