目 次
SHUNSUKE:
まず自己紹介からお願いします。
FUSE:
はいDJのFUSEです。神奈川県の茅ケ崎市出身です。2012年の10月にクラブDJとしてのキャリアをスタートしました。
DJをする為にイベントスタッフになった事が私のキャリアのスタート
SHUNSUKE:
DJを始めたきっかけって何だったの?
FUSE:
元々、ひとりでフラフラとクラブへ行くことが多かったです。円山町や渋谷のクラブに通ってました。VUENOS.LOUNGE NEO.CLUB HARLEM.AXXISとか。ナンパ待ちしてたとかそういう事は本当に一切なくて、雰囲気を楽しみに行ってお酒飲んで、始発で帰って、そんなのが多かったですね。その時は何となく「DJってかっこいいな」程度で自分がDJをするっていうのは一切考えていなかったです。そんな中で私イベントでスタッフやってるんだけどっていう人に話しかけられたんですね。「そんなにクラブ行ってるならDJしてみなよ!」なんて言われて。当時時間もあったし、DJをする為にイベントスタッフになった事が私のキャリアのスタートになるんだと思います。
「DJをしたい。」って心についた火は消えなかった
SHUNSUKE:
DJデビューまでって割とスムーズに進んだの?
FUSE:
「私もあのブースに立てる!」ってワクワクしてイベントスタッフになったんですけど、DJとしてデビューするには現実は結構厳しかったですね。まずは集客から頑張れっていう課題を突き付けられました。とにかく数字で結果を出さないとDJをさせてもらえなかった。集客だけじゃなくて、本当にスタッフとしてフロアメイクの為にフロアでみんなが楽しめるように自分自身踊ったりして。お店の外でいわゆる「外販」をして、戻っては店内でリピーター客を作る為の「内販」をしていました。毎週火曜日にお店がオープンする前の準備時間で7時に入って、イベント終わってからミーティングして帰るっていう凄い生活してました。スパルタな時代だったので、教育的指導という名の体罰というか…そういうのもありましたね。私は女性なので顔は勘弁してやるって、蹴りとかでしたけど。
SHUNSUKE:
あり得ないね。辞めようとは思わなかったの?
FUSE:
辛い事があっても「DJをしたい。」って心についた火は消えなかったです。耐えて耐えて。まずは20人位毎週お客さんを呼べるようになって、そこから少しずつ本格的にDJの準備をさせてもらえるようになったのかな。毎週30人呼べるようになったらDJデビュー決定、みたいな流れになって。必死でしたね。DJデビューをした後は、その場所を守る為にまた必死で集客し続けてました。多分、集客が全てというか、そういう時代だったんでしょうね。
SHUNSUKE:
30人呼んで、自分の場所を守るっていうのは現代的ではないかもしれないけど、本当にDJしたくなければ出来ない事だよ。凄いと思う。多分出会ったのはその頃だね。当時はオールミックスの箱で沢山DJしてる印象もあったんだけど、実際はどうだったの?
FUSE:
実際オールミックスフロアでもDJをしていました。ただ、やっぱり私はヒップホップのパーティに遊びに行ってDJをしたくなった人間なので…どうしてもヒップホップのDJがしたくてお店の人や先輩のDJに相談してヒップホップフロアだけにしてもらいましたね。ただ、そこでの先輩DJもこれがまたとてつもなく厳しい人でした。「お前何もヒップホップの事分かってない。」とか言われました。言葉で激しく追い詰められた記憶がよみがえりますね。もうその人はいないけど、一生この悔しい思いは忘れないと思います。殺意を覚えましたし、今考えても「何様だよ。」って思いますね。本当に。
SHUNSUKE:
壮絶なスタートだね…愛情の無い人の下で育って、それでも今もDJしてるわけだけどその理由は?続けられるようなターニングポイントとかってあったの?
FUSE:
ずっとやってきたお店のヒップホップフロアがなくなる事になって。DJを始めたそのお店から離れた事が大きなターニングポイントでしたね。当時、そのお店以外でのDJを禁じられていて、ブッキング貰えても断るしかなかったんです。これまで断り続けたので、もうブッキングしてもらえなくなるんじゃないか?もうDJの現場が無くなっちゃうんだろうか?とか怖かったし悩みましたけど、有難い事に沢山声を掛けてもらえて。SHUNSUKEさんも声掛けてくれましたよね。
SHUNSUKE:
あまり覚えてないんだけど、声かけたかもしれないね笑
なんだかんだ一緒にずっとやってる気もする。当時のお店でFUSEを面倒見てた女の子のDJが「どうかよろしくお願いします。」って頭下げに来たのを覚えてるよ。
FUSE:
今のように外国人主体のお店でDJするようになったのも、キャリアをスタートしたお店から外に出た事が大きかったんだって思います。自分の思う本当の楽しさとか色々な事に気が付く事が出来ました。それに「もっと巧くなりたい。」って素直に思うようになりました。実力を付けてもっといい時間でやりたいってずっと思ってるし。元々ミーハーなお店でやってきたし「あいつ出来るの?」っていうような目でも見られてきたけど、キャリア初期に精神的に追い詰められたあの経験に比べたら何とも思わなくて笑
しっかりと力を付けて今後もやって行きたいって思ってますね。
ヒップホップって言葉に凄く力のある音楽
SHUNSUKE:
ちょっと話を変えるんですけど、衝撃を受けた楽曲ってある?
