ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアや仕事について全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月のゲストは宮城県仙台市で「そば処登喜和」をオープンされている、そば職人、小川浩二(おがわ・こうじ)さん。元ヒップホップダンサーという異色の経歴を持つ小川さんのヒップホップキャリアについてお伺いしました。Vol.2の今回は修行時代のお話と勇気をもらったヒップホップソングについてお伺いしました。
前回の記事はこちら→ 元ヒップホップダンサーのそば職人、「そば処登喜和」店主、小川浩二とは?
クラブ上がりのヒップホップダンサーが、いきなりそば職人に!?
レペゼン:
今回はダンスの専門学校を卒業されてから、そば職人になるまでの経緯を教えてください。
小川浩二:
卒業後はダンスでは食べていけなかったので、専門学校の事務をやりながら、夜はクラブで踊ったり、地元でレッスンをしたりしていました。そんな中で、当時付き合っていた彼女と結婚することになって。ダンスや事務の仕事ではなかなか稼げなかったので、お金を貯めるために1年間、清掃の仕事を朝から晩までやってましたね。
レペゼン:
結構きつい時期ですね。
小川浩二:
そうなんです。本当にこれから仕事どうしようってなっていたんですけど、そんな時に妻の実家が蕎麦屋を経営していて、人手が足りないということで蕎麦屋に飛び込んで、住み込みで働かせてもらうことになったんです。
レペゼン:
料理の経験はあったんですか?
小川浩二:
包丁も握ったことなかったです笑
レペゼン:
笑
小川浩二:
なので最初は親方や従業員の方からめちゃくちゃ怒られました笑
まぁ包丁も握ったことがないやつがいきなり職人の世界に飛び込んだので、当たり前なんですが笑
一念発起して作った験担ぎメニューで地元を巻き込んだムーヴメントを作り出す
レペゼン:
でも、よく耐えましたね。しかも住み込みで。
小川浩二:
めちゃくちゃしんどかったです笑
体力には自信があったんですけど、やっぱり義理の親と一緒にずっといるのは、メンタル的になかなか。何回か妻に「辞めたい」って弱音を吐いた事もありますね。
レペゼン:
そうなりますよね…。
小川浩二:
逆にそのしんどさをすべてお店にぶつけてやろうと思って。それでメニュー開発に力を入れたんです。それが今の創作そばや、カレーや唐揚げなどのサイドメニューに繋がっていますね。あとは地域での繋がりを作りたいなと思って、周りの飲食店のオーナーさんにも声をかけて、一緒にイベントを企画したりとか。
レペゼン:
すごいポジティブですね!
小川浩二:
なんか単純にずっと同じことをしているのが性格的に耐えられないんですよ。
他にも例えば、験担ぎメニューを作って売り出してみるとか。
レペゼン:
験担ぎメニュー?
小川浩二:
仙台の名物で「せり」っていう野菜があるんですが、それとカツ丼を掛け合わせて「せりカツ丼」というメニューを作ったんです。でも、僕一人だと盛り上がりに欠けるので、地域のお店さんにも「験担ぎメニュー(ショウブメシ)を一品出して頂けないでしょうか?」と声をかけて協力して頂き、受験シーズンにかなり盛り上がって。それで宮城の新聞や沢山のテレビ局さんにも取り上げてもらいました。
【せりカツ丼】
レペゼン:
すごいですね。巻き込む力がすごい。
小川さんが新しい動きをすることに関しては、親方は何かおっしゃっていましたか?
小川浩二:
基本的には応援してくれていたのですが、多分気持ちとしては半々だったと思いますね。
「何かやってるな、面白いな」と思う反面、「あんまり前に出すぎるな」という思いもあったのかなと思います。
レペゼン:
なるほど。
小川浩二:
商店街の繋がりとかも無視して、個人的に活動していたので、親方としてはちょっと反発もあったかもしれません。でも、そのおかげでお店のことを知ってもらうきっかけにはなったと思います。でも、あれだけ厳しかった親方から「お前、すげえな」って言ってくれた時があって。
レペゼン:
認められた瞬間ですね。
小川浩二:
その一言がめっちゃ嬉しかったですね。
EVISBEATSと田我流が導いてくれた「夢の続き」
レペゼン:
清掃のお仕事をされたり、奥さんの実家で住み込みで修行したり、なかなか大変な時期だったと思うのですが、その時期にヒップホップに影響を受けたこととかありますか?
小川浩二:
すごく救われたのがEVISBEATSさんと田我流さんの「夢の続き」です。ずっと聴いていました。
レペゼン:
名曲ですね。
どのあたりが救われたって感じでしたか?
小川浩二:
歌詞のリリックがすごく響いてきたんです。
特に、
天国に持っていけるのは思い出くらい
なら 立派な大人より 良く遊ぶplayer
得意の都合主義と音とユーモアで
心を満たして
っていうリリックがグサッと刺さって。
今でも聴くと鳥肌が立つんです。それを聴くと「何とかなる」って思えました。
レペゼン:
アツいです。
小川浩二:
僕はやっぱりクラブ上がりの人間で。専門学校を卒業した後、会社員としても働いていましたけど、実際生活の半分はクラブで踊っていたので。だから、がっつり会社で働いたことはほとんどないんです。なんかそういう自分の人生を肯定してくれている感じがしたんですよ。
レペゼン:
良いですね。どういう時に聴くんですか?
小川浩二:
しんどい時に聴きます。みんなずっと成功しているわけじゃなくて、大変な時期を乗り越えて今があるんだっていう流れがわかる曲なんで。「自分も頑張らないとな」って背中を押してくれる曲ですね。
厳しい修行を経て、蕎麦職人としての自分のスタイルを作り出した小川さん。Vol.3では親方からのお店の引き継ぎのエピソードや奮い立たせてくれるラップソングについて聞いていくよ!お楽しみに!