和歌山にいながらどこまで上がれるか挑戦したい。ヴァイナルに人生を狂わされたDJ UTOの静かな覚悟

関西最南端!和歌山に根を張るヒップホップDJのキャリア

ライター:ほりさげ

パーティーを通して人の心を強く揺さぶり続ける人たちがいる。彼らはなぜこの世界に飛び込んだのか?どんな出会いを経験してきたのか?何が彼らを突き動かすのか…!このコーナーでは、パーティーというカルチャーに関わる演出家たちのキャリアを紐解いていきます。
今回のゲストはDJ UTO(ユウト)さん。地元・和歌山に根を張りつつ、軽やかなフットワークを活かして関西各地のプライヤーと繋がり活動範囲を広げているキープレイヤー。その熱量の源泉を掘り下げます。

元野球少年!
DJ UTOのフッドでの思い出

レペゼン :
同世代のプレイヤーということで仲良くさせてもらっているUTO君ですが、意外とキャリアのお話を聞く機会はなかったので嬉しいです。まずは自己紹介からお願いします。

UTO :
よろしくお願いします。DJ UTOです。生まれは1994年11月14日です。関西のラッパーだと、WELL-DONEとかSILLENT KILLER JOINTとかと同い年と知りました。

レペゼン :
その年ですね。生まれも育ちも和歌山なんですか?

UTO :
そうですね。和歌山のど真ん中くらいに御坊(ごぼう)っていう大きい街があるんですが、その隣の由良(ゆら)町ってとこが地元です。もう超田舎ですね。遊べる箱もないですし。

レペゼン :
子供の時はどういう過ごし方をしていたんですか?

UTO :
小3から高3まではずっと野球をやっていましたね。だから音楽も、Mステとかでちょっと聴くぐらいの感じでした。高3ぐらいからちょっとブラックミュージックにも触れ始めたかな?って感じです。

レペゼン :
それはヒップホップですか?

UTO :
いや、当時レゲエが圧倒的に流行ってた時期やったんで、ヒップホップより先にレゲエを聴き始めてましたね。TERRY THE AKI-06とか。あとは大阪の舞洲(まいしま)でやっていたレゲエフェスの「HIGHEST MOUNTAIN」もよく遊びに行ってましたね。地元の和歌山も、そういうダンスホールシーンはかなり根付いているんです。

レペゼン :
へー!和歌山はレゲエが強いんですね。

UTO :
そうなんです。ヒップホップのDJは少ないんですけど、レゲエは上は60~70代くらいまでの大先輩のサウンドの方々が和歌山全域にいて、みんなもそれぞれサウンドシステム持ってるみたいな感じで、けっこう熱いんですよ。

レゲエ、R&Bから入って
出会ったヒップホップ

レペゼン :
ご家族も音楽好きだったりするんですか?

UTO :
はい。特に母親がR&Bとレゲエ好きで、車でも常に流れていましたね。Mariah Carey(マライア・キャリー)とか、Joe(ジョー)とかBOYZ2MEN(ボーイズトゥーメン)とか笑

レペゼン :
懐かしい!笑
割とR&B寄りですが、ヒップホップは何がきっかけで聴き出したんですか?

UTO :
御坊にあったライブハウスで、MCのSURRY(サリー)さん(*)がレギュラーでイベントをやってたんですよ。その時に、大阪からWARAJIがよくゲストライブで来てて。当時、自分はレゲエの耳だったんですが、WARAJIの曲を聴いた時に、レゲエとヒップホップがちょっと混ざっているところに惹かれたんです。そこから「ヒップホップってなんやろう」みたいな感じでハマっていきました。

※ … 和歌山を代表するヒップホップMC。地元・御坊を拠点に、ヒップホップクルー「KINOKUNI」を立ち上げ、自身の活動に加え、レーベル運営やショップ経営を通して独自の発信を行う。

レペゼン :
現場でアーティストに出会って知っていくスタイルだったんですね。曲をディグり出すのはもう少しあとなんですか?

UTO :
ですね。はじめはクラブ遊びを覚えて、というところからでしたね。当時の和歌山のクラブって、メインストリームのパーティーが主流だったんですよね。

レペゼン :
まずはメインストリームのヒップホップシーンから入ったんですね!今のUTO君から考えると意外な感じもします。

UTO :
でもローカルのイベントなので、メインストリームのDJとブーンバップ系のラッパーが一緒のイベントに出演することも多かったですね。

レペゼン :
なるほど。いろんな界隈のプレイヤーが交差しやすかったんですね。

キャリア始動のきっかけは
ダンスとミックスCD

レペゼン :
ヘッズとしてイベントに行ったりディグったりするところから、DJをやり始めたのはどんなきっかけがあったんですか?

