みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きならマストチェックの映画や本を、作中に登場するパンチラインを通して紹介していくよ!
今回取り上げるのは、ながらく白人の独壇場だったハリウッド映画で、まさかのオールアジア系キャスト&オールアジア系製作陣で制作された『クレイジー・リッチ!』。
王道シンデレラストーリーでありながら、各国に散らばった中国系移民たちのプライドと葛藤、そして母子の愛を描いている。特に女性は、主人公であるレイチェルの自分の生き方を貫いて戦う姿に、エンパワーメントされること間違いなし。
今回は『クレイジー・リッチ!』から、君のマインドをインスパイアする“パンチライン”を見ていくよ!
『クレイジー・リッチ!』ってどんな映画?
NYで経済学教授として働くレイチェル・チュウは、移民2世である中国系アメリカ人。中国系シンガポール人である彼氏ニック・ヤンの親友の結婚式に参加するために、一緒にシンガポールの彼の実家に帰ることに。そこでなんとヤン家は祖先が不動産業で財を成した、とんでもない大金持ち「クレイジーリッチ」だったことが発覚する。
ヤン家の祖母の一番のお気に入りであるニックは、全財産の相続を約束されている大事な後継者。シングルマザー家庭で育った平凡なレイチェルがヤン家の一員として認めてもらうためには、いろんなハードルが待ち構えていた。
ニックの周りにいる女性たちに嫌がらせをされたり、ガチガチの保守家庭であるヤン一族からいやらしく値踏みをされ、ヤン家にふさわしくないと厳しい態度をとられたり。
同じ中国系でも「アメリカ人」だからとニックの母エレノアから受け入れてもらえないレイチェルは、次々とやってくるハードルを乗り越えながらニックとの幸せのために立ち向かっていく。
『クレイジー・リッチ!』のパンチライン
『クレイジー・リッチ!』には、レイチェルをはじめ魅力的な女性たちが登場する。それぞれが自分の信条に則って行動しているから、ハッとさせられるセリフが盛りだくさん。
その中でも特に勇気づけられるパンチラインを3つ紹介していくよ!
①「中国人の息子はママのオナラをシャネル N°5の香水だと思ってる」
ニックの実家に何度か足を運ぶも、なかなかニックの母であるエレノアとの仲が深まらないレイチェル。ヤン家の妻としての務めを果たすために献身を尽くしてきた自負があるエレノアは、大学教授としてNYでバリバリ働くレイチェルに対して「あなたには無理よ」とはっきり伝え、二人の間に決定的な亀裂がはいってしまう。
一方でニックは母を崇拝していて、レイチェルが追い詰められていることに気づいていない。そんなニックに対して、レイチェルの親友であるペク・リンが放った名言がこちら。
Chinese sons think their moms fart Chanel No.5.
「中国人の息子はママのオナラをシャネル N°5の香水だと思ってる」
きっつ〜〜いセリフ!同じ民族だから言える、ギリギリのパンチラインだ。“永遠の女性の香りを語る”というシャネルのアイコンフレグランスを引き合いにだして、ニックの盲目的なマザコン具合を華麗に皮肉っている。
ペク・リンを演じるオークワフィナはラッパーの顔も持ち、リズムカルな体の動きとセリフの独特な抑揚で、特に個性が際立っていた。あの手この手でレイチェルをサポートしてくれるし、こんな親友がいたら本当に心強いよね。
②「今までの過去があったからあなたがいる。」
ニックに大切な母がいるように、レイチェルにも愛する母がいる。NYに移住し、二人三脚で生活を作り上げてきたから、その絆はものすごく深い。父親は死んだとレイチェルは聞かされていたんだけど、実は生きていて、母は外の男との子を妊娠してNYに逃げてきたと、エレノアが雇った興信所によって知らされる。
それが原因でエレノアとニックの祖母から徹底的に拒絶され、家族のことまで貶められた。ついに我慢の限界に達したレイチェルはヤン家との決別を決意する。ニックからの電話も出ずに、ペク・リンの家に引きこもるレイチェル。そんな彼女のもとに、レイチェルの母がNYから駆けつけてきてくれた。
父親についての悲しい真実を聞かされたレイチェルは、母に「ごめんなさい」と伝える。そんな辛い過去を持つレイチェルの母が、謝らないでと愛する娘に対して言った名言がこちら。
Everything that happened in my past life is the reason why I got you.
My brave and clever girl.
今までの過去があったからあなたがいる。勇敢で賢い娘がね。
お母さん…!レイチェルの存在を全肯定するようなセリフにおもわず涙。絶対的な味方がひとりいるだけで、人間って強くなれるよね。食事も睡眠もとらずにボロボロだったレイチェルの心があっという間に溶けていった瞬間だった。みんな、お母さんには優しくしようね。
③「あなたが将来孫と遊べる日がきたら、それは貧乏なシングルマザーに育てられた名もなき移民のおかげ」
立ち直ったレイチェルは、ニックと改めて会うことに。するとニックからプロポーズを受けた。ニックのある言葉を聞いて覚悟を決めたレイチェルは、最終決戦とばかりに麻雀店にエレノアを呼び出す。対局しながら、エレノアにニックからのプロポーズを伝える。そして、断ったことも。ニックが富も名声も家族も捨ててNYでレイチェルと暮らすつもりだったからだ。
レイチェルはニックを愛しているからこそ、ニックから家族を引き離したくなかったのだ。これが私だと、エレノアに伝えるレイチェル。
そして涙なしには見られない、最後に言ったセリフがこちら。
So I just wanted you to know that one day,
だから覚えていてください。
when he marries another lucky girl who is enough for you,
いつかあなたの認める女性と彼が結婚した時、
and you’re playing with your grandkids while the tan huas are blooming and the birds are chirping,
月下美人の咲く夜に小鳥がさえずり、孫と遊べたら
that it was because of me.
私のおかげです。
A poor, raised by a single mother,low class, immigrant nobody.
貧乏なシングルマザーに育てられた、名もない移民のおかげだと。
最後に自分の生き様を見せたレイチェルは、本当にかっこいい。やれ家柄がどうだ、やれ出自がどうだと、レイチェル自身をろくに知ろうとせず、ニックの幸せよりもヤン家の伝統を守ることを優先していたエレノア。でも、ふたりはおなじ境遇だったはず。おなじ移民であり、身分不相応な身でヤン家にやってきた人間だ。
愛する人のために潔く身をひいたレイチェルの言葉に、エレノアは目を覚ます。どう生まれたかではなく、どう生きていくかを示したレイチェルの言動には、学ぶことがたくさんあった。
他にもかっこいい女性が登場する『クレイジー・リッチ!』。落ち込んでいる時や、思い悩んでいる時に観ると、勇気を与えてくれるセリフに出会えるはず。
画像出典元:ワーナー・ブラザース
配信先:Netflix