ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアについて全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。
今月のゲストは日本のお笑い、いや世界のコメディシーンを背負って立つコメディアンであり、先日リリースされた「Awich -Bad B*tch 美学 Remix 」でラッパー顔負けのパンチラインをかまし、ヒップホップシーンでも一躍話題をかっさらった、お笑い芸人のゆりやんレトリィバァさん。Vol.3では斬新なネタを生み出し続けるゆりやんさんのネタ作りや、お笑いとヒップホップの共通点についてお伺いしました。
前回の記事はこちら→ お実は嫉妬の塊!?最強女芸人・ゆりやんレトリィバァのジェラシックパークとヒップホップ愛
斬新なネタを生み出し続けるゆりやんの頭の中とは?
レペゼン:
デビュー以来、エンタメの最前線で活躍されている印象のゆりやんさんですが、最近特に印象に残っているのは、2019年のアメリカズ・ゴット・タレントです。ネタもそうですが、英語でのやり取りがえげつなかったなと。あれは元々練習とかしてたんですか?
【ゆりやんさんのアメリカズ・ゴット・タレントでの様子】
ゆりやん:
I wanted to do everything in English, myself.
At the day, seven hours before,I was practicing,
I guessed what everyone would ask me,
my guess was correct.
In my brain, I have a switch.
When I concentrate, I can hear, listen to English.
On the stage, my brain turnt on
(全部を英語でしたかったの
その日、7時間前に、めっちゃ練習してて
みんなが何を聞いてくるか予想したの
で、予想が正しかったってわけ。
私の脳って、スイッチがあって。
集中する時は、英語がしっかり聴けるの
ステージ上じゃ、スイッチが入ったって感じね。)
レペゼン:
笑
ゆりやん:
その時に、絶対自分の芸名のこと聞かれそうやなと思って。
審査員の方に、「なんでレトリーバーなんだろう?」って言われたときに、「親が犬なので」って言おうかなと思ってたんです。それで友達に、アメリカの人に急に言ってもわかりますかねって聞いたら、「意味わからないんじゃない」と判断してくれて。
レペゼン:
なるほど笑
ゆりやん:
「じゃあ飼ってるのがレトリーバーで、それが猫っていうのはどうかな」と。
「それの方がわかりやすいかも」っていう。そういう現地の方のニュアンスとか教えてもらいながら、本番まで7時間あって何でも練習できたんで、それがちょうど当たったって感じですね。
レペゼン:
素晴らしいです。
そういうネタの着眼点、発想ってどうなってるんですか?ゆりやんさんの頭の中っていうのは。
ゆりやん:
感覚を大事にしてますね。
ゴットタレントのネタは前の年に「ドキュメンタル」に出させてもらったときに出したもので。「ドキュメンタル」ってほんまに、想像してた流れにならないじゃないですか?
だから、とりあえず使えそうな道具とか衣装を自分で持って行ってて、アメリカの水着と角刈りのカツラをカバンに入れてたんです。
レペゼン:
なるほど。
ゆりやん:
それでとにかく何か使えないかなと思って、アメリカの水着着て、カツラかぶったときにこれ使えそうと思って、なんかそれで踊ったらそれが自分の中でめっちゃ楽しかったんですよ。
レペゼン:
そうなんですね!
ゆりやん:
最初、アメリカズ・ゴット・タレントにエントリーしたときは全く違うネタをやってて。
ピアノ弾くネタをやって、映像審査はそれで受かったんですけど。
つたない英語でコントのフリを言ってボケまで待ってもらう感じだったので、お客さんが待ってくれるのかなと思って。それならあの水着でカツラで踊る方が自分も楽しいし、分かりやすそうと思ってそうしました。
レペゼン:
ほんとに感覚ですよね。すごいです。
ゆりやん:
全部結構、自分がイケるって思う感覚ですね。
レペゼン:
他のネタもそんな感じで感覚的に作っているんですか?
