パーティーを通して人の心を強く揺さぶり続ける人たちがいる。彼らはなぜ、この仕事を選んだのか?このコーナーではパーティーというカルチャーに関わり続ける演出家たちの過去から現在まで続くキャリアを紐解いていきます。
今回は、圧倒的な知識量と現場対応力で絶大な信頼を集める、YOU-KIDさんのキャリア後編をお送りします。
前編はこちらから!

Black Hazeという現場
SHUNSUKE:
これまでのキャリアにおいて、自分にとっての大きなターニングポイントを挙げるとしたらどこになる?
YOU-KID:
いろいろありますけど、やっぱり「Black Haze(※1)」が大きかったですね。SHUNSUKEさんやSAHさんたちと、HARLEMの3F BX CAFEの金曜日を毎週任せてもらえて。あの時期、あらためて「自分はヒップホップがすごく好きなんだな」って実感できたんですよね。
SHUNSUKE:
当時のHARLEMでは、あのパーティーはかなり特殊だったのかもしれないなって思うよね。
YOU-KID:
そうなんですよ。今でこそ新譜中心のイベントもありますけど、当時は本当に少なかった。今のようにインバウンドのお客さんが多かったわけじゃない中で軍隊のお客さんとかも来てくれてたし。新譜を追ってないDJの人たちからは「浸透してない新譜ばっかじゃん、なんであんなイベントやってんだ?」って言われることもあったし。
SHUNSUKE:
言われたね。
YOU-KID:
でも、遊びに来る外国人の人たちは「最高に楽しい」って言ってくれて。新譜を完璧にチェックしてないと、Black Hazeでは置いていかれる。ゴーゴーダンサーが入って、ストリップチューンやサウスがガンガンかかる中で、どうやってフロアを煽るか。あのパーティは、今の自分のベースとなる「新譜へのきちんとした向き合い方」「パーティへの向き合い方」を叩き込まれました。

“こうなってほしい”を現実にする事が出来た
SHUNSUKE:
これまでのキャリアの中で、印象に残っている瞬間や、嬉しかった出来事ってある?
YOU-KID:
昔、デイイベントで「STAY DREAM」というイベントに出てたんですよ。で、USTREAMで「STAY DREAM」っていう番組も同時進行させていたんですね。当時流行っていた日本語のヒップホップとか知らなかった子達にパーティの楽しさを教えるために、番組内でT.I. の「Bring ‘Em Out」に合わせて踊る動画を載せたことがあったんです。そしたら、それを見た子たちが現場でめちゃくちゃ踊りだすようになって。
SHUNSUKE:
配信がきっかけで現場のノリが変わったんだ。
YOU-KID:
当時、その動画を見て遊びに来ていた若い子達が、今ではHARLEMの常連になっていたりするんです。最初は楽しみ方が分からなかった子達が、毎週遊びに来て、サウスが好きになって、のめり込んでいく。自分たちが「こうなってほしい」と思って仕掛けた着地点に、ちゃんとみんなが付いてきてくれた。あれは本当に、やっていて意味があったなと思える最高の体験でしたね。

憧れられる存在にならなければいけない
SHUNSUKE:
今、東京だけでなく全国的に「ヒップホップベースのMC」が足りない、少ないと言われているよね。これは何故だと思う?
YOU-KID:
自戒を込めて言うなら、俺たちが「イケてるところ」をちゃんと見せられていないんだと思います。SHUNSUKEさんが昔、早い時間のカッコよさを若手に伝えられなかったのかな、ったって悩んでいたのと同じで。
SHUNSUKE:
懐かしい話だね~。少し昔話になるんですが、知らない読者の方が殆どだと思うので、私が過去やっていたお仕事について説明します。渋谷HARLEMさんで、金曜日のオープンアップDJをさせてもらっていました。2時間、3時間の当時としてはロングプレイの修行をさせていただいていた時期があります。その時、若い子達から「大変な仕事してるんですね。あまりり羨ましくはない」って言われた事がありました。若い子に夢を与えられてないなって結構凹んだ記憶がある苦い思い出の一つです。
YOU-KID:
それと同じような感じです。もし僕たちのように現役で戦っているようなMCが、これまでのMCの概念を覆すような、もっとイレギュラーな成功をして「あんな風になりたい!」って思わせる圧倒的な姿を見せていかなきゃいけない。そういう姿が多くの人の目に入る事で、なり手は増えるはずなんです。そこがまだ足りていない。今までやってきたことを続けていくのはもちろんですが、僕のやっている事のカッコよさ、すばらしさをより多くの人に知ってもらわないとここは変わって行かないと思うので、アプローチの方法だったり、露出の仕方だったりはもっと考える余地はあると思ってます。ずっと模索してますが、とにかく思いついたことはどんどんやって行きたいですね。

MCを「言語化」して技術を伝えていく
SHUNSUKE:
今、具体的に力を入れているプロジェクトはある?
YOU-KID:
実は、MCを教えることを始めています。今はまだ身近な仲間内数人レベルですけど。「やりたいけど何から始めればいいかわからない」という子たちに、基礎から教えています。
SHUNSUKE:
MC教室! それは需要ありそうだね。
YOU-KID:
やってみて気づいたんですけど、MCってラップを教えるよりずっと「テキスト化」しやすいんですよ。この曲のこのタイミングでこう言う、とか。例えばヒップホップベースのDJにはEDMノリの煽りを教えたり。逆もしかりで。これをしっかり形にして、ビジネスとしても、シーンへの貢献としても成立させていきたいですね。
SHUNSUKE:
夜の現場の仕事以外でも、自分たちのスキルを価値に変えていくのは素晴らしいことだと思うよ。
YOU-KID:
あとは、離れてしまったダンサーとDJとMCの距離を、もう一回縮めたいんです。テーマはWest Sideでもサウスでもいい、ヒップホップっていうキーワードでみんながユニオンする場所を、もう一度作りたいです。MCは全部の要素を見ている立場だからこそ、自分にしかできないことがあると思っています。
クラブシーンへ踏み出す世代へ
SHUNSUKE:
最後に、これからシーンに入ってきたいと思っている若い世代に一言お願いします。
YOU-KID:
クラブって、外から見ると足を踏み入れるのに勇気がいると思うし、演者になると上下関係とか難しく感じるかもしれない。でも、そんなに難しく考えずに入ってきてほしいです。どんどんいろんなことにトライしてほしい。さっきの話じゃないけど、絶対に君たちを置き去りにしないので。全員が楽しい夜を作りたいと思っている人間がここにいます。お待ちしています!

※1 2013年~長期に渡りBX Cafeで行われていたパーティ。当時珍しかった新譜中心で多くのファンがいた。立ち上げ時はDJ SHUNSUKEも参加していました。

↑10数年前に鳥取に一緒に行った時の一枚。