UTO :
もともと弟が最初にやってたんです。自分、3兄弟なんですけど、真ん中の弟が先にDJをやり始めたので、機材が家にあったんです。それを自分もちょいちょい触らせてもらううちに自分のが欲しくなって、買いましたね笑
それがちょうど就職した時だったんですけど、初任給でコントローラーを買ったんですよ。

レペゼン :
おお!物語の始まり感がありますね笑

UTO :
はは笑
さらにちょうどその頃、地元にできたダンススタジオに友達と通い始めたんです。

レペゼン :
え!UTO君、ダンスもされていたんですか。初耳です。

UTO :
そうなんすよ。だからダンスきっかけで90’sのヒップホップとかジャジーな感じとか、インストの音楽も好きになっていきました。
あとはDJをやり始める前から、ミックスを集めるのが趣味だったんですよ。和歌山は車カルチャーなので、ミックスCDが盛んなんですよね。

レペゼン :
なるほど。お母さんも車で音楽を聴いていたと言ってましたもんね。

UTO :
はい。いろんなミックスを買って聴いているうちに、自分でも作りたいと思い始めたのもDJをやるきっかけの1つでしたね。

レペゼン :
UTO君のDJはレイドバックで色気を感じさせつつ、ダンサー好みというか、踊りたくなる曲もかかる印象なので、今の話を聴いてすごく腑に落ちました!

ないなら自分たちで作る!
和歌山らしさ全開の遊び場

レペゼン :
今の活動だったり、主催されているイベントについてお聞きできますか?

UTO :
普段の拠点は、自分の地元の御坊周辺と和歌山市内がメインで、それに加えて県外のイベントにも呼んでもらうっていう感じですね。
それから「EUPHORIA」っていうイベントをオーガナイズしています。

レペゼン :
和歌山の「EUPHORIA」といえば、じわじわ認知を広めていますよね。どういうイベントなんですか?

UTO :
DJのABちゃんって人と始めたんですが、ヒップホップのラインと、踊れるグルーヴのある曲をミックスさせた感じのイベントです。田舎に住んでることもあって、自分好みのパーティーが少ないんですよね。そこで「ないなら自分でやろう」っていう感じで始めたパーティですね。

今年はanddy toy storeやHHbushなど関西のクラブシーンを賑わすメンツもジョイン

レペゼン :
素敵です。この夏も半野外の会場・「Bagus(バグース)」(*)で開催されていましたが、最高に気持ちよさそうでしたね。

※ … 和歌山県は新和歌浦(あじろ浜)にある、海に面した開放的な期間限定のビーチバー・ダイニングバー。

 

UTO :
はい。天気も最高に良くて最高でした!自由に遊んでましたね。

レペゼン :
ペースとしては年に1回くらいですか?

UTO :
いや、何も決めていないですね。以前は半年に1回くらいやってたんですけど、ABちゃんも和歌山県外に引っ越した関係で会う頻度も減ったので、自分たちのタイミングでって感じです。

大阪のクラブで知った
レコードの音の厚み

レペゼン :
キャリアのターニングポイントになったことを教えていただけますか?

UTO :
ターニングポイントは2つあります。1つは、大阪のパーティに通ううちに、ヴァイナルの本気の音というか、深さに気づいてしまったことですね。アメ村のJouleなどでやっていた「PROPS」(*)や、自分も出させていただいた「Lights」(*)などがその代表です。

※ … 大阪・アメリカ村のクラブシーンを中心に、長年親しまれているヒップホップ/ダンス・イベント。過去にはマーリー・マールやデ・ラ・ソウルのDJ Masego(マセゴ)などもゲストとして招聘。

※ … 大阪・中崎町のクラブ/カフェ 「NOON+CAFE」などで開催された、関西の音好きやダンサーに親しまれる人気のパーティー。

レペゼン :
過去に取材させていただいたDJ SOOMAさんが参加されていたりと、関西屈指のDJによるプレイを最高の音響で聴ける環境でしたよね。

UTO :
そうです。それまでは、レコードという物自体は知ってるけど、別際どんだけすごいのかはあまり分かってなかったんです。肌でそれを感じた結果、「自分もその音を表現したいというか、プレイしたい」ってなりましたね。そこから良い意味で人生が狂っていくという笑

レペゼン :
お金かかりますもんね笑
やっぱり給料は、レコードに費やしてしまう感じですか?