ゆりやん:
そうですね。R-1とかも結構最初の方はめっちゃ考えて、緻密にしたかったんですよ。
ああしてこうしてって、ギリギリまで考えてとかだったんですけど。ただ優勝させてもらった年は、考えてはいたんですけど、ファーストインプレッションを大事にして、残しつつやるとかってやってました。自分の感覚は大事にしたいって思ってますね。
お笑いとヒップホップはPEACE、UNITY、LOVE、HAVING FUN
レペゼン:
ネタ作り中にヒップホップとか聴いたりします?
ゆりやん:
あんまり曲を聴きながらはないんですけど、単独ライブのセットリスト、ネタとネタの間の曲とか、準備ではける曲とか、お客さん入ってもらうまでの曲とか、ヒップホップでやらさしてもらってます。
レペゼン:
それは自分で選んで?
ゆりやん:
はい。そうなんです。
レペゼン:
ちなみに何をかけてたりするんですか?
ゆりやん:
Cardi B(カーディ・B)とか、ニッキー・ミナージュとかですかね。
レペゼン:
結構ゴリゴリのフィメールラッパーですね。
ゆりやん:
そうなんです。それに揃えてると思います。
今やってる単独ツアーも、そんな感じでヒップホップが多いですね。
レペゼン:
なんかテンション上がるとかあるんですかね?
ゆりやん:
あります。めっちゃあります。やっぱり出ていくときにはヒップホップの方が気持ちいいし。
もうめっちゃ心が躍るんで。いつも単独ライブ終わったらアンケートとかそういうコメントで、今日のセットリスト教えてくださいみたいなのもあって。皆も曲を楽しんではるんやと思って。楽しいです、こちらも。
レペゼン:
お笑いとヒップホップって、なんか自分で似てるなって思う部分とかってあったりします?
ゆりやん:
私ヒップホップをまだ知り尽くしてないんで、自分なりなんですけど。まずPEACE、UNITY、LOVE、HAVING FUN。
これはフリースタイルティーチャーで、Kダブシャインさんに教えていただきました。これまさにお笑いもで。
お笑いって、結構人をおとしめるタイプのお笑いもあるかもしれないんですけど、私がやっぱり好きなのは違うタイプで。
私も最初の頃は人をけなしたりとか、偏見を言ったりするネタをやってたんですけど、やっぱり傷つく人がいるネタは良くないなっていうのを、先輩方の背中を見て思います。そうじゃない方がやってても楽しいし。もちろん絶対勝ち上がりたいっていう気持ちもあるけど。やっぱりPEACE、UNITY、LOVE、HAVING FUNかなと。あとたくさんのファンの方に来てもらえると、I’m having fun です。
レペゼン:
ありがとうございます。
次回はいよいよ最終回!今年大きな話題となった『Bad Bitch 美学 Remix』での客演、そしてリリック制作の裏話などについて掘り下げていくよ!ここでしか読めない内容も盛り沢山!お楽しみに!
プロフィール
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お笑い芸人。奈良県出身。 小学生の時に観た吉本新喜劇がきっかけでお笑いの世界を志す。NSC大阪校35期生・首席卒業。2017年には「第1回女芸人No.1決定戦 THE W」で優勝、2021年には「第19回R-1グランプリで」優勝するなど、名実共に日本を代表する女芸人の一人。また2019年にはアメリカのオーディション番組「America's Got Talent(アメリカズ・ゴット・タレント)」に出演。角刈りのかつら、星条旗模様の際どい水着を身に着けてのダンスで大きな話題となる。 近年は俳優、アーティストとしても活動の幅を広げており、2023年公開Netflixのドラマ「極悪女王」では、主役のダンプ松本を演じた。またアーティストとしては、Awich 「Bad Bitch 美学 Remix」に参加し、強烈なリリックとラップスタイルを披露。ヘッズたちの間で大きな支持を集めている。