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「ストリートヘッズのバイブル」では音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!今回取り上げるのは今では日本でも人気のストリートダンス、Krump(クランプ)の誕生を描いたドキュメンタリー映画、『RIZE ライズ』!
『RIZE ライズ』とは?
2005年公開のドキュメンタリー映画。Krump(クランプ)ダンスの誕生とその背景にあるアメリカの社会的背景を描いた名作。
①クランプ・ダンスとは?
クランプは1990年代から2000年代初頭に形成されたストリートダンス。数あるストリートダンスの中でも特に激しくエネルギッシュな動きが特徴であり、ストンプ(足を踏み鳴らす動き)やチェストポップ(胸を突き出す動き)といった技を使って、アグレッシブな感情を全身を使って表現するダンススタイルだ。
日本ではEXILE AKIRA などがパフォーマンスに取り入れたことで認知度が高まったこともあり、現在ではストリートダンスの中でも人気のジャンルの一つとなっているんだ。
『RIZE ライズ』はそんなクランプのルーツを紐解くドキュメンタリー。2000年代初頭のロサンゼルス、サウス・セントラルを舞台にオリジネーターたちの貴重なインタビューとダンス映像を収録、クランプの起源と発展を描いた作品だ。
この映画がきっかけでクランプを始めたというダンサーも多く、日本のみならず世界中で大きなムーヴメントとなったクランプダンスのルーツを知るにはマストチェックの一作なんだ。
②「踊ってるんじゃない、闘ってるんだ」
『RIZE』の公開当初のキャッチコピーは「踊ってるんじゃない、闘ってるんだ」。そのキャッチコピーの通り、クランプは戦いのダンスだ。全米一危険な地域であり、ギャング同士の抗争が絶え間なく続くロサンゼルス・サウスセントラルで人々が希望を見出したのがクランプというダンスであり、暴力で争い合うのではなく、ダンスで高めあうというコンセプトが根底に息づいているカルチャーなんだ。“暴力で争うのではなく、ダンスやラップで競い合う”というのは元々1970年代にニューヨーク・ブロンクスでヒップホップ文化が生まれた時からの哲学でもあるよね。映画『RIZE』はそんなヒップホップカルチャーが持つポジティヴィティを感じることができるよ。
③アメリカ社会の過酷な現実
『RIZE』は単なるダンス映画ではなく、アメリカの黒人社会における貧困やギャングバイオレンスなどの社会問題にも鋭く切り込んだドキュメンタリーでもある。ダンスがいかにコミュニティ内の希望になっているか、暴力や犯罪に向かわず、自分を表現する術があるということがどれほど大切なことか。日本という国に住んでいる僕たちからすると、比較にならないほど過酷な環境でクランプ、そしてヒップホップカルチャーが与えてくれる希望を胸に生きるダンサーたち、そしてその友人や家族の思いから感じることは多いはずだ。
④心の痛みや怒り。
その全てをぶつけた圧倒的なダンス
映画に登場するダンサーたちの動きと表現力はもはや別次元。身体が引きちぎれるかと思うほどの爆発的なムーヴ、ほとばしる圧倒的な熱量とグルーヴ、そして何より一人一人のダンスから感じる生き様、そして覚悟。公開から20年経った現在でも観るたびに心が揺さぶれる唯一無二のダンス映像がここにはあるんだ。
ダンサーの中には、クランプシーンのレジェンドであるタイト・アイズや、昨年ケンドリック・ラマーの「Not Like Us」への出演でも話題になったクランプの原型であるクラウニングのオリジーネーター、トミー・ザ・クラウンなども出演しているよ。
⑤コミニティの希望としてのヒップホップ
1973年、ニューヨーク・ブロンクスで生まれたヒップホップ。USはもちろん日本でもラップは若者を中心に大人気の音楽ジャンルになったし、ストリートダンスの国内の推計競技人口は約600万人と言われるほど大規模な産業になっているよね。そんなヒップホップだけど、元々約50年前にニューヨークで生まれた時は、差別されたり、社会に居場所がなかった人たちが何もない場所で少しでも一緒に楽しんだり、踊ったり、歌ったりするためのパーティーとして始まったもの。そしてそれは次第に過酷な状況を生きる人々に希望を与えるカルチャーとなり、次第に全米、そして世界へ広がっていった。『RIZE』を通して僕たちが学ぶことができるのは、”産業”や”スポーツ”といったカテゴライズではなく、ヒップホップカルチャーというもの根底に流れる本質。ヒップホップって何なの?というテーマに対する一つの考え方を感じることができる作品なので、まだ観たことがない人は、ぜひチェックしてみてね。
画像出典元:Lionsgate