UTO :
そうっすね。もう全Betぐらいつぎ込んじゃってました笑

御坊のフッドスター
SURRYが見せてくれた背中

レペゼン :
2つ目のターニングポイントは何ですか?

UTO :
SURRYさんにバックDJを任せてもらえたことですね。2020年くらいからなんですけど。やっぱりSURRYさん自身もずっと地元の御坊で活動しつつ、お店もやりながら、さらに韻シストの客演にも参加したりしていたんです。「御坊にいながらもこれだけできる」というのは、本当に心強いですし、そうやって常に背中を見せてもらってきたんです。そうやって地元に根を張りながらシーンを作るSURRYさんの姿勢が、自分のヒップホップの根幹になっていると思います。

レペゼン :
最高ですね。そんな大先輩であるSURRYさんからは、どのように声がかかったんですか?

UTO :
自分たちが主催しているイベントにSURRYさんをゲストライブで呼んだのが大きいですね。和歌山ではヒップホップのパーティは本当に少ないので、色々話す機会も増えたんです。あとはSURRYさんが経営している「Banguard」っていうレコ屋に通うようになったのもあります。

レペゼン :
聞いていると、UTOくんのフットワークの軽さが今の活動に繋がっていってる感じがしますね。気になったものに飛び込んだり、良いと思うものにベットしていったり。

UTO :
ありがとうございます。アンダーグラウンドなヒップホップが好きな同世代の友達はほとんどいなかったけど、自分は好きだったので、どんどん飛び込んでいきましたね。

ヒッピーとラスタが根強い
和歌山の音楽シーン

レペゼン :
そんなUTO君から見た和歌山のシーンの特徴だったり魅力を教えていただけますか?

UTO :
DJでいうと、まあ先輩は長く深くっていう感じのプレイヤーがずっと続けてるっていうイメージがありますね。ヒップホップのDJもいるんですけど、四つ打ちとレゲエが圧倒的に多いと思います。和歌山ってヒッピーとラスタのカルチャーが強いんですよね。だから、ヒップホップもかけるけどなんでも好き!みたいな雑食系のDJが多いですね。

レペゼン :
ヒッピーとラスタが多いんですか!近畿地方の最南端で、海と山が近いという地域柄もありそうですね。

UTO :
そうですね。南国だからこその感じはありますよね。

レペゼン :
例えば大阪だと、関西のどの県からもアクセスしやすいからこそ文化が交差しやすいんですが、和歌山はそのクロスオーバーが起こりにくいじゃないですか。それが結果的に和歌山のカラーを作っている感じがします。よりディープになっていくというか。

UTO :
それはあると思います。アクセスしにくいことで、ある意味音楽性が守られてる面もあるんですよね。

先輩の後に続いて
和歌山でヒップホップし続けたい

レペゼン :
最後に、目指しているDJ像や今後挑戦してみたいことについてお聞かせください。

UTO :
そうですね。やっぱり和歌山が好きですし、さっきも言ったようにSURRYさんの背中を見てきたので、和歌山でヒップホップし続けていきたいというのは一番ありますね。自分の力でどこまでいけるか、和歌山に根を張りながらどこまで上がれるかっていうのは、ずっと挑戦し続けていきたいです。
逆に「これを成したい」とか野望は特にないんですけど、「こんな田舎にこんなDJおるんや」って思われる存在になりたいなと思います。

レペゼン :
素晴らしいです。既にUTO君の存在は、きっと上にも下にも良い影響を与えているはずです。本日はありがとうございました。

UTO :
ありがとうございました。

プロフィール

  • DJ UTO

    DJ UTO

    和歌山県由良町出身のDJ。大阪のアンダーグラウンドシーンでバイナルの魅力に触れ、ディグ&ギグの虜になる。若手ながら、90'sから現行ヒップホップまで巧みにブレンドする燻し銀なプレイスタイルが注目を集め、各地のイベント/メディアに出演を果たす。また同世代の仲間と共に不定期でヒップホップパーティ「EUPHORIA」をオーガナイズ。和歌山の人柄・地域・音楽性を外に発信するキープレイヤーとしての存在を確かなものにしている。

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