FUSE:
MAINOの‟All The above”っていう曲ですね。音楽的に何も知らなくて、当時Shazamとかもない時代だったんですけど、クラブに行ってるときに、それがかかると必ずもうなんか大合唱みたいな感じでした。最初は盛り上がる曲だな~、なんて思ってたんですけど、中身を調べたら今思うと凄くヒップホップ的というか。どん底から這い上がってくる事を歌ってる曲で。本当にカッコイイなって。自分と住む世界が違う音楽かも…って思ってたけど、心に響くものがありました。
SHUNSUKE:
ちゃんと中身調べたんだ?
FUSE:
当時本当に盛り上がってたんですよ。こんな盛り上がってるってどういう事歌ってるんだう?って単純に気になった部分もありました。ヒップホップは本当にカッコイイ、と思ったのはこの時期だと思います。ただのBGMではないんだなって。あと、強く印象に残ってる曲はThe Notorious B.I.G.の‟Sky’s the Limit”ですね。可能性は無限大ってリリックには勇気を貰いました。リズムやメロディも良いですけど、ヒップホップって言葉に凄く力のある音楽だなって思いました。
自分の力は自分で証明するしかない
SHUNSUKE:
もう12年クラブでDJしてきた中で、Female DJ、女の子だから苦労したこととかってある?
FUSE:
基本、舐められますね。ずっとそうでした。DJらしい服も来ていないし、過去にやってきた環境とかそういうのも踏まえて舐められてたんでしょうね。悔しい思いばかりしてきたなと思います。今でこそ少し減りましたけど、新しく呼ばれるパーティではいつもオープンでしたし、私の後に回してるDJ達の方が全然ダメなプレイをしてるのに評価に直結しなかった事も多かったです。でも、そんな環境を変えたかったし変える為に本当にいろんな事に取り組みました。配信をやってみたりミックスクラウドにアップしてみたり。昔は「舐められてるけど仕方ない。」で終わってましたけど今は自分のカッコイイと思うプレイをみんなに聞いてもらいたいって思ってるので、その為に必要な事って何なのかを考えて一生懸命取り組むしかないって考えて行動してます。自分の力は自分で証明するしかない。「私、これだけ出来ますよ!」っていう名刺代わりにもなるので、こういうアクションは続けていきたいなと思ってますね。私自身はフライヤーのクレジット順番とかも気にしちゃうタイプなのでとにかくまだまだ頑張りたいって思ってます。
リピートして人が増える事でマーケットは大きくなる
SHUNSUKE:
今のクラブシーンに思う事や望むことってある?
FUSE:
思う事や望むことっていうよりは私自身の考えとかになっちゃうんですけど…大きな括りで言うと「身内パーティ」みたいなものが増えているように思います。人と人が繋がる場所がクラブなんですけど、仲のいい人だけが楽しめるようなパーティではなくて、一般の方や初見の方も楽しめる、そしてリピートするようなパーティをもっと増やしていけたらいいなと思います。私一人で何か出来るわけじゃないんですけど。
特にリピーターを増やす為には必要最低限のコミュニケーションとかも必要になるのかなとかも思います。経験上、DJだけやってボーっとしててもリピーターって増えないので、自分なりに努力してる事はありますね。さっき、身内パーティが増えてるって言ったんですけど、お客さんと友達になる事で結果その人も身内になるって言われると難しいんですけど、出来るだけリピートしやすい環境にする為の努力は怠らずに続けていきたいし、現場でDJしている人はそんな感覚を持っていてくれたら良いなって思います。リピートして人が増える事でマーケットは大きくなるし動くお金が大きくなるじゃないですか?それは別にゲストを取って安くするとか、そういう事じゃなくて…うまく纏められないんですけど、一度来た人が「また行こう」って思えるような環境を作って行けたら良いなと思います。
プロフィール
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2012年に渋谷某有名大箱にて活動開始。当初はPOPSやダンスミュージックを中心にTOP40を軸にしたパーティへの出演が主だったが、時間の経過とともに元々自身が好きだったBLACK MUSICのパーティへ傾向していくこととなる。渋谷エリアを中心に多くのHIPHOPパーティへ参加、少しずつその知名度を高めた。現在はこれまでのキャリアを活かし、都内を中心にインターナショナルな客層のパーティで活躍中。その安定したプレイは関係者からも厚い信頼を得ている。HIPHOPやR&Bはもちろん、Reggae,SOCA,Latin,Afrobeatsなど幅広いジャンルを網羅する「パーティーを楽しむ」プレイスタイルは、年齢・性別・国籍問わずたくさんの観衆に支持されている。