歌う酒造、西平せれな。酒蔵修行と音楽への愛

お酒と音楽と共に生きるライフスタイルとは?

ライター:TARO

ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアや仕事について全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月のゲストは鹿児島県・奄美大島で黒糖焼酎の製造を行う老舗酒蔵、西平酒造の四代目、西平せれなさん。シンガー、トラックメイカー、そしてDJとしても活動する西平さんのキャリアについてお伺いしました。Vol.3の今回は、酒蔵での過酷な修行時代、そして、当時勇気をもらった楽曲について話して頂きました。

前回の記事はこちら→ シンガー酒造、西平せれなのミュージック・キャリアとは?

シンガーソングライターから酒造りの世界へ。歌う酒造、西平せれなとは?

西平酒造の銘柄「加那」と西平さん
「加那」の詳細はこちら→西平酒造オンラインストア

レペゼン:
東京でシンガーソングライターとして活動された後、奄美に帰られて、ご実家の西平酒造で杜氏の修行をされるわけですが、修行の中で大変なことはありましたか?

*杜氏・・・酒蔵における酒造りの最高責任者

西平せれな:
わからないことばかりで大変だったんですが、ありがたかったのは、酒造りを教えて頂いた先輩の杜氏さんがすごく優しくて。杜氏さんって職人さんなので、厳しい方が多いのかなと思ってたんですが、全然違って。おかげですごく伸び伸びと学ぶことができたんです。ただやっぱりそれまで完全にミュージシャンだったんで、そもそも普通に朝起きて会社に行くことが大変でした笑

レペゼン:
それまでは夜に、バイトやライブ活動をしてたわけですもんね。しかもお酒造りって覚えることも多そうですし。

西平せれな:
そうなんです。もう複雑すぎて、わけわかんなくて。よく先輩の杜氏さんから説明を受けてる時に、聞いてるふりしてノートに詩を書いたり、絵を描いてました笑
それも今見ると怖くて…

【当時のノート】

レペゼン:
これは…かなり疲れてますね…笑

西平せれな:
ですよね笑
相当まいってたと思います。

レペゼン:
やっぱり作業的に寝れなかったりするんですか?

男性社会に女性一人。焼酎造りの過酷な現場

西平せれな:
時期によってはそうですね。黒糖焼酎作りって大体11月から4月ぐらいまでの涼しい期間にガッツリやるんです。
その時期は、午前中みっちり焼酎造りして、あとは定期的に混ぜたりとか、チェックしに行ったりを夜まで繰り返すんです。その時期はなかなか寝れないですね。

レペゼン:

気が休まらなそうです。

西平せれな:
そうなんです。出来上がるまでのスパンが長いので、ちゃんと出来てるだろうかってずっと気になっちゃうというか。気になりすぎて、工場に行ったらお酒がプリンになっちゃってたって夢を見たことがあります笑

レペゼン:

特に苦労したなってことはありますか?

西平せれな:
やっぱり会議とかに出ても、女性は自分一人ってことが多かったので、最初は喋りにくかったですね。ただ女性代表というか、若者代表として何か言わなきゃみたいな気持ちもあって。だんだんと酒造りにも慣れてくると、自信もついてきて、そこからは楽しく喋れたりとか、自分の言いたいことを言わせてもらったりしています。

レペゼン:
周りの雰囲気も変わってきた?

西平せれな:
変わりましたね。多分、私が今やっている焼酎に音楽を聴かせて醸造する「ソニック・エイジング」も、帰ってきてすぐやってたらすごい怒られてたと思うんですよ。今、面白がってもらえているのは、ある程度は認めてもらえたからかなっていう気がします。

焼酎にヒップホップとレゲエを聴かせる異色の酒造、西平せれなとは?

苦しいのは自分だけじゃない。勇気づけてくれたThe Police「Message In A Bottle 」

レペゼン:
そんな修行時代に励まされた楽曲はありますか?

西平せれな:
The Police「Message In A Bottle 」ですね。

【 The Police – Message In A Bottle 】

 

レペゼン:
ポリスはロックにレゲェの要素が入ってるサウンドが良いですよね。
どういった点が元気をもらえたんでしょうか?

西平せれな:
ポリスは昔から好きで。聴くと、ミュージシャン時代を思い出すんです。酒造りを始めた時に、ミュージシャンの自分と杜氏としての自分のバランスで、すごく戦った気がしていて。杜氏として、酒造りの方に振り切らなきゃいけないって気持ちもあるけど、音楽をやってる自分の感覚を忘れてしまったらどうしようみたいな葛藤がすごくあって。

レペゼン:
やっぱり西平さんのバックグラウンド、ベースが音楽で出来上がっているから、そこが崩れてしまうと、自分が崩れてしまうみたいな感じなんですかね。

西平せれな:
それはすごいありましたね。そういう意味でもポリスを聴くと、ミュージシャンの自分に戻れる気がして。
すごく精神的な支えになってましたね。「Message In A Bottle」はリリックもすごく良くて。リリックの内容が、ペットボトルにSOSっていうメッセージを入れて、海に流すっていうものなんですが、最後の方では世界中から何万本のボトルが集まってくる、開けてみると、全部SOSって書かれたメッセージが書かれていたって流れなんです。

レペゼン:
すごく意味深いリリックですね。

西平せれな:
そうなんです。辛いのは自分だけじゃないんだなって。そう思うことで修行も乗り越えることができましたね。

前回までの記事はこちら → 焼酎にヒップホップとレゲエを聴かせる異色の酒造、西平せれなとは?

プロフィール

  • 西平せれな

    西平せれな

    鹿児島県・奄美大島の創業95年の酒造、西平酒造の四代目。父がロックミュージシャン、母がピアノ教師という家族に生まれ、幼少期からロックを中心とした様々な音楽を聴いて育つ。高校卒業後、上京。音楽大学でドラムスを専攻する。卒業後はアーティストのバックバンドなどを行いながら、シンガーソングライターとしてライブや音源制作を行う。2014年に奄美大島に帰郷。修行期間を経て、西平酒造の四代目に。現在は「黒糖焼酎で世界と奄美大島を繋げる」を目標に、音楽を聴かせて酒を熟成させるソニックエイジング製法に取り組むなど、音楽と伝統文化を融合させて新たなカルチャーを作り出している。

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