TKda黒ぶち × WINGZERO 【後編】|Cross Street

急速に進むヒップホップの大衆化に二人は何を思うのか?

ライター:TARO

「日本でもヒップホップが人々の精神的支柱になって欲しい。大衆化はその入り口。」

TKda黒ぶち:
僕は今の日本のヒップホップシーンはめっちゃ良い方向に向かってると思っていて。
理由は僕が初めてニューヨークへ行った時に見たオバチャンなんですけど。

WINGZERO:
何があったんですか?笑

TKda黒ぶち:
ある朝、ラッシュアワーの地下鉄に乗ってたんですけど、そこで制服着たオバチャンがイヤホン聴いてめっちゃくちゃノッてるんすよ。何の曲でここまでノッてるんだろう?って思ってて。で、彼女がイヤホン外したら僕が当時大好きでよく聴いてたJAY-Zの『The Blueprint3』の曲が聴こえてきたんです。

WINGZERO:
アメリカならではですね。

TKda黒ぶち:
そうなんです。
で、その時にこの光景を日本で見るにはどうしたらいいのか?というのを考えたんすよ。一般の人が当たり前のようにヒップホップを聴いて、それが人々の精神的支柱になって欲しいなって。大衆化ってその入り口段階だと思うんですよね。

WINGZERO:
確かに。広まっていって、その後に本質が理解されてくるというか。

TKda黒ぶち:
そうです。今は「ラップって喧嘩するもの」てなってますけど、これがもうちょっと進化したら、「ラップって心の痛みを歌うカルチャーね」ってなると思うんですね。
そういう意味では広め方ってのは、自分もすごく気をつけなきゃいけないなって思います。
ただ、傾向としてはすごく良いなと。

WINGZERO:
めっちゃわかりますね。セルアウトとか言う人もいますけど、選択肢増えるだけなので。
オーバーグランドだなって思う人はやらなきゃいいし。それにもしオーバーグラウンド化が行き過ぎたら、誰か「いや、これは絶対違うんだ」っていうやつが出てくると思うんですよ。

TKda黒ぶち
確かに。

WINGZERO:
だからプラットフォームが増えるというのはいいんじゃない?って思います。
どっちかというと、むしろちゃんと大衆化できんの?っていうとこの方が心配すね。

TKda黒ぶち:
そうですね。ヒップホップカルチャーの精神性とか、できた時代、どういう背景か、なぜ僕らはこの表現が必要だったのかっていう根っこの部分って後から広まっていくし、今はそこまでの過程だと思いますね。

WINGZERO:
そうすね。僕たちYouTubeやってるんですけど、ブレイクダンスの「分かりやすい、面白い」部分をメインでやってるんですね。今まだ登録者は5万くらいしかいないけど、
10 万とか、100 万行った時に、逆にそのカルチャーの本質を見せたらいいと思ってて。

TKda黒ぶち:
めっちゃ良いですね。

WINGZERO:
最初からずっと「ヒップホップはカルチャーなんだ」とか言っても絶対伝わらないんでね。
より大衆化した時に一番リアルなところをぶつけてやろうっていう作業ができないと、みんなに入らないだろうなって思っているので。だから大衆化すればするほど、それをいつ放り投げてやろうかっていうのは楽しみではあります。

TKda黒ぶち:
自分自身の過程も、そもそも最初は楽しいからとか面白いからでやっていて、
ある程度板についた時、歴史を知って、更に理解が深まるみたいな流れでしたからね。

WINGZERO:
間違い無いです。例えば、最初ラップとかブレイクダンスを始めたきっかけって、それこそメディア、大衆的なもので影響を受けて始めるのが多いと思うんですよね。

TKda黒ぶち:
本当にそうですよね。メディアありきで僕らもヒップホップカルチャーに出会うことができてる部分はありますね。

WINGZERO:
昔だって、映画「ブレイクダンス」でブレイキンは広がったけれども、実際あれはメディアがやり過ぎたみたいな否定の意見もいっぱいあるんすよ。ただ、結局みんなそれでブレイキンに出会ったわけだし。

知っていった先に、実はこれはリアルじゃなかったんだってわかるけど、それはそれで良いかなって。結局そこのバランス、グラデーションを知っている人たちがいる限りは問題ないだろうとは思ってますね。

プロフィール

  • TKda黒ぶち

    TKda黒ぶち

    春日部のダテじゃないメガネの異名を持つRapper、Timeless Edition Rec.代表。 フリースタイルダンジョン3代目モンスター。2005年からマイクを握り今日現在に至る。 2015年末に1stアルバム「LIFE IS ONE TIME,TODAY IS A GOOD DAY.」、2018年に2ndアルバム「Live in a dream!!」、2019年にはキャリア初のEP「Good Morning EP」をリリース、2020年5月には日本のHIPHOPシーンを代表するプロデューサー陣を招き3rdアルバム”Don’t Let the Dream Die”をリリース。 また、日本初のHIPHOP専門ラジオ局”WREP”にて毎週月曜20時から放送されている”Timelessチャンネル”のパーソナリティーを務める。

  • WINGZERO

    WINGZERO

    日本が世界に誇るトップ・B-Boy。ブレイクダンスチームFOUND NATION(ファウンド・ネーション) のコアメンバー。基礎力の高いフットワークに加え、コミカルかつスタイリッシュなダンススタイルはジャンルを超え多方面のダンサーに支持されている。 オランダで毎年行われているブレイクダンスの世界大会・IBEのフットワーク部門で2012年・2013年と二年連続で優勝。2016年にはFREESTYLESESSION WORLD FINALの3vs3部門にメンバーのRYO-FLOW,ISSEIと出場し、日本人CREW初優勝を成し遂げた。現在は株式会社FNMDの代表として、ダンサーのマネジメントやキャスティングを行う他、YouTubeチャンネル「FLAVAJAPAN - ブレイクダンス TV -」のプロデュースを行なっている。