TKda黒ぶち × WINGZERO 【後編】|Cross Street

急速に進むヒップホップの大衆化に二人は何を思うのか?

ライター:TARO

「賛否両論できるコンテンツになったのは良いこと」

TKda黒ぶち:
ブレイクダンスって2024年のパリオリンピックの正式種目になったと思うんすけど、その影響ってどうなんすか?

WINGZERO:
色々良い方向に変わりましたね。
企業に対して説明しやすいですし、スポンサーに付いてくれやすくはなってます。

TKda黒ぶち:
やっぱり効果って大きいんですね。

WINGZERO:
そうですね。ただ一過性なものにならないようにしたいです。
「オリンピックだから」じゃなくて、「ブレイクダンスって面白いよね」にしたいです。
ブレイクダンスはまだそこまではいけてないと思ってます。前よりはめちゃくちゃ変わったとしても、やっぱり今のラップのフェーズまではいけていないと思っていて。なのでYouTubeに動画を投稿したりとか、ブレイクダンスをあまり知らない人に認知させるためにどうしたら良いかっていうのはすごい考えてます。

TKda黒ぶち:
良いすね。ラップの最近の認知度で言うと、ステレオタイプのデフォルトが変わったかなと思ってて。前までラップ=チェケラッチョでしょって人が多かったのが、今「ラップって口喧嘩でしょ?」という人が増えたと思います。

WINGZERO:
確かに。最近はそうですよね。

TKda黒ぶち:
それは本当に大きな変化だなと思います。あと企業案件が増えましたね。
実はオレ、ある企業でラップ研修っていうのをやってるんすよ。

WINGZERO:
ラップ研修!?

TKda黒ぶち:
そうです。普通に会社の研修です笑
ゴルフや農業を研修で入れてる面白い社長さんがいて、その人がラップ研修やろうって言い出して。普通の社用の会議室でラップ教えてるんすよ。

WINGZERO:
やば笑

TKda黒ぶち:
ラップっていう手法をイージーに取り入れる人が増えてるんすよね。

WINGZERO:
その会社の研修では、何をラップするんすか?
会社の社訓とかですか?

TKda黒ぶち:
いや、もうシンプルにフリースタイルです。
で、年末の納会で部署ごとにバトルするんです。

WINGZERO:

それは盛り上がりますね笑

TKda黒ぶち:
もちろん「フリースタイルダンジョン」の後継番組の「フリースタイルティーチャー」で、違う業界の方にラップを教えたりとかもしてますし。意外とラップが持つ可能性みたいなのが試され始めてる流れが、自分の周りで起こっているなってここ2年ぐらいで感じます。

WINGZERO:
ブレイクダンス研修があっても良いんですけどねぇ…

TKda黒ぶち:
やっぱちょっとハードル高いんですかね?

WINGZERO:
そうなんですよ。ブレイクダンスとラップだとハードルの高さが違いすぎるんです。

TKda黒ぶち:
ラップは、リズムの上で喋れればラップと言えますしね。

WINGZERO:
そうなんです。とりあえず言語がしゃべれる時点で、あなたはラップができるって言える。
ブレイクダンスは、じゃあチェアー(両手をついて身体を持ち上げるブレイクダンスの基本の技)からやりましょうって言ったとしても、まずできない。そのハードルがすごく高いんですよね。
そこはラップのむちゃくちゃ羨ましいところですね。

TKda黒ぶち:
ただブレイクダンスはハードルが高いが故に高尚なものになってて、オリンピックまで行くというのはラッパーからしたら良いなって思います。

WINGZERO:
確かに。日本のメディアだけ考えると、やはりラップが良いんすよ。日本語だから。
ただ世界的に見て、ノンバーバル(非言語)に体1本で表現できるって考えると、ブレイクダンスです。分母は日本以外でも広げれますからね。

TKda黒ぶち:
それはすごいスケール感でかいなって思います。

WINGZERO:
そうなんですよね。だから、日本で楽しめるものにしつつ、最終的には世界へみたいな感じにしたいです。ただ今は日本に住んでいるので、なるべく日本で「フリースタイルダンジョン」みたいな盛り上がりのフェーズに行きたいなと思っています。

TKda黒ぶち:
オリンピックはその意味でも大きいですね。

WINGZERO:
そうですね。もちろん賛否両論あると思いますけど。ストリートのものなんで。
ただそこが賛否両論できるコンテンツになったのは良いことかなと思います。
選択肢が増えてるだけだと思うんで。もし嫌だったらやらなきゃいいだけだと思うし。

TKda黒ぶち:
間違いないです。

プロフィール

  • TKda黒ぶち

    TKda黒ぶち

    春日部のダテじゃないメガネの異名を持つRapper、Timeless Edition Rec.代表。 フリースタイルダンジョン3代目モンスター。2005年からマイクを握り今日現在に至る。 2015年末に1stアルバム「LIFE IS ONE TIME,TODAY IS A GOOD DAY.」、2018年に2ndアルバム「Live in a dream!!」、2019年にはキャリア初のEP「Good Morning EP」をリリース、2020年5月には日本のHIPHOPシーンを代表するプロデューサー陣を招き3rdアルバム”Don’t Let the Dream Die”をリリース。 また、日本初のHIPHOP専門ラジオ局”WREP”にて毎週月曜20時から放送されている”Timelessチャンネル”のパーソナリティーを務める。

  • WINGZERO

    WINGZERO

    日本が世界に誇るトップ・B-Boy。ブレイクダンスチームFOUND NATION(ファウンド・ネーション) のコアメンバー。基礎力の高いフットワークに加え、コミカルかつスタイリッシュなダンススタイルはジャンルを超え多方面のダンサーに支持されている。 オランダで毎年行われているブレイクダンスの世界大会・IBEのフットワーク部門で2012年・2013年と二年連続で優勝。2016年にはFREESTYLESESSION WORLD FINALの3vs3部門にメンバーのRYO-FLOW,ISSEIと出場し、日本人CREW初優勝を成し遂げた。現在は株式会社FNMDの代表として、ダンサーのマネジメントやキャスティングを行う他、YouTubeチャンネル「FLAVAJAPAN - ブレイクダンス TV -」のプロデュースを行なっている。