verbal|ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン? Vol.238

ヒップホップの歌詞からストリートで使える英語を学ぼう

ライター:TARO

今回紹介するスラング

verbal

言葉の
紹介アーティスト
Jeru the Damaja, Wu-Tang Clan, Nas
verbal|ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン? Vol.238
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WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.238。
今回取り上げる英語は「verbal(バーバル)」。「言葉の、言葉による、文字通りの」という意味の単語だ。日本ではm-foのラッパー、VERBALさんのアーティストネームとして有名だよね。
ラッパーはまさに言葉を扱う仕事。今回は類まれなる“VERBAL”能力を持つUSラッパーたちのリリックから “verbal ” の使い方をチェックしていこう!

まずは90年代のブルックリンを代表するレジェンドMC、Jeru the Damaja(ジェルー・ザ・ダマジャ)の「Mental Stamina」!

Jeru the Damaja「Mental Stamina(1994)」

Pugilistic linguistics
Check out the mystics, we’re fantistic (You mean fantastic)
Fuck it, you’ll get your ass kicked
Challenge my verbal gymnastics (Vernacrobatics)

格闘言語学
神秘主義者をチェックしな、オレたちは最高さ(最高だってことさ)
クソくらえ、お前はお呼びじゃねぇよ
オレのバーバル体操に挑戦してみな(言語アクロバットさ)

さすがUSラッパーたちの中でも群を抜いたボキャブラリーを誇るジェルー。もはや異次元の言葉がたくさん出てきてるが、一つずつチェックしてみよう。
まずいきなり飛び出したのが、“Pugilistic linguistics(格闘言語学)”という言葉。
“pugilistic(ボクシングの、拳闘の)”と“linguistics(言語学)”を組み合わせた英語だが、
ラップというものが言葉の格闘技であることを定義した言葉だ。
そしてmystics(神秘主義者)とfantistic(素晴らしい)で韻を踏んだ後に持ってくるのが、
verbal gymnastics(言葉の体操)とvernacrobatics(言語アクロバット)という造語。
つまりジェルーのライミングは普通の人には到底真似できない圧倒的な言語の“跳躍力”を持ったおり、それはスポーツに例えるなら体操やアクロバットのようなものだって言ってるわけだ。

続いては、Wu-Tang Clan「Bring da Ruckus」から Inspectah Deck(インスペクタ・デック)のリリックをチェック!

Wu-Tang Clan「Bring da Ruckus(1992)」

Redrum, I verbally assault with the tongue
Murder One, my style shocks your knot like a stun gun

Redrum、オレはバーバルに舌を使って襲撃する
Murder One、オレのスタイルはお前のノットに衝撃を与える。まるでスタンガンさ。

インスペクタ・デックのハードコアかつバーバルなリリック。
まず冒頭の“redrum”は“murder(人殺し)”を後ろから書いた言葉。1980年公開のサイコホラー映画「シャイニング」で出てきた言葉であり、映画内では主人公たちが扉に描かれた“redrum”という言葉を鏡で見て、初めて“murder(人殺し)”であると理解するというシーンがある。
ここでもRedrumという言葉と対になる形で、次のラインでMurderという言葉が出てきてるよね。つまりリリック内で鏡文字を成立させてるわけだ。まさに “verbally assault with the tongue(バーバルに舌を使って襲撃する)”という表現という言葉を体現するウルトラ・テクニカルな仕掛けだ。そしてそんなリリックをかましてくるインスペクタ・デックのスタイルヘイターの“knot(ノット:スラングで「頭」という意味)をまるでスタンガンで一撃を食らわせたかのように衝撃を与えるって感じだね。

ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.237のラストを飾るのはUSラップシーンでバーバルといえばこの人、Nas(ナズ)の「The Message」!

Nas「The Message(1996)」

96 ways I made out, Montana way
The Good F-E-L-L-A, verbal AK spray

オレがやり遂げた96の方法、モンタナは言う、
グッド・F-E-L-L-A、バーバルのAK・スプレーさ

ヒップホップ史上最高のリリシスト、ナズの異次元のバーバルテクニックを使ったリリック。まず“96 ways(96の方法)”とはナズの地元クイーンズ・ブリッジの団地の96棟のビルのこと。つまり「オレがやり遂げた96の方法」とはニューヨークでも最も危険とされた地域、クイーンズブリッジで自分は生き延びたということを言っているんだ。そして「モンタナは言う」とはナズが楽曲で多く取り上げている映画「Scarface」の主人公、トニー・モンタナのこと。「The Good F-E-L-L-A」はこちらもラッパーに大人気のギャング映画「Goodfellas」を意味している。そしてverbal AK spray(バーバルのAK・スプレー)で出てくるAKとは自動小銃、AK-47のスラングだ。つまりこのリリックが意味するのはクイーンズ・ブリッジを生き延びたナズはギャング映画の主人公トニー・モンタナのようにタフな男、そして本物の銃をぶっ放す代わりにバーバル(言葉)の弾丸をぶっ放すぜって感じだね。

 

【歌詞出典元】Genius
*訳は全て意訳です。